統計情報は事例に基づく評価を修正できるか(3) -緊急地震速報受信時の行動意図-
中谷内 一也; 横井 良典
日本心理学会第88回大会, 2024年09月08日
統計情報は事例に基づく評価を修正できるか(2) -緊急地震速報の有効性評価への影響について-
横井 良典; 中谷内 一也
日本社会心理学会第65回大会, 2024年09月01日
統計情報は事例に基づく評価を修正できるか(1) -緊急地震速報の有効性評価への影響について-
中谷内 一也; 横井 良典
日本社会心理学会第65回大会, 2024年09月01日
地域防災のリーダー -信頼の心理学から考える-
中谷内一也
令和5年度 京都市自主防災会連絡会研修会, 2023年11月30日, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等, からすま京都ホテル
信頼について
中谷内一也
令和5年度 第2回トップマネジメントセミナー, 2023年11月02日, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等, 奈良公園バスターミナルレクチャーホール
事例情報と統計情報の組み合わせ効果の検討 -緊急地震速報の有効性評価に着目して-
横井良典; 中谷内一也
日本社会心理学会第64回大会, 2023年09月07日, ポスター発表, 上智大学四谷キャンパス
人々のリスク認知と反応
中谷内一也
精密工学会2023年度関西地方定期学術講演会, 2023年06月23日, 口頭発表(招待・特別), リーガロイヤルホテル京都
事例情報と統計情報の組み合わせ効果の検討―バイク運転中の煽り運転被害に着目して―
柴田侑秀; 中谷内一也
日本犯罪心理学会第60回大会, 2022年09月03日, 2022年09月03日, 2022年09月04日, 口頭発表(一般), 名古屋大学
緊急地震速報の有効性を損なう受信直後の反応- 2021年9月16日石川県能登地方発表分の住民調査 -
中谷内一也; 畑敏道
日本災害情報学会第23回大会, 2021年11月27日, 口頭発表(一般), オンライン開催
科学評価の光と影
中谷内一也
日本法科学技術学会, 2021年11月11日, 口頭発表(招待・特別), オンライン開催
防犯対策実施の告知が犯罪不安に与える影響の検討 ―防犯対策が想定する罪種の違いに着目して―
柴田 侑秀; 中谷内 一也
日本犯罪心理学会第59回大会, 2021年10月02日, オンライン 筑波大学
The Unintended Effect of Descriptive Norms on Various Kinds of Disaster Preparation.
尾崎拓; 中谷内一也
The 11th International Conference of the International Society for the INTEGRATED DISASTER RISK MANAGEMENT, 2021年09月23日, 口頭発表(一般), オンライン開催
新型コロナウィルス禍のグループ・ダイナミックス研究
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第67回大会, 2021年09月11日, その他, オンライン開催
競争課題において人工知能に負けたとき,人はどのような原因帰属を行うのか
横井良典; 中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第67回大会, 2021年09月11日, 口頭発表(一般), オンライン開催
競争課題において人工知能に負けたとき,人々はその敗北をどの要因に帰属するのか?
横井 良典; 中谷内 一也
日本心理学会第85回大会, 2021年09月01日, 2021年09月01日, 2021年09月08日, オンライン開催
競争課題において人工知能に負けたとき,人はどのような原因帰属を行うのか
横井 良典; 中谷内 一也
日本社会心理学会第62回大会, 2021年08月26日, 2021年08月26日, 2021年08月27日, オンライン開催
Psychological reactions that reduce the effectiveness of Earthquake Early Warning.
中谷内一也; 畑敏道
USGS Shake Alert social science symposium, 2021年05月20日, 口頭発表(一般), オンライン開催
Why did many people wear masks against COVID-19 in Japan?
中谷内 一也; 尾崎 拓; 柴田 侑秀; 横井 良典
Society for Risk Analysis 2020 Annual Meeting, 2020年12月14日, ポスター発表, オンライン開催
住民はなぜ行動しないのか
中谷内一也
Go To 防災情報通信セミナー2020, 2020年12月04日, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等, KKRホテル大阪
新型コロナ対策の有効性認知:公衆と医師の違い
中谷内 一也; 尾崎 拓; 柴田 侑秀; 横井 良典
日本リスク研究学会第33回年次大会, 2020年11月22日, 口頭発表(一般), オンライン開催
福島県と宮城県における災害後のリスクコミュニケーションが住民の日常性に及ぼした影響
小林智之; 竹林由武; 後藤あや; 中谷内一也; 村上道夫
日本リスク研究学会第33回年次大会, 2020年11月21日, 口頭発表(一般), オンライン開催
リスク評価の影響力
中谷内一也
日本社会心理学会第61回大会, 2020年11月07日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 学習院大学 web開催
道徳価値の一致による自動運転への信頼の効果
横井良典; 中谷内一也
日本社会心理学会第61回大会, 2020年11月01日, その他, 学習院大学 web開催
新型コロナ対策の有効性認知に関する公衆-専門家間比較:8種類の行動的対策を材料として
中谷内一也; 横井良典; 柴田侑秀; 尾崎拓
日本社会心理学会第61回大会, 2020年11月01日, その他, 学習院大学 web開催
人々のリスク認知のあり方と毒性学の知見との親和性
中谷内一也
日本学術会議公開シンポジウム「毒性学研究のこれから」, 2020年09月11日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), オンライン開催
Influence of Perceived Likelihood of Victimization on Fear of Crime.
柴田侑秀; 中谷内一也
The Society for Personality and Social Psychology Annual Convention 2020, 2020年02月29日, ポスター発表, New Orleans, LA.
一般市民とのリスクコミュニケーションが 難しい理由
中谷内一也
第36回日本毒性病理学会総会及び学術集会, 2020年02月14日, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等, 東京農業大学 世田谷キャンパス
Shared Utilitarian Beliefs Influence Trust in Autonomous Vehicles, but Shared Deontological Beliefs Do Not.
横井良典; 中谷内一也
The Society for Personality and Social Psychology Annual Convention 2020, 2020年02月01日, ポスター発表, New Orleans, LA.
(第1部)リスク認知について (第2部)リスク管理者への信頼について
中谷内一也
関西水道水質協議会第68回水道衛生技術研究会, 2020年01月09日, 口頭発表(招待・特別), ヴィアーレ大阪
「〇〇に対する人びとの不安は高まっている」は本当か?
中谷内一也
日本リスク研究学会第32回年次大会, 2019年11月23日, ポスター発表, 東京工業大学大岡山キャンパス
記述的規範の逆効果 防災行動への記述的規範の促進効果と抑制効果
尾崎拓; 中谷内一也
日本社会心理学会第60回大会, 2019年11月09日, ポスター発表, 立正大学
様々なことがらに対する人びとの不安は年々高まっているのか 2008年から2019年にわたる4次の全国無作為抽出標本調査より
中谷内一也
日本社会心理学会第60回大会, 2019年11月09日, 口頭発表(一般), 立正大学
道徳的信念の共有は自動運転自動車への信頼を高めるのか
横井良典; 中谷内一也
日本社会心理学会第60回大会, 2019年11月09日, 口頭発表(一般), 立正大学
感情が強く喚起されるとき,人工知能は信頼されないのか
横井良典; 中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第66回大会, 2019年10月19日, 富山大学 五福キャンパス
How residents Respond to Earthquake Early Warnings: An Empirical Study of the Effectiveness of EEW’s in Japan.
