高度経済成長期における高校教育拡大の実像:FIMSを用いた計量社会学的検討
尾嶋 史章
日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2024年04月 -2028年03月, 基盤研究(B), 同志社大学
新型コロナ感染症のインパクトを適切に解明する確率的オンラインパネルの開発
杉野 勇; 轟 亮; 尾嶋 史章; 平澤 和司; 小林 大祐; 歸山 亜紀
日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2022年04月 -2027年03月, 基盤研究(A), お茶の水女子大学
高校生の進路選択と生活意識に関する実証的研究:学校パネル調査による長期変動の把握
尾嶋 史章; 西丸 良一; 多喜 弘文; 白川 俊之
本研究は、同一の学校をパネルとして長期に追跡し、地域の情報を併せて収集することによって、時点変化を学校の置かれた文脈から再検討することを試みるミックストメソッドを用いた調査研究である。2020年度は、2021年度実施予定の質問紙調査に向けて以下の4点に関して準備を行った。
(1)調査票の基本設計のための準備・・・・これまで実施した3回の調査の項目を再分析し、第4次調査に再度用いる調査項目を選定した。加えて他の研究から取り入れるべき問題に関しても検討した。
(2)地域間比較分析・・・・地域間比較に関する分析が不十分であったため、この部分を再分析し、性別役割分業意識や地域移動イメージなど、地域比較で検討すべき問題を明確にした。
(3)地域に関する基礎データの収集・・・・学校基本調査の地域データに基づき、前回の調査以降の時点間・地域間の変化の基礎分析を行うために必要となるデータの整備を行った。加えて、年度末にフィールドワークを行い、対象高校の卒業生にインタビューし、地域における高校の役割とその変化に関する情報収集をスタートさせた。
(4)研究会の開催・・・・上記の分析や情報収集をもとにして、全体の研究会を2020年夏以降4回開催した。また各研究会の間には一部のメンバーでその集約・整理のための打合せを複数回行い、全体の調整をした。
以上2020年度は調査設計と調査票の基本設計を中心として、研究会活動を中心に研究を進め、本調査の準備を行った。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2020年04月 -2024年03月, 基盤研究(B), 同志社大学
社会調査の困難状況に対応するコンピュータ支援型複合モード調査法の実装
杉野 勇; 轟 亮; 尾嶋 史章; 平澤 和司; 小林 大祐; 歸山 亜紀
2018年度は,2019年度以降に予定している調査方法論的実査や多文化共生に関する複合モード社会調査の準備期間である。7月半ばに第1回研究会を開催して当初の計画・調査設計の再検討を開始した。日本でどの様な新規の調査方法が試行できるかの具体的検討の為に,社会調査の現場についての調査会社ヒアリングを8月に轟と杉野で実施し,実践的可能性についての理解を深めた。これは特に方法論的実査の再設計に関して重要である。また杉野は欧州社会調査学会主催のビッグデータと社会調査に関する研究大会(10月スペイン)に参加し,ビッグデータ時代におけるヨーロッパでのプライバシー保護の状況や公的登録情報・SNS発信情報と社会調査情報の関連付け,標本リクルート誤差とデータ符号化誤差の合計としてみる「一般化された総調査誤差枠組」などについて情報を収集した。2019年1月には尾嶋・平沢・杉野でミラノ大学の政治科学者を訪問し,最新のイタリア選挙調査の変容や社会科学的調査の現状について情報収集を行ってきた。また前身科研での調査データの分析結果を国際学会(2019年7月)で報告する計画を策定し,分析を進めている。
その他,轟は関連科研で若者ウェブ調査を実施して登録モニターウェブ調査についての検討を進め,杉野は別科研プロジェクトで弁護士に対する複合モード調査を実施して,複合モード運用についての分析を行っている(その一部は2019年6月の国内学会で報告予定)。更に,更に別科研で実施した法社会学的な全国調査のデータ修正作業を主導し,データハンドリングについての手法を開発しつつ,その応用として項目無回答についての分析に着手した。実査を行っていない為本経費で実施した調査データを用いた学会報告や論文等はないが,関連プロジェクトのデータ分析の学会報告や,社会調査方法論を含めた社会科学方法論についての編著書収録論文刊行は行った。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(A), 2018年04月 -2022年03月, 基盤研究(A), お茶の水女子大学
戦後日本における学歴と所得:コーホートを基準とした学歴別生涯所得推計の試み
尾嶋 史章
本研究は、出生コーホート別にみた学歴別「生涯所得」を推計することを目的としている。このために繰り返し調査である公的統計調査を「疑似パネル」データとして読み替え、この疑似パネル分析から出生コーホートという個人の生涯に沿った流れの中で、学歴別生涯所得の推計値を得ようと考えている。2019年度には、本研究で用いる就業構造基本調査(就調)と賃金構造基本統計調査(賃金センサス)に関するデータ整備を行うことを目的として、研究計画を策定し作業を進めた。
(1)就調は、統計法第33条に基づき利用が許可された個票データである。このデータに関して、個票単位での1982年以降の5年間隔の8回分の調査データについて整備し、分析を行うための基礎データが完成した。この研究で用いるもう一つのデータは、賃金センサスの公表された学歴別賃金の集計表である。このうちCVS方式で公開されていない1967年から2000年のデータに関しては、手動で入力のうえ1歳刻みの推計データに変換する必要があるが、今年度は第一段階として素データ(5歳幅の年齢平均・給与額平均・賞与等平均)の入力を終えた。このデータを用いて、引き続き各年の年齢ごとの所得を推計する次段階の作業を進めているが、この作業は未了である。
(2)就調と同形式の繰り返し調査である「社会階層と社会移動(SSM)調査」データを用いて推計モデルの検討を行い研究会で報告した。この結果、就調へ適応可能な分析モデルがほぼ完成した。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽), 2019年06月 -2021年03月, 挑戦的研究(萌芽), 同志社大学
NEETに関する比較社会学的研究:日仏独蘭英における個人的要因と制度的要因
尾嶋 史章; 多喜 弘文; 小林 大祐; 香川 めい; 森山 智彦
本研究は、職業を持たず学校にも通っていない無業状態(NEET)を多様な側面から分析することによって、日本社会の特徴を明らかにしようとする試みである。最初の課題は、仏独蘭英4カ国との共同研究を通して、若年無業者の経歴類型に関する比較を行うことである。日本では、NEET経験率が男性で増加し、抽出された類型は男女で異なり、最終学歴と関係していた。次の課題は中高年期も含めた無業問題の分析・検討である。無業経験は所得上昇を抑制し、心理的なストレスを与えること、さらには高齢者が無業になる時期(引退)に対して過去の経歴が影響を及ぼすことなど、無業は社会生活の多様な側面と関連していることが明らかになった。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2017年04月 -2020年03月, 基盤研究(B), 同志社大学
教育の機会と効用に関する計量的研究-学歴と経済的不平等からみた戦後日本の教育社会
尾嶋 史章
本研究の課題は、学歴の経済的な効用をコーホートごとの変化から捉えるとともに、教育機会の経済的な不平等を推計した父所得を用いて検討し、経済的側面からみた戦後日本の学歴社会の様態を明らかにすることである。
まず(1)コーホートを基準に学歴の私的収益を求めると、高等教育の総収益は団塊世代を含むコーホートで最も高かった。(2)推計した父所得と中学校時代の成績とで構成したモデルで教育達成を分析した結果、この両変数は相補的に教育達成を規定し、その変化は高等教育進学段階での競合状態に対応していた。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 2014年04月 -2018年03月, 基盤研究(C), 同志社大学
社会的不平等の形成過程に関する比較社会学的研究
尾嶋 史章; 荒牧 草平; 阿形 健司; 轟 亮; 吉田 崇; 工藤 保則; 小林 大祐; 古田 和久; 西丸 良一; 多喜 弘文; 白川 俊之; 坂野 誠
本研究では、1981年と1997年に調査した同じ高校の3年生を対象として学校パネル調査を2011年に実施し、高校生の進路希望と出身階層・学校(トラッキング)との関連ならびに高校生の学校生活感や社会意識の変容について時系列的に検討した。出身階層・学校・進路希望の関連には大きな変化がみられない中で、2011年には「まじめ化」「保守化」の傾向が確認された。同時にPISAデータを用いて進路希望や学力に及ぼす出身階層や学校の影響分析も行った。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2010年 -2013年, 基盤研究(B), 同志社大学