Nakayachi, K; Becker, J.S; Potter, S.H; Dixon, M
The 10TH Conference of the International Society for Integrated Disaster Risk Management, 2019年10月18日, 口頭発表(一般), Centre Universitaire Mediterraneen, Nice, France
セクハラ加害者の地位が被害者非難に与える影響
柴田侑秀; 中谷内一也
日本心理学会第83回大会, 2019年09月11日, ポスター発表, 立命館大学大阪いばらきキャンパス
被害の影響の推定が犯罪不安に与える影響
柴田侑秀; 中谷内一也
日本犯罪心理学会第57回大会, 2019年09月01日, ポスター発表, 日本女子大学目白キャンパス
様々な領域におけるリスクをめぐる心理学的研究 -交通心理学の課題と発展に向けて-
中谷内一也
日本交通心理学会第84回京都大会, 2019年07月06日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 同志社大学今出川キャンパス
The Effect of Shared Policy of Medical Treatment on Trust in Artificial Intelligence.
横井良典; 中谷内一也
The Society for Personality and Social Psychology Annual Convention 2019, 2019年02月08日, ポスター発表, Oregon Convention Center
マニュアルなき時代の災害対策とは?心理学・民俗学・地方自治?
中谷内一也
朝日教育会議, 2018年10月27日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), パシフィコ横浜
一般市民とのコミュニケーションはなぜ難しいのか
中谷内一也
第77回日本公衆衛生学会総会, 2018年10月25日, 口頭発表(招待・特別), ビッグパレットふくしま
犯罪に対するイメージの分類:リスク認知と犯罪不安に着目して
柴田侑秀; 中谷内一也
日本心理学会第82回大会, 2018年09月25日, ポスター発表, 仙台国際センター
治療方針の共有は人工知能への信頼を高めるのか
横井良典; 中谷内一也
日本心理学会第82回大会, 2018年09月25日, ポスター発表, 仙台国際センター
災害対応における心理的な課題
中谷内一也
日本地すべり学会, 2018年06月13日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 一橋大学
Does support for disaster prevention have unintended effects on public risk perception? A (dis)proof of the insurance effect.
中谷内一也
M9 All-Hands seminar, 2017年04月25日, 口頭発表(一般), University of Washington, Seattle, WA
リスク心理から見たものさし
中谷内一也
日本リスク研究学会第29回年次大会, 2016年11月27日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), ホルトホール大分
リスク評価の不確実性開示が信頼に及ぼす影響
中谷内一也; Branden Johnson; 纐纈一起
日本リスク研究学会第29回年次大会, 2016年11月26日, ポスター発表, ホルトホール大分
実験による保険効果の検討
中谷内一也
第20回実験社会科学カンファレンス, 2016年10月29日, 口頭発表(一般), 同志社大学
災害リスク研究の次を考える:東日本大震災後、福島第一原発事故を踏まえて
中谷内一也
日本社会心理学会第57回大会, 2016年09月18日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス
東日本大震災後のリスク不安の変化(4)
中谷内一也; 長谷和久
日本社会心理学会第57回大会, 2016年09月17日, 口頭発表(一般), 関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス
心理学的にみた人々のリスク認知
中谷内一也
日本医療機能評価機構平成27年度患者安全推進全体フォーラム, 2016年03月12日, 口頭発表(招待・特別), 東京ビッグサイト
「首都直下地震4年内70%」報道が防災行動や行動意図に与えた影響
飯沼貴朗; 大木聖子; 尾崎拓; 中谷内一也
日本リスク研究学会第28回年次大会, 2015年11月21日, 口頭発表(一般), 名古屋大学
リスク認知パラドクス克服の試み
中谷内一也
日本リスク研究学会第28回年次大会, 2015年11月21日, ポスター発表, 名古屋大学
東日本大震災後のリスク不安の変化(3)
中谷内一也; 長谷和久
日本社会心理学会第56回大会, 2015年11月01日, ポスター発表, 東京女子大学
「首都直下地震 4年内70%」報道が防災行動や行動意図に与えた影響
大木聖子; 飯沼貴朗; 尾崎 拓; 中谷内一也
日本地震学会2015年度秋季大会, 2015年10月26日, 口頭発表(一般), 神戸国際会議場
Japanese risk perception after 2011 Tohoku earthquake.
中谷内一也
2015 Annual Conference of the Korean Psychological Association, 2015年08月20日, 口頭発表(招待・特別), Seoul, South Korea
防災用品への直接接触の効果:解釈レベル理論と二重過程理論に基づく実証的研究
中谷内一也; 尾崎拓
日本災害情報学会第16回学会大会, 2014年10月26日, 口頭発表(一般), アオーレ長岡
リスクコミュニケーションにおける信頼:その規定因と向上
中谷内一也
リスクコミュニケーション国際シンポジウム, 2014年10月16日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), .政策研究大学院大学
アンカリング効果の発生過程に関するモデルの比較検討
長谷和久; 中谷内一也
日本社会心理学会第55回大会, 2014年07月27日, 口頭発表(一般), 北海道大学
運命共同化による信頼の改善
中谷内一也
日本社会心理学会第55回大会, 2014年07月27日, 口頭発表(一般), 北海道大学
地震防災行動規定因としての記述的模範
尾崎拓; 中谷内一也
日本社会心理学会第55回大会, 2014年07月26日, ポスター発表, 北海道大学
信頼の心理学
中谷内一也
第39回日本香粧品学会, 2014年06月06日, 口頭発表(招待・特別), 有楽町朝日ホール
リスクに対してどうすれば準備を促すことができるか
中谷内一也
日本太陽エネルギー学会太陽光発電部会第8回セミナー, 2014年03月26日, 口頭発表(招待・特別), 秋葉原コンベンションホール
Trust in a wide variety of risk managers after a catastrophic disaster.
中谷内一也
Society for Risk Analysis 2013 Annual Meeting, 2013年12月09日, ポスター発表, Baltimore, Maryland
Risk Perception and Trust.
中谷内一也
FMU-IAEA International Academic Conference, 2013年11月22日, 口頭発表(招待・特別), Fukushima Medical University, Fukushima
風評被害発生メカニズムの検討(2)-主婦を対象とした買い控えモデルの一般性の検討- (共同:工藤大介)
工藤大介; 中谷内一也
日本社会心理学会第54回大会, 2013年11月03日, 口頭発表(一般), 沖縄国際大学
地震防災行動に及ぼすリスク認知と効果性の影響
尾崎拓; 中谷内一也
日本社会心理学会第54回大会, 2013年11月03日, 口頭発表(一般), 沖縄国際大学
大地震直後の安否確認行動(2)
中谷内一也
日本社会心理学会第54回大会, 2013年11月03日, 口頭発表(一般), 沖縄国際大学
負担が災害対策を促進する 個人による災害準備へのイニシエーション研究の応用
中谷内一也
日本災害情報学会第15回学会大会, 2013年10月26日, 口頭発表(一般), 桐生市市民文化会館
信頼のマメネジメント -安全と安心の心理学-
中谷内一也
平成25年度標準化と品質管理全国大会, 2013年10月04日, 口頭発表(招待・特別), 都市センターホテル
東日本大震災に伴う風評被害発生メカニズムの検討 -買い控え行動を引き起こす心理的要因の探索と福島県農産物に対する潜在的態度の検討- (共同:工藤大介)
工藤大介; 中谷内一也
日本心理学会第77回大会, 2013年09月20日, 口頭発表(招待・特別), 札幌コンベンションセンター
大地震直後の安否確認行動(1)
中谷内一也
日本心理学会第77回大会, 2013年09月19日, 口頭発表(一般), 札幌コンベンションセンター
リスクへの向き合い方
中谷内一也
防災講演会「災害リスクへの向き合い方」, 2013年09月09日, 口頭発表(基調), 御荘文化センター
リスク心理学研究の観点から より良い地震ハザード評価の出し方・使われ方について
中谷内一也
京都大学防災研究所特定研究集会, 2013年07月19日, 口頭発表(一般), キャンパスプラザ京都
Does a great disaster make the public pessimistic or optimistic
中谷内一也; 大木聖子; 横山広美
Society for Risk Analysis 2012 Annual Meeting, 2012年12月10日, ポスター発表, San Francisco, California
東日本大震災後のリスク不安の変化(2)
中谷内一也
日本社会心理学会第53回大会, 2012年11月18日, 口頭発表(一般), 筑波大学
犯罪不安と刑事司法への信頼
中谷内一也
日本犯罪社会学会第39回大会, 2012年10月27日, その他, 一橋大学国立西キャンパス
災害と心理学
中谷内一也
日本心理学会第76回大会, 2012年09月13日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 専修大学
東日本大震災後のリスク不安の変化(1)
中谷内一也
日本心理学会第76回大会, 2012年09月12日, ポスター発表, 専修大学
安心と信頼の心理学
中谷内一也
日本セキュリティ・マネジメント学会第26回全国大会, 2012年06月23日, 口頭発表(基調), 電気通信大学
Contrast or assimilation? Effects of the Tohoku earthquake and crisis at Fukushima nuclear plant on public anxiety regarding number of hazards.
中谷内一也
Society for Risk Analysis Europe 2012 Annual Meeting, 2012年06月18日, ポスター発表, Zurich, Switzerland
地震学についての国民の認識と支持
中谷内一也
日本地球惑星化学連合大会, 2012年05月22日, 口頭発表(招待・特別), 幕張メッセ国際会議場
リスク配分をめぐる法と正義
中谷内一也
日本法社会学会学術大会, 2012年05月13日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 京都女子大学
安全から安心への正攻法
中谷内一也
技術倫理協議会公開シンポジウム, 2011年12月14日, 口頭発表(基調), 建築会館ホール
Trust in organizations relevant to the Tohoku Earthquake and to the crisis at the Fukushima Daiichi nuclear power plant.
中谷内一也
Society for Risk Analysis 2011 Annual Meeting, 2011年12月05日, ポスター発表, Charleston,South Carolina
東日本大震災の巨大津波がもたらしたリスク判断への皮肉な結果 (共同:大木聖子)
大木聖子; 中谷内一也
日本リスク研究学会第24回年次大会, 2011年11月20日, 口頭発表(一般), 静岡大学浜松キャンパス
コミュニケーションの失敗学
中谷内一也
日本リスク研究学会第24回年次大会, 2011年11月18日, その他, 静岡大学浜松キャンパス
風評被害:誤った消費者像が的外れな対策を招く
中谷内一也
日本応用心理学会主催:公開シンポジウム, 2011年11月12日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 日本体育大学世田谷キャンパス
巨大津波が西日本の住民にもたらしたリスク判断の逆説的影響 (共同:大木聖子)
大木聖子; 中谷内一也
日本地震学会第13回大会, 2011年10月30日, 口頭発表(一般), 静岡大学
科学技術社会のリスクに対処するために認知科学ができること
中谷内一也
日本認知科学会第28回大会, 2011年09月24日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 東京大学
信頼のSVSモデル(5):東日本大震災に関連した組織の信頼
中谷内一也
日本社会心理学会第52回大会, 2011年09月19日, 口頭発表(一般), 名古屋大学
市民参加による環境計画の合意形成:多元的価値を反映した合意形成は可能か?
中谷内一也
日本社会心理学会第52回大会, 2011年09月19日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 名古屋大学
東日本大震災を乗り越えるために:社会心理学からの提言
中谷内一也
日本社会心理学会第52回大会, 2011年09月19日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 名古屋大学
さまざまなハザードに対する不安の心理
中谷内一也
化学物質の安全管理に関するシンポジウム, 2011年02月18日, 口頭発表(基調), 三田共用会議所
安全と安心の心理学:医療への適用を考えながら
中谷内一也
日本医療マネジメント学会第8回京滋支部学術学会, 2011年02月11日, 口頭発表(招待・特別), 京都テルサ
A measure to reduce public anxiety about hazards.
中谷内一也
Society for Risk Analysis 2010 Annual Meeting, 2010年12月06日, 口頭発表(一般), Salt Lake City, Utah
リスク削減情報のやぶへび効果
中谷内一也
日本リスク研究学会第23回年次大会, 2010年10月28日, 口頭発表(一般), 明治大学駿河台キャンパス
公共問題における当事者と非当事者が選ぶ正当性 (共同:野波寛・加藤潤三・杉浦敦吉)
野波寛; 加藤潤三; 中谷内一也; 杉浦敦吉
日本心理学会第74回大会, 2010年09月21日, ポスター発表, 大阪大学
沖縄における住民のコミュニティー価値の検討 (共同:加藤潤三・野波寛)
加藤潤三; 野波寛; 中谷内一也
日本社会心理学会第51回大会, 2010年09月18日, ポスター発表, 広島大学
制度的正当性は認知的正当性を阻害する? -沖縄県恩納村におけるコモンズの管理権をめぐる多様なアクターの法規制と信頼性- (共同:野波寛・加藤潤三)
野波寛; 加藤潤三; 中谷内一也
日本社会心理学会第51回大会, 2010年09月18日, 口頭発表(一般), 広島大学
日本人は何に不安を感じているのか(3) -アージ理論を軸にした不安概念の検討と自由回答の分析-
中谷内一也
日本社会心理学会第51回大会, 2010年09月18日, 口頭発表(一般), 広島大学
Public concern about environmental hazards in Japan.