現代日本の階層状況の解明-ミクローマクロ連結からのアプローチ
佐藤 嘉倫; 近藤 博之; 尾嶋 史章; 斎藤 友里子; 三隅 一百; 石田 浩; 三輪 哲; 小林 大祐; 中尾 啓子
地位達成過程の背後にある制度に着目することで、不平等を生み出すメカニズムのより深い理解をすることが可能になる。たとえば、貧困にいたるプロセスは男女で異なるが、それは労働市場と家族制度における男女の位置の違いを反映している。また、日韓の労働市場の制度の違いにより、出産後、日本の女性のほとんどが非正規雇用者になるが、韓国の女性は正規雇用、非正規雇用、自営の3つのセクターに入る、という違いが生じる。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(A), 2008年 -2010年, 基盤研究(A), 東北大学
学校教育と社会的不平等に関する国際比較研究:PISAデータの分析を中心に
尾嶋 史章; 近藤 博之; 阿形 健司; 荒牧 草平; 白川 俊之; 多喜 弘文; 西丸 良一; 古田 和久; 吉田 崇; 近藤 博之; 阿形 健司; 荒牧 草平
本研究では教育達成過程の国際比較を行うことによって、教育機会格差が生じるメカニズムの日本的特徴を明らかにした。特に中心においたのは、PISAを用いた青少年の学力形成に及ぼす家庭背景の影響である。入学試験による選抜と学校の階層構造、学校外教育など異なる学校教育システム下における家庭背景と生徒の学力形成との関係を分析した結果、日本を含めた東アジアの国々は欧米諸国とは異なる教育達成過程を持つことが明らかになった。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2007年 -2009年, 基盤研究(B), 同志社大学
社会階層と社会移動
2002年 -2008年, 競争的資金
Social Stratification and Social Mobility
2002年 -2008年, 競争的資金
現代日本階層システムの構造と変動に関する総合的研究
佐藤 嘉倫; 近藤 博之; 斎藤 友里子; 三隅 一百; 石田 浩; 尾嶋 史章; 中尾 啓子
本プロジェクトは、社会階層の流動化と固定化という、一見相反する現象を統一的に理解・説明するための階層論を展開することを目的とした。この目的のために、理論的な検討をするとともに、データ分析のための社会調査を実施した。2005年に日本、韓国、台湾でほぼ同一の調査票を用いた実査を行った。また労働市場の流動性の影響をもっとも受けている若年層を対象とした郵送調査・ウェブ調査を2007年に行った。これらの調査データを用いた分析結果は、全15巻の研究成果報告書にまとめられた。また報告書以外にも、プロジェクトメンバーによる学会報告や論文・単行本刊行は多数に及ぶ。
本研究プロジェクトは総合的研究なので、社会階層と社会移動をめぐってさまざまな視点からの分析を展開した。このため、研究成果すべてを述べることはできないが、たとえば(1)佐藤俊樹『不平等社会日本』で示されたホワイトカラー上層雇用の閉鎖性は2005年には存在しないこと、(2)非正規雇用者になる傾向は低学歴者と女性に高く見られること、(3)所得格差については正規雇用と非正規雇用の間の格差が大きいが、その格差が拡大しているかどうかは慎重な検討が必要であること、などの知見が得られた。
また本プロジェクトが、本格的な東アジアにおける社会階層と社会移動の比較研究として初めてのプロジェクトであることも特筆に値する。その成果の一端は、研究成果報告書第13巻『東アジアの階層ダイナミクス』に収められている。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 特別推進研究, 2004年 -2007年, 特別推進研究, 東北大学
現代日本におけるジェンダーと社会階層に関する総合的研究
尾嶋 史章; 近藤 博之; 中尾 啓子; 有田 伸; 橋本 健二; 白波瀬 佐和子; 轟 亮; 佐藤 嘉倫
本研究の目的は、2005年秋に実施予定の2005年社会階層と社会移動調査に向けた、ジェンダーと社会階層をめぐる研究枠組みの形成と日本・韓国・台湾の3力国比較の研究体制の確立である。