中谷内一也
Modern Society and Public Concern, 2010年08月27日, 口頭発表(一般), University of Turku, Finland
Community identity and perceived legitimacy for managers of commons: A study on social governance in Japan. (共同:野波寛・加藤潤三)
中谷内一也
27th International Conference of Applied Psychology, 2010年07月01日, ポスター発表, Melbourne, Australia
放射線リスク認知-人々は放射線をどのように認識するのか-
中谷内一也
日本放射線安全管理学会第8回学術大会, 2009年12月02日, 口頭発表(招待・特別), 長崎大学医学部記念講堂・良順会館
新型インフルエンザ対策としてのマスク着用規定要因
中谷内一也
日本リスク研究学会第22回年次大会, 2009年11月28日, 口頭発表(一般), 早稲田大学西早稲田キャンパス
一般人のリスク認知:医療場面への適応を考えて
中谷内一也
医療の質・安全学会第4回学術集会, 2009年11月23日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 東京ビッグサイト会議棟
ゼロリスクとリスクコミュニケーション
中谷内一也
第15回日本薬剤疫学会学術総会, 2009年11月14日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 東京大学医学部鉄門記念講堂
赤土流出問題に対する村落住民と都市住民の環境配慮行動の相違 (共同:加藤潤三・野波寛)
加藤潤三; 野波寛; 中谷内一也
日本社会心理学会第50回大会・日本グループダイナミクス学会第56回大会, 2009年10月12日, ポスター発表, 大阪大学
公共問題における説得効果と正当性:正当性検証版SNGを用いた実験的検討 (共同:野波寛・加藤潤三)
野波寛; 加藤潤三; 中谷内一也
日本社会心理学会第50回大会・日本グループダイナミクス学会第56回大会, 2009年10月12日, 口頭発表(一般), 大阪大学
リスク論は個人の対策行為を説明できるか-新型インフルエンザ感染拡大時のマスク着用理由-
中谷内一也
日本社会心理学会第50回大会・日本グループダイナミクス学会第57回大会, 2009年10月12日, 口頭発表(一般), 大阪大学
コモンズの利用者と管理者:仮想世界ゲームにおける正当性 (共同:野波寛・加藤潤三)
野波寛; 加藤潤三; 中谷内一也
日本心理学会第73回大会, 2009年08月27日, ポスター発表, 立命館大学
リスクと安全・安心をめぐる心の働き
中谷内一也
電子情報通信学会安全性研究会, 2009年07月24日, 口頭発表(基調), 筑波大学東京キャンパス
コモンズの保全を目的とした共同統治システムの成立過程:沖縄県恩納村における行政・漁協・一般住民の正当性 (共同:野波寛・加藤潤三)
野波寛; 加藤潤三; 中谷内一也
日本コミュニティ心理学会第12回大会, 2009年06月20日, 口頭発表(一般), 東北大学
食品の安全性と食への安心
中谷内一也
日本環境変異原学会公開シンポジウム, 2009年05月30日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 慶應義塾大学
リスクの心理学 パネルディスカッション「情報セキュリティにおけるヒューマンエラー・リスクへの対処」
中谷内一也
重要インフラ情報セキュリティフォーラム, 2009年02月20日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), ベルサール八重洲
リスク管理の基本的考え方と個人のリスク認知との齟齬
中谷内一也
第2回横幹連合総合シンポジウム, 2008年12月05日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 筑波大学
日本人の科学技術への不安
中谷内一也
科学技術社会論学会第7回年次研究大会, 2008年11月09日, 口頭発表(一般), 大阪大学
環境問題におけるステークホルダー間の責任帰属認知が住民の環境配慮行動に及ぼす影響?赤土流出問題をめぐる農業・漁業・一般住民の比較? (共同:加藤潤三・野波 寛)
加藤潤三; 野波寛; 中谷内一也
日本社会心理学会第49回大会, 2008年11月03日, ポスター発表, かごしま県民交流センター
専門家の犯罪リスク認知と頻度推定 -犯罪リスク認知の研究(4)- (共同:島田貴仁)
島田貴仁; 中谷内一也
日本社会心理学会第49回大会, 2008年11月03日, 口頭発表(一般), かごしま県民交流センター
日本人は何に不安を感じているのか(2)
中谷内一也
日本社会心理学会第49回大会, 2008年11月03日, 口頭発表(一般), かごしま県民交流センター
日本人は何に不安を感じているのか(1)-犯罪についての分析- (共同:島田貴仁)
中谷内一也
日本心理学会第72回大会, 2008年09月20日, ポスター発表, 北海道大学
コモンズの管理をめぐる異種業者間の'正当性-沖縄本島の赤土流出問題をフィールドとして- (共同:野波寛・加藤潤三)
中谷内一也
日本心理学会第72回大会, 2008年09月19日, ポスター発表, 北海道大学
リスク認知と信頼-心理学からのアプローチ-
中谷内一也
日本農薬学会第33回大会, 2008年03月30日, 口頭発表(招待・特別), 奈良県新公会堂
An integration of the salient value similarity model and the traditional perspective on trust
中谷内一也
Society for Risk Analysis 2007 Annual Meeting, 2007年12月01日, ポスター発表, Marriot Riverwalk, San Antonio, Texas
一般人のリスク認知と信頼
中谷内一也
2007年製薬放射線コンファレンス総会, 2007年11月19日, 口頭発表(招待・特別), メルパルク京都
環境問題に対する責任・貢献評価がステークホルダーへの信頼に及ぼす影響 -沖縄県赤土流出問題を事例として- (共同:加藤潤三・野波寛)
加藤潤三; 野波寛; 中谷内一也
日本社会心理学会第48回大会, 2007年09月24日, 口頭発表(一般), 早稲田大学
信頼のSVSモデル(4):情報モニタリング法によるアプローチ
中谷内一也
日本社会心理学会第48回大会, 2007年09月23日, 口頭発表(一般), 早稲田大学
犯罪リスク認知の研究(1)-過大視か過小視か- (共同:島田貴仁)
中谷内一也
日本心理学会第71回大会, 2007年09月20日, ポスター発表, 東洋大学
犯罪リスク認知のポジショニング分析 -犯罪リスク認知の研究(3)- (共同:島田貴仁)
島田貴仁; 中谷内一也
日本行動計量学会第35回大会, 2007年09月05日, 口頭発表(一般), 同志社大学
リスクのモノサシ
野波寛; 加藤潤三; 中谷内一也
NITE化学物質管理センター成果発表会, 2007年06月21日, 口頭発表(招待・特別), 津田ホール
コモンズの管理をめぐる合意形成:沖縄本島の赤土流出に対する異種業者間の'正当性' (共同:野波寛・加藤潤三)
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第54回大会, 2007年06月17日, 口頭発表(一般), 名古屋大学
信頼の回復
中谷内一也
第34回消費者行動研究コンファレンス報告, 2007年06月02日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 関西学院大学
リスクのモノサシの提案
中谷内一也
化学物質の環境リスクに対する国際シンポジウム, 2006年11月14日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 釧路市観光国際交流センター
信頼のSVSモデル(3)-遺伝子組み換え米についての社会調査-
中谷内一也
日本リスク研究学会第19回研究発表会, 2006年11月12日, 口頭発表(一般), 産業技術総合研究所 つくば中央事業所
Value specificity and trust in a dispute over water quality (共同:Cvetkovich, G.)