1.国際比較調査の体制作りのために、「東アジアにおける社会階層・京都会議」を開催し、その後、韓国ならびに台湾との研究交流を進め、ジェンダーと職場環境、ライフステージを明確化する変数の導入など、新たな調査項目を導入し、比較研究の基本枠組みを作成した。
2.またSSM韓国・台湾調査の調査方法に関して調査機関の実査体制や調査員の能力等も含めて調査・資料収集を行い、調査体制の確立をはかった。その結果、両国で調査委託可能な調査機関を見つけることができた。
3.上記の点以外に具体的な調査内容の検討や国内調査の問題として、以下の観点から調査データ等の分析を行った。
a.2003年調査の分析からみえてくる課題(これまでの伝統的調査項目や新しい調査項目の検討など、ジェンダーの関連項目など国内予備調査結果の検討)
b.国際比較調査への準備(韓国職業威信スコアの作成、階層帰属意識の日韓比較など)
c.回収率改善のための方策(調査環境の悪化の中でどのようにして回収率を上げていくか)
4.3の分析を行った結果、不公平感の回答カテゴリーの問題点やキャリア・イメージの回答方法の修正点、さらには女性の15歳時に持っていたライフコース・イメージのその後のキャリアに及ぼす影響などが明らかになった。また、面接調査時の訪問時間や回数など調査員の行動を管理者がいかにコントロールするかによって、現在の低回収率も上昇しうる可能性が示された。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2003年 -2004年, 基盤研究(B), 同志社大学
日本階層システムの構造と過程に関する総合的研究
佐藤 嘉倫; 尾嶋 史章; 近藤 博之; 石田 浩; 斎藤 友里子; 三隅 一百
今年度の具体的な研究実績は、以下の4点にまとめることができる。
第一に、現代日本を対象とした全国調査の準備として、階層研究全般にわたる検討会議を催した。社会的不平等生成メカニズムの理論についての意見交換、従来型質問紙調査の限界を克服するための技術的検討などにより、重要な知見を獲得した。
第二に、国際比較プロジェクトに向けて、台湾、韓国、アメリカの研究者と詳細な議論を重ねた。台湾に関しては中央研究院の喩維欣・章英華研究員、台湾大学の蘇國賢助教授と台湾調査の調査設計について議論した。韓国に関しては成均館大学の車鍾千教授、中央大学の申光榮教授と今年度の韓国調査の調査票・調査設計について意見交換した。アメリカに関してはハーバード大学のメアリー・ブリントン教授、コーネル大学のデービッド・グルスキー教授とキャリア意識を中心とした日米比較調査の方針について議論した。
第三に、現代社会の階層システムについての全国調査を実施した。本研究課題にかかわる研究者を中心に調査設計をし、実査は中央調査社に委託した。その結果、回収率はほぼ60%、有効回収サンプルサイズは1000名を超え、十分信頼に足るデータを得た。この調査データについては、次年度にコーディングおよび分析を行い、報告書を作成する予定である。
第四に、韓国を対象とした職業威信調査を実施した。計画と設計は本研究課題メンバーが担当し、実査はギャラップ・コリア社に委託した。この韓国データについても、日本調査同様、次年度にコーディングおよび分析を行い、報告書を作成する予定である。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2002年 -2004年, 基盤研究(A), 東北大学
現代日本における社会階層の流動化と再編に関する総合的研究
近藤 博之; 岩井 八郎; 尾嶋 史章; 片瀬 一男; 鹿又 伸夫; 小林 久高; 佐藤 嘉倫
この研究の目的は,現代の日本社会を対象に階層研究の新たな展開を図り,2005年に実施予定の第6回SSM調査(「社会階層と社会移動に関する全国調査」)の準備を進めることにある。この目的に沿って,過去5回のSSM調査データを用いた階層研究の理論的及び実証的な検討と,独自のパイロット調査による方法論的な検討を行った。既存データの分析に関して,近藤(2005)はSSM調査データに対し2段階最小二乗法を適用し,間接的に推定された親の所得から若年世代の教育達成をリアルタイムで分析する方法について検討した。そうした検討から,SSM調査データの広範な利用可能性が社会学のみならず教育学や経済学などの隣接分野に向けて示された。