中谷内一也
Society for Risk Analysis 2005 Annual Meeting, 2005年12月01日, ポスター発表, Buena Vista Palace Resort & Spa, Orlando, FL
信頼のSVSモデル(2)
中谷内一也
日本リスク研究学会第18回研究発表会, 2005年11月01日, 口頭発表(一般), 大阪大学
信頼のSVSモデル(1):水源湖の環境リスク論争事例
中谷内一也
日本社会心理学会第46回大会, 2005年10月01日, 口頭発表(一般), 関西学院大学
Developing and keeping trust: An experimental approach. (共同:渡部幹)
中谷内一也
American Sociological Association 99th Annual Meeting, 2004年08月01日, 口頭発表(一般), Hilton, San Francisco
信頼の構築(5) -人質自主提供の効果を左右するもの- (共同:渡部幹)
渡部幹; 中谷内一也
日本社会心理学会第45回大会, 2004年07月01日, 口頭発表(一般), 北星学園大学
Improvement of trust by voluntary hostage posting.
中谷内一也
Society for Risk Analysis 2003 Annual Meeting, 2003年12月01日, ポスター発表, Renaissance Inner Harbor, Baltimore
The building of trust: The signaling effects of voluntary provision of monitoring and self-sanction
中谷内一也
Society for Judgment and Decision Making 2003 Annual Meeting, 2003年11月01日, ポスター発表, Hyatt Regency and Fairmont Hotels, Vancouver
信頼の構築(3) -信頼獲得に関する人質供出と"実績"との比較-
中谷内一也; 渡部幹
日本社会心理学会第44回大会, 2003年09月01日, 口頭発表(一般), 東洋大学
信頼の構築(4) -実験ゲームによる行動的指標- (共同:渡部幹)
渡部幹; 中谷内一也
日本社会心理学会第44回大会, 2003年09月01日, 口頭発表(一般), 東洋大学
信頼の構築(2) -自主的人質供出の効果に関する追試研究-
中谷内一也; 渡部幹
日本グループダイナミックス学会第50回大会, 2003年03月01日, 口頭発表(一般), キャンパスプラザ京都
Building trust:The effects of hostage posting under uncertainty
中谷内一也; 渡部幹
Society for Judgment and Decision Making 2002 Annual Meeting, 2002年11月01日, ポスター発表, Hyatt and Westin Hotels, Kansas City
信頼の構築 -人質供出の自発性による信頼関係の形成-
中谷内一也; 渡部幹
日本社会心理学会第43回大会, 2002年11月01日, 口頭発表(一般), 一橋大学
環境リスク政策における合意形成過程の研究 -千歳川放水路計画の事例調査(3)-
中谷内一也; 大沼進
日本リスク研究学会第14回研究発表会, 2001年11月01日, 口頭発表(一般), 神戸大学
環境リスク政策における合意形成過程の研究 -千歳川放水路計画の事例調査(4)- (共同:大沼進)
大沼進; 中谷内一也
日本リスク研究学会第14回研究発表会, 2001年11月01日, 口頭発表(一般), 神戸大学
環境リスク政策における合意形成過程の研究 -千歳川放水路計画の事例調査(1)- (共同:大沼進)
大沼進; 中谷内一也
日本社会心理学会第42回大会, 2001年10月01日, 口頭発表(一般), 愛知学院大学
環境リスク政策における合意形成過程の研究 -千歳川放水路計画の事例調査(2)-
中谷内一也; 大沼進
日本社会心理学会第42回大会, 2001年10月01日, 口頭発表(一般), 愛知学院大学
「完全な安全」の要求についての調査
中谷内一也
日本リスク研究学会第13回研究発表会, 2000年11月01日, 口頭発表(一般), 明治大学
心理的勘定の研究(1): 温室効果気体削減のための保有税グリーン化と炭素税の比較
中谷内一也
日本社会心理学会第41回大会, 2000年11月01日, 口頭発表(一般), 関西大学
リスク心理学が描くリスク概念
中谷内一也
日本リスク研究学会春季講演シンポジウム, 2000年06月01日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 東京大学山上会館
A restraint on people's pursuit of environmental zero risk.
中谷内一也
Society for Judgment and Decision Making 1999 Annual Meeting, 1999年11月01日, ポスター発表, Westin Century Plaza Hotel, Los Angels
「完全な安全」の可能性評価についての調査
中谷内一也
日本社会心理学会第40回大会, 1999年10月01日, ポスター発表, 慶應義塾大学
閾値の問題をめぐる社会心理学的アプローチ
中谷内一也
日本保健物理学会第34回研究発表会, 1999年05月01日, 口頭発表(招待・特別), 大分市コンパルホール
人々は環境ゼロリスクを追及するか(2)
中谷内一也
日本社会心理学会第39回大会, 1998年11月01日, 口頭発表(一般), 筑波大学
人々は環境ゼロリスクを追求するか(1)
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第46回大会, 1998年09月01日, 口頭発表(一般), 名古屋大学
ゼロリスクが不可能であることを伝えると人々の反応はどう変わるか(3)
中谷内一也
日本リスク研究学会第10回研究発表会, 1997年11月01日, 口頭発表(一般), 京都大学防災研究所
ゼロリスクが不可能であることを伝えると人々の反応はどう変わるか(1)
中谷内一也; 杉本徹雄
日本広告学会第28回全国大会, 1997年10月01日, 口頭発表(一般), 宝塚造形芸術大学
ゼロリスクが不可能であることを伝えると人々の反応はどう変わるか(2)
中谷内一也
日本社会心理学会第38回大会, 1997年09月01日, 口頭発表(一般), 立教大学
ゼロリスク不可能の伝達と消費者の反応
中谷内一也
第14回消費者行動研究コンファレンス, 1997年06月01日, 口頭発表(一般), 関西学院大学
Lay judgment of threshold in dose-response relationship.
中谷内一也
Society for Risk Analysis 1995 Annual Meeting, 1995年12月01日, ポスター発表, Sheraton Waikiki, Honolulu
リスクの閾値判断と安全基準への評価との関係
中谷内一也
日本心理学会第59回大会, 1995年10月01日, ポスター発表, 沖縄コンベンションセンター
水道水における量-反応関係についてのリスク認知
中谷内一也
日本リスク研究学会第7回研究発表会, 1994年11月01日, 口頭発表(一般), 東京海上火災本社新館
健康リスクにおける閾値の判断について
中谷内一也
日本社会心理学会第35回大会, 1994年10月01日, 口頭発表(一般), 関西大学
一般人の量-反応関係の認知について
中谷内一也
日本リスク研究学会第6回研究発表会, 1993年11月01日, 口頭発表(一般), 安田火災海上本社講堂
サメ騒動にみるリスク知覚(3)-質問紙調査と海水浴場来客状況との対応関係-
中谷内一也
第7回消費者行動研究コンファレンス, 1993年11月01日, 口頭発表(一般), 中央大学
百貨店の催事会場における群集流動に関する研究(2) -群集の巨視的行動パターンについて-
矢守 克也; 中谷内一也; 西道 実
日本社会心理学会第34回大会, 1993年10月01日, ポスター発表, 東京大学
百貨店の催事会場における群集流動に関する研究(1) -群集行動と物的要因との関連について-
西道 実; 中谷内一也; 矢守 克也
日本社会心理学会第34回大会, 1993年10月01日, ポスター発表, 東京大学
サメ騒動にみるリスク知覚(1) -「リスク知覚」と「リスク対応策への評価」の時系列比較-
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第41回大会, 1993年10月01日, 口頭発表(一般), 熊本大学
サメ騒動にみるリスク知覚(2) -新聞報道の分析と学生のリスク知覚バイアス-
中谷内一也
日本社会心理学会第34回大会, 1993年10月01日, 口頭発表(一般), 東京大学
値引きに対するベネフィット知覚の歪み
中谷内一也
日本広告学会第23回全国大会, 1992年10月01日, 口頭発表(一般), 静岡県立大学
ベネフィット知覚の歪みについて(1)
中谷内一也
日本心理学会第56回大会, 1992年09月01日, 口頭発表(一般), 同志社大学
ベネフィット知覚の歪みについて(2)
中谷内一也
産業・組織心理学会第8回大会, 1992年09月01日, ポスター発表, 吉祥寺第一ホテル
意思決定過程におけるheuristicsの選択について-心理的収支決算と心理的財布と用いて-
石橋優子; 小嶋外弘; 中谷内一也
日本心理学会第55回大会, 1991年10月01日, 口頭発表(一般), 仙台国際センター
催眠商法への参加にかかわる個人差要因の研究 -悪徳商法になぜ乗せられるか(5)-
中谷内一也
日本心理学会第55回大会, 1991年10月01日, 口頭発表(一般), 仙台国際センター
人だかりサイズの規定因に関する研究 -悪徳商法になぜ乗せられるか(4)-
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第39回大会, 1991年10月01日, 口頭発表(一般), 東北福祉大学
安全性と選択ストラテジー
中谷内一也; 秋山学; 水野邦夫; 木下冨雄
日本社会心理学会第32回大会, 1991年10月01日, ポスター発表, 東京学芸大学
ある人だかりについての野外研究(2)-悪徳商法になぜ乗せられるか(3)-
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第38回大会, 1990年11月01日, 口頭発表(一般), 関西大学
ある人だかりについての野外研究 -悪徳商法になぜ乗せられるか(2)-
中谷内一也
日本社会心理学会第31回大会, 1990年09月01日, ポスター発表, 関西学院大学
A Cross-cultural comparison concerning the opinions on advertising.
中谷内一也; 小嶋外弘
22nd International Congress of Applied Psychology '90, 1990年07月01日, 口頭発表(一般), Kyoto International Convention Center
Binary choice in multi-alternative decisional tasks: Single combat effect as a decisional bias.
中谷内一也
22nd International Congress of Applied Psychology '90, 1990年07月01日, ポスター発表, Kyoto International Convention Center
集団意思決定過程における認知的努力の検討
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第37回大会, 1989年11月01日, 口頭発表(一般), 東京大学
意思決定過程における2選択肢の表象形成(2)
中谷内一也
日本心理学会第53回大会, 1989年11月01日, 口頭発表(一般), 筑波大学
比較広告効果の研究
中谷内一也; 石橋優子
日本社会心理学会第30回大会, 1989年09月01日, 口頭発表(一般), 東京女子大学
悪徳商法になぜ乗せられるか(1) -状況要因からの検討-
中谷内一也
関西心理学会第100回大会, 1988年11月01日, 口頭発表(一般), 京都大学
広告の国際化
中谷内一也
日本広告学会第19回全国大会, 1988年11月01日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名), 亜細亜大学
広告に対する態度の日中比較
中谷内一也; 永野光朗; 杉本徹雄; 凌文栓; 小嶋外弘
日本広告学会第19回全国大会, 1988年11月01日, 口頭発表(一般), 亜細亜大学
意思決定過程における2選択肢の表象形成
中谷内一也
日本心理学会第52回大会, 1988年10月01日, 口頭発表(一般), 広島大学
意思決定後の選択肢記憶(1)
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第36回大会, 1988年10月01日, 口頭発表(一般), 福岡教育大学
消費者行動の基礎的研究(6)
杉本徹雄; 中谷内一也
関西心理学会第99回大会, 1987年11月01日, 口頭発表(一般), 同志社大学
知識と意思決定過程(3)
中谷内一也; 杉本徹雄
関西心理学会第99回大会, 1987年11月01日, 口頭発表(一般), 同志社大学
消費者行動の基礎的研究(5)
杉本徹雄; 小嶋外弘; 中谷内一也
日本心理学会第51回大会, 1987年10月01日, 口頭発表(一般), 東京大学
知識と意思決定過程(1)
中谷内一也; 杉本徹雄; 小嶋外弘
日本心理学会第51回大会, 1987年10月01日, 口頭発表(一般), 東京大学
知識と意思決定過程(2)
中谷内一也
日本グループダイナミックス学会第35回大会, 1987年10月01日, 口頭発表(一般), 専修大学
価格-品質関係の多属性分析アプローチ
中谷内一也
関西心理学会第98回大会, 1986年11月01日, 口頭発表(一般), 関西大学
消費者行動のスクリプトにおけるイメージの関連性
中谷内一也
日本心理学会第50回大会, 1986年10月01日, 口頭発表(一般), 名古屋大学