さらに,ライフヒストリー・カレンダー(Life History Calendar)法による面接聴き取り調査を仙台,大阪,島根の3地点で実施し,SSM調査の基本となる回顧的データの収集と分析の技法について集中的な検討を行った。この調査から,個々人のライフヒストリーに関する情報を449人×45行×92列のデータ・シートとしてまとめ,それより系列的データ(sequential data)を構成して,多様な角度から分析を試みた。その結果,データ収集については,時間順序を回答者に意識させた調査方式と意識させない調査方式で回答の内容や精度が異なることが明らかとされた。また,系列的データの分析からは,現在の中高年者のライフコースが男女とも標準化されたパターンをもつこと,ライフコース全体を規定する要因として出身背景や家族状況よりも本人の教育経験が重要であること,現在の若年層ではライフコースの非標準化が進んでいることなどが確認された。最終的に,このパイロット調査の結果をもとに研究成果報告書を作成した。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 2002年 -2004年, 基盤研究(B), 大阪大学
女性の社会進出と階層構造に関する計量社会学的研究
尾嶋 史章
本研究ではSSMデータを用いて、女性の職場進出がどのような社会的帰結をもたらすのかを、社会階層の側面から検討した。本研究の成果は、以下の4点にまとめられる。
(1)女性の社会進出に伴う世帯間の経済的不平等に及ぼす妻収入の影響ついて、1985年および1995年SSMデータの夫収入と妻収入を用いて検討した。その結果、妻収入が夫収入の不平等を低下させる役割は、1985年と比較して1995年では小さくなっていた。
(2)戦後の女性のライフコースと職業経歴について分析した。その結果、団塊の世代の女性で、学校卒業と同時に正規雇用者になり、その後、結婚・出産に際して退職し、子どもが中学にあがるまでにパート・アルバイトとして再就職するパターンが定着したことが明らかになった。そして再就職に際しては夫の収入が影響していることが推測された。
(3)階層帰属に関する認知(階層帰属意識)は、各個人がおかれた社会的文脈で異なることが明らかになっているが、女性の階層帰属意識の地域社会におけるコンテクストによる違いを、特に「郊外」をキーワードに分析した。その結果、郊外的地域(都市度が高く、職住一致度が低い)において、多様な地位変数が女性の階層帰属意識を規定していること、換言すれば階層帰属意識の規定要因の多元化が明らかになった。
(4)これまでの社会移動研究は、産業化と職業構造の変動に関心を持ってきたが、それは職業構造の変動を起こす外在的な要因として、あるいは人員配分における業績主義の浸透という観点からのものであった。ここでは、拡大産業においてポストが増える条件があるので、より自由な移動・転職が行われている(学歴の影響力の低下)、という仮説をもとに男女の職業移動を検討したが、こうした傾向は認められなかった。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 2001年 -2002年, 基盤研究(C), 同志社大学
女性の社会的地位に関する計量社会学的研究
尾嶋 史章
近年女性をめぐる社会状況は大きく変わってきている。日本でも男女雇用機会均等法の成立・施行を契機に女性を囲む社会環境は変化した。また女性の就業に関するデータをみても小さいながらも現在でも変化は持続している。70年代以降、フェミニズムは様々な学問分野で性差別を中心とした問題に対して新しい視座を提供した。社会学の領域でもこうした流れは存在するが、女性に対する計量的なアプローチはまだ多いとはいえないのが現状である。本研究は、こうした隙間を埋めることも意図して、階層的な視点から女性の社会的地位への計量的なアプローチを試みたものである。本研究で得られた主な知見は以下の通りである。
(1)1970年代以降に行われた世論調査の結果を用いて、高度成長期以降にみられた性別役割分業意識の変化と、女性の就業率上昇との関係を考察した結果、女性の性別役割分業意識は、単に量的な変容(「伝統的」意識の弱化)を遂げただけでなく、「規範的」意識から「許容する」意識へと質的にも変容していた。
(2)さらに戦後の教育拡大の中で生じた出身階層・性差・教育達成間の関連の変化を検討した。その結果、男女間の教育達成をめぐる競合関係が、様々な学校教育水準における「ジェンダー・トラック」(高校での家政科・商業科、高等教育での短期大学)の出現によって回避させられてきたことが明らかになった。