製品関与の心理学研究(5)
中谷内一也; 杉本徹雄
関西心理学会第97回大会, 1985年11月01日, 口頭発表(一般), 奈良教育大学
リスク点描 「信頼」能力だけで得られず, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2024年06月22日, 17面, <記事の中で研究の紹介>
例えば、混み合う電車で運悪く足を踏まれた時に、その人からこう言われたら、どう感じるだろう。
「踏まれた足は2時間以内に治る軽症で、後遺症も残らないので大丈夫です」
確かにそうかもしれないが、「正しいこと」を言う前に謝ってほしいと思う。千葉大の神里達博教授が教えてくれた、例え話だ。
まずは謝って信頼関係を築かないと、正論を言われても納得できない。「リスクを巡って社会の対立が続くのは、信頼が損なわれていること根底にある」。神里さんはそう指摘する。
信頼できない組織が行うことに、高いリスクを感じることは国内外の研究で確かめられている。同志社大の中谷内一也教授は、ナノテクや医療ミスなど51項目の様々なリスクと、それぞれのリスクを管理する組織への信頼を調査。国内約1200人の回答から、組織への信頼が低いと、不安が高まることが確認できた。
では、いかに信頼を得るか。中谷内さんらは、東日本大震災の発生後、東京電力や当時の規制機関だった原子力安全・保安院、東京大地震研究所などへの信頼を調べた。当然、東電や保安院への信頼は最低レベルだった。
調査では、信頼にかかわる研究で国際的な指標である次の3項目の評価も聞いた。豊富な知識を持つといった「能力」、一生懸命で熱心といった「動機づけ」、気持ちを共有しているといった「価値共有」だ。
東電や保安院への不信を生み出すのは、能力があるかどうか、ではなかった。価値が共有されていない。つまり、「事故対応に私たちの思いが届いていない」といった気持だった。
ただ、信頼への道は複雑だ。中谷内さんが遺伝子組み換えや土砂災害などで調べた結果、関心の強さなどに応じ、動機づけや能力の評価が信頼に結びつく場合もあった。信頼に「特効薬」はないようだが、確実に言えることはあるという。
「高い能力で真面目に仕事をすれば分かってもらえる、というのはある意味、傲慢です。思いを共有し、安全確保に努めている姿を見せることも大切です。人は能力だけを見ているわけではないのです」
科学は、実験や観察を通して事実を積み上げていく。そこでは感情は排除される。それが科学の強みなのだが、社会ではその強みに加え、人々と思いを共有していることを示すことも信頼獲得に必要なのだろう。
(抜粋)
リスク点描 知識あれば不安減らせる?, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2024年05月25日, 28面, <記事の中で研究の紹介>
「いっぱい勉強をして知識を蓄えると、リスクにうまく対処できるはずだ」
素朴にそう思えるが、同志社大と東京大の研究者がまとめた調査から、単純ではない現実が垣間見える。全国の役000人に、科学的な知識やリスクのとらえ方を聞いて分析した。
科学的な知識は「地球の中心はとても熱い」「レーザーは音波を集中することで得られる」など11個の質問の真偽を聞いた。ちなみに、地球の中心は高温なので答えは「真」(正答率やく割)、レーザーは電磁波で、音波ではないので答えは「偽」(同3割)だ。
遺伝子組み換えや飛行機事故など様々な項目で、不安を感じる程度も調査。科学的知見が豊富さが不安を抑える傾向がわかった。やはり無知が不安に結びつくのか。
「そう短絡してはいけません」。研究に参加した東大の横山広美教授(科学技術社会論)はくぎを刺す。不安には年齢や性別など様々な要素が関係する。知識の量は不安を感じる程度のごく一部しか説明できない。さらに、科学的な知識が豊富な人は、科学とは直接関係のない、犯罪や事故、家庭問題などの不安も少なかった。科学的知識そのものではなく、知識の獲得を可能にする経済的豊かさなどが、不安を抑えているのかもしれない。
「無知が不安に結びつく」との考え方は、欠如した知識を注ぎ込めば良いといった発想に結びつく。この「欠如モデル」は1990年代以降、限界が示されてきている。
むしろ知識が相互理解を妨げることを示す研究例もある。地球温暖化を巡って、民主党と共和党で考え方の違いが際立つ米国。共和党支持者は「科学者は二酸化炭素が温暖化をもたらすと考えている」といった知識があっても、それに納得せず、知識を持つ人ほど地球温暖化に懐疑的なことが知られている。物知りであっても、自分の考えを擁護する知識を吸収するばかりでは、分断が深まる。
一方、豊富な知識がリスクを高く感じさせる例もある。横山さんがAI(人工知能)に関して行った研究では、AIの知識が豊富な人ほど技術に懸念を持つ傾向があった。「無知だから」ではなく、「知っているから」こそ恐れるわけだ。
知識の有無が単純にリスクのとらえ方を決めるわけではない。リスクとの関係が深いと専門家が注目するのは「信頼」だ。次回は、信頼について考えたい。
(抜粋)
珠洲の震度6強 「身を守る行動とった」25%, インターネットメディア, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞オンライン, 2023年06月16日, ネットニュース, <緊急地震速報の調査を紹介> 2023/06/16 05:00
珠洲市で震度6強を観測した地震で、携帯電話で緊急地震速報を受信した人のうち、身を守る行動をとったのは約25%にとどまることが、同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)の調査でわかった。多くの人は、携帯電話を確認したり、身構えたりするのにとどまり、安全を確保する動きができなかった。
調査は5月10、11日、石川、富山両県と新潟県の一部の住民を対象にインターネットで行い、20~79歳の男女1620人から回答を得た。65.5%にあたる1061人が、揺れる前に携帯電話で速報に気づいた。
このうち1000人に、速報を受信後、「まず何をしたか」「その次に何をしたか」を尋ねた。最初の行動は「携帯電話の画面を見る」が37.0%で最多、次いで「揺れを身構えて待つ」が22.4%、「静観している」が10.6%と続いた。
「次の行動」でも「身構えて待つ」(32.4%)が最多で、「危険がないか周囲を確認する」「頭を守る」「しゃがむなどして身体の安全を確保する」など身を守る行動をとった人は25.2%にとどまった。
中谷内教授は「いつもと異なる音がした時、そちらに注意を引かれるのは人間の自然な反応」とした上で、「危ないものから離れたり、しゃがんだりして、簡単な防御行動をなるべく早くとるべきだ。重いものを高いところに置かないなど、普段から備えることも重要だ」と指摘している。
グラフ掲載: 緊急地震速報を受信後にとった行動
(一部抜粋)
災害時の逃げ遅れなぜ? 判断妨げる心理的「癖」, 新聞・雑誌, 本人以外, 北海道新聞社, 北海道新聞, 2023年05月27日, 13面, <コラム> インタビュー
大災害が迫っているのに、自分の身を守る行動が遅れる人がいるのはなぜなのか―。自治体が警告を発しても被害に巻き込まれてしまうケースが、大災害のたびに起きている。今回は逃げ遅れる人の心理と、それを乗り越える防災対策を考える。
人間が危険から目を背け、適切に行動できない現象は、防災心理学で広く研究されている。そのメカニズムを解説した米国人研究者の著作「ダチョウのパラドックス 災害リスクの心理学」 (ロバート・マイヤー、ハワード・クンルーザー著)は、心理的要因を後述する六つに分類した。
① 近視眼的思考癖:目先の利益や損失を偏重し、長期的な視点を見失う傾向。
② 忘却癖:過去の教訓を忘れ、最近の経験だけで決定しようとする傾向。