(3)さらに夫(あるいは妻)のライフスタイルの規定要因として、夫婦の地位の影響を検討することを通して、女性にとっての社会的地位の意味を考察した。この結果、妻の文化活動を通じて示されるライフスタイルが階層的地位の地位表示的な側面を持つことや、妻の経済的地位が夫婦間の勢力関係を通じて夫の活動を抑制していくメカニズムの存在することが示唆された。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 1998年 -1999年, 基盤研究(C)
社会調査における自由回答データ収集・分析システムの開発
川端 亮; 佐藤 裕; 尾嶋 史章; 谷口 敏夫; 太郎丸 博; 橋本 満; 秋庭 裕
この研究の目的は、テキストデータを分析する、コンピュータを用いた新しい手法を示すことである。日本では、パーソナルコンピュータを用いた内容分析の試みは、ほとんどなされてこなかった。その主な理由は、日本語には、単語を品詞によって分けることができる外見的な切れ目が存在しないためである。そこで、研究の課題は、語を分けることができる新しいコンピュータプログラムの開発であった。研究には、3つの段階があり、それは、大容量の文章を機械が読める形に変換し、それをコーディング、分析することであった。コーディングプログラムとしては、AUTOCODEプログラムとKTCoderという2つのプログラムができあがった。
AUTOCODEプログラムは、最初、質問紙の自由回答をコーディングするプログラムとして開発された。これは、基本的には、Windows上で、カットアンドペーストをするプログラムである。このプログラムは、もとのテキストデータから同じような文中の文字列を抽出し、コーディングルールファイルとして出力する。このファイルによって、コーディングの正確性を確かめることができる。テキストデータは、コーディングルールファイルにしたがって、コード化され、SPSSのような統計パッケージで利用できる形でファイルを出力する。このプログラムは、マウスで操作できるグラフィカルユーザーインターフェイスを備えている。
KTCoderは、元の文書データを切り分け、それぞれのコードの位置情報を付したファイルを出力する。このファイルは、標準的なデータベースのデータ形式で出力される。これを用いて、たとえばアクセスのような他のソフトで活用すれば、応用可能性は限りない。このプログラムもマウスで操作できるグラフィカルユーザーインターフェイスを備えている。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 1996年 -1998年, 基盤研究(A)
高校生のキャリア志望形成とその変容に関する調査研究
尾島 史章; 吉川 徹
本研究の主たる目的は、兵庫県下13高校に在籍する3年生を対象とした調査を1学期末に行い、進路意識を中心とした生活・意識に関するこの15年余りの間(1981年と1997年)の変容を明らかにすることにあった。1981年調査のサンプル数は2180、1997年調査は2397である。
この調査研究で明らかになった点は、以下の6点にまとめられる。
(1)男子では進路意識に関してこの間に大きな変化はみられないが、女子では進路意識のほとんどの側面において変化がみられた。単に四年制大学志望が増加するだけでなく、教養志向から職業志向への変化や、いわゆる「適職」志向(教師・看護婦・事務職など)の衰退が明確にみられた。ただし女子の職業志望の変化は、男子が希望する医師、弁護士などの伝統的な専門職への志向を強めたわけではなく、スポーツインストラクターや放送関係の職業など「新しい」専門職への志望者が増えており、男子との競合関係が強まっているわけではなかった。
(2)それと同時に、男女の進路意識の形成には性別役割意識や男らしさ/女らしさというジェンダーハビトゥスが少なからず影響することも確認された。
(3)職業志望には、威信的地位の次元ばかりでなく、独立志向的(自由業志向的)あるいは技能的な次元が存在し、アスピレーションの構造は複数の次元において形成されていることが明らかになった。
(4)いわゆる「まじめの崩壊」の典型的な側面として指摘される近代的な職業倫理の衰退は、多様な側面から検討しても明確にはみられなかった。
(5)「重要な他者」ネットワーク(相談相手)については、男女でその形成過程が異なり、友人関係に注目すると、女子の方が同一学校の密な関係のもとに形成されることが明らかになった。
(6)社会意識の側面では、権威主義的伝統主義的な態度が高校生では成人と比較して高く、その後の剥奪的プロセスが今後の研究課題として浮かび上がってきた。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 1996年 -1997年, 基盤研究(C), 大阪経済大学
学歴達成過程の構造と変容
尾嶋 史章
本研究の目的は、学歴達成に及ぼす出身階層の影響を、その達成過程の中で、換言すれば教育経歴の各段階における出身階層の進学行動への影響という観点から明らかにすることにあった。この目的を達成するために学科・設置体など1985年社会階層と社会移動(SSM)全国調査(男性B調査・女性調査)データですでに明らかな情報に加えて、各高校(普通科)の進学率も付加して分析を行った。この分析で明らかになったのは、以下の3点である。
1.中学校から高校への進学機会の出身階層間格差は、高校進学率の上昇に伴って縮小する傾向にあるが、進学者の中での全日制普通科への進学機会の格差は、男女とも維持される傾向があり、男女間の普通科進学率の差異、ならびに出身階層構造(父世代の職業構造や学歴構造)の変化による影響を除去すると、基本的には不変であることが明らかになった
2.全日制普通科を進学校・非進学校に分けた場合、ノンマニュアル層や高等教育層と進学校および私立校との結びつきが昭和30年代後半から強まっており、早期の選抜段階から出身階層の影響が顕在化する傾向が窺われた。
3.大学進学段階でみると、ノンマニュアル層や高学歴層でいわゆる「有名校」への進学者が徐々に増加しており、この段階での格差が拡大する傾向がみられた。
学歴水準という面でみた出身階層間の進学機会の格差が基本的には維持される傾向がみられることはすでに明らかにされているが、上記の結果は同じ傾向が学歴達成のよりミクロな過程にも存在していることを示している。なお、高校の分類に関してはまだ不十分な面もあり、この点を修正して再度分析し、最終的な報告をまとめる予定である。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 奨励研究(A), 1993年 -1993年, 奨励研究(A), 大阪経済大学
教育達成に及ぼす地域社会構造の効果分析
尾嶋 史章
日本学術振興会, 科学研究費助成事業 奨励研究(A), 1987年 -1987年, 奨励研究(A), 大阪経済大学
職業・教育の自立性の心理的効果に関する社会学的研究
直井 優; 土田 昭司; 尾嶋 史章; 野田 隆
本研究の目的は, 就学している生徒・学生の教育における自立的な態度(何をいつどのように学習するかを自分自身で判断する能力)が, 彼らの学力などの知的能力や認知的側面だけでなく, ひろく自己についての概念や社会的オリエンテーションにどのような効果を及ぼしているか, という問題をインテンシヴな調査研究によって明らかにすることにある.
このために, 本研究では教育における自立性の概念を検討し, 教育の実態的複雑性, 管理の厳格性, および単調性の3つの概念が重要であることが知られた. また生徒・学生の心理的な諸機能に関しては, 知的柔軟性, 重視する価値観, 自己概念, 社会的オリエンテーションなど多様な側面をとりあげ, その他余暇行動, マス・コミュニケーションとの接触行動, 性行動をも包含した. この結果, 学業における自立性と知的能力, 一般的な生活における自立性, さらに向上心との間には, 密接な交互作用効果が作用している, という仮説をたて, 詳細な質問票を作成した.
関東7都県から無作為に抽出した生徒・学生172人に対し調査を実施し, 90名より回答を得た. これは, 調査の複雑さを考慮すれば, 十分な成果とみなされよう. これらの生徒・学生の両親については, すでに詳細な調査を実施してきており, 親子間の関連もしくは断絶をみることができるだけではなく, 父親・母親の効果を統計的にコントロールしても, なおかつ本研究の仮説が妥当するかどうかを検証することができるからである.
本研究では, 収集されたデータに細かなコードを付し, 前述した仮説を検証しうるようにデータを加工し, 基本的な集計表の分析からはじめ, より複雑な分析へと進めている. 最終的な結論を得るためには, まだ若干の時間が必要であるが, 予備的な分析において, 本研究の仮説がおおむね妥当していることがみられる., 日本学術振興会, 科学研究費助成事業 一般研究(B), 1986年 -1987年, 一般研究(B), 大阪大学