③ 楽観癖:自分が被害を受ける可能性を過小評価し、自分だけは大丈夫だと思い込む傾向。
④ 情性癖:新しい行動や変化を避け、現状維持を好む傾向。
⑤ 単純化癖:限られた一部の情報だけで考えてしまう傾向。
⑥ 同調癖:周囲の人々の行動や意見に影響を受けて行動を決定する傾向。
■ 心動かす呼びかけを 同志社大・中谷内一也教授
心理的な「癖」は、日常生活を円滑に過ごす上で必要な機能でもある。過去の不幸を「忘却」するから被害者やその家族は心の平静を保てるし、「同調」も組織内の処世術としては有効だ。癖から逃れられないことを前提に、どうすれば有効な避難対策を構築できるのか。「ダチョウのパラドックス」を翻訳した同志社大学の中谷内一也教授に、最新の心理学研究を踏まえた避難対策のあり方を聞いた。
―この本を日本で紹介した動機は。心理学で分析して「わかったつもり」になっても、被害の軽減にはつながらないという批判もあります。
「災害対策は個人や地域レベルの備え、安全基準や規制の整備、災害に強いまちづ<り、といった総合力の勝負です。心理分析への批判はその通りで、分析自体が目的であってはなりません。人が心の癖や偏りを克服できないことを前提に、実効性のある防災対策に逆利用することが必要です」
―具体的には。
「例えば津波警報を伝えるアナウンサーは、以前は『冷静に行動を』とパニックが起きないよう落ち着いた声で呼びかけました。最近は『今すぐ命を守る行動を』と脅かすように絶叫します。冷静でいるより、感情が高ぶっている時の方が人は行動を起こしやすい、という心理を応用した対応だと思います」
「また『同調癖』を避難を促す方向に応用した好例は、京大防災研究所の矢守克也教授が高知県などで取り組む『(地域)ぐるみ防災』です。地元の小中学生が高齢者の避難カルテをつくり『おばあちゃん、一緒にやろうよ』と呼びかける。他者との関係を保ちたい同調癖を利用し、高齢者も参加しやすくしています」
一災害の記憶を風化させる忘却癖もやっかいです。
「マスコミが取り組む大災害の『〇〇周年特集』はたいへん意義があります。人は災害の事実を覚えていても、当時の怖さや悲しみは薄れます。被害者や遺族の証言、災害時の映像は感情に直接働きかけ、災害に備える行動を促します」
―市町村が避難指示を出してもべ被害が起きないことが繰り返されると『おおかみ少年』のように信頼を失いませんか。強い警告を出して住民がパ二ックにならないかと心配する首長も少なくありません。
「避難指示を出しても避難する人が少ないことの方が問題で、『おおかみ少年効果』を過剰に心配する必要はありません。世論調査でも、災害情報の『空振り』を批判する意見は少数です。災害時のパニックも極めてレアケースです。警戒範囲を狭める技術的な努力は必要ですが、首長は可能な範囲にできるだけ早く情報を出すべきで、住民もそれを望んでいます」
(一部抜粋)
同志社大調査 能登地震 安全確保25%, 新聞・雑誌, 本人以外, 毎日新聞大阪本社, 毎日新聞, 2023年05月27日, <緊急地震速報の調査を紹介>
石川県能登地方で最大震度6強を観測した5日の地震で、携帯電話で緊急地震速報に気付いた住民のうち、頭を守るなど安全を確保する行動を取れた人は約25%にとどまったことが、同志社大心理学部の中谷内一也教授(社会心理学)による調査で判明した。揺れが来るのをただ待ったり、携帯電話を見続けたりした人が6割に上っており、中谷内教授は「速報を受信しても画面は見ず、素早く身を守る必要がある」としている。
10~11日に石川、富山、新潟の3県の住民を対象にインターネットでアンケートを行い、計1620人が回答。約65%に当たる1061人は、揺れる前に携帯電話で速報に気付いていた。
このうち1000人に「速報が鳴ってからまず何をしたか」「その次に何をしたか」を尋ねたところ、まず取った行動は「携帯電話の画面を見る」が37%で最も多かった。
「次に何をしたか」では「揺れを身構えて待つ」が32.4%で最多。「速報を聞き続ける」「ただ静観している」なども含め、身を守る行動を取れなかった人が計59.5%に上った。一万、「危険がないか周囲をチェックする」「頭を守る」「しゃがむなどして身体の安全を確保する」と回答したのは計25.2%にとどまった。
中谷内教授は、油報の直後に携帯電話を見る人の多さについて「普段と違う現象が起こった際にそちらへ注意が向くのは、人間の自然な反応」と分析。「速報を受けると体が固まってしまう人が多い。動けなかった時のために、室内の高所に重い物や危険な物を置かず、家具も固定するなど、日常的に安全な環境を整えておくことが重要だ」と指摘した。
(抜粋)
緊急地震速報 人は動けず 能登震度6強 「携帯見る」「身構える」上位, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2023年05月26日, 10面, <緊急地震速報の調査を紹介>
スマホで緊急地震速報が鳴っても、画面を見たり、固まったりして身を守る行動を取れない人が多い―。そんな調査結果を同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)がまとめた。とっさに行動を取るのは難しいことから、家具の固定など普段からの備えの大切さを示す結果だという。
■ 自覚し事前対策を
5日に震度6強を観測した石川県能登地方の地震で、揺れの大きかった石川県、富山県、新潟県上中越地域の1620人を対象に、緊急地震速報の受信後の行動をオンラインで尋ねた。8割の人がスマホなどの携帯電話で気づき、うち1061人は揺れ始める前に受信していた。
しかし、まず何をしたかを尋ねると、「携帯電話の画面を見る」が37.0%。「揺れを身構えて待つ」22.4%、 「ただ静観している」10.6%と続いた。
次に何をしたかでも、「揺れを身構えて待つ」が32.4%を占め、「ただ静観している」も13.8%あった。「危険がないか周囲をチェツクする」は17.8%。机の下に潜るなど「身体の安全を確保する」は5.9%、「頭を守る」は1.5%と、行動を取った人は少数派だった。
揺れが来るまで数秒もあれば、机の下に潜ったり、倒れそうなものから離れたりできる。中谷内さんは「普通と違う音が鳴ると画面を確認したくなってしまう。それで時間がたってしまうのはもったいない」と指摘。一方で「人は動けないし、揺れ始めたらもっと動けなくなる。そういう自覚を持って、家具を固定し、物が落ちてこないように対策を取っておくことが大事」と強調する。
(抜粋)
同志社大・中谷内教授調査 地震速報直後7割「動けず」 「すぐ安全確保、防御」1割未満, 新聞・雑誌, 本人以外, 北国新聞社, 北国新聞, 2023年05月19日, 1面, <緊急地震速報の調査を紹介>
5日に珠洲市で震度6強を観測した地震で、携帯電話で緊急地震速報が流れても、約7割の人が周囲の確認など安全を確保する行動を即座に取れていなかったことが、同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)の調査で分かった。同教授によると、突然の出来事に直面した際、とっさに体が動かないのは人の自然な反応だとし、「家具を固定するなど事前対策を講じることが重要になる」と呼び掛けている。
■ 動けないのが自然「事前対策が必要」
調査は、5日に緊急地震速報を受信した石川と富山、新潟県上越中越地域で、速報で揺れに気付いた千人を対象にオンラインで実施した。
速報を聞いた次の瞬間の行動は 「携帯の画面を見る」が37.0%、「揺れを身構えて待つ」が22.4%、 「静観している」が10.6%、「速報を聞き続ける」が8.8%となり、合計で約7割が避難したり、体を守ったりする動きをしていなかった。
一方、「身体の安全を確保する」は5.5%、「頭を守る」は0.7%にとどまった。その次に取った行動でも、安全を確保せずに「速報を聞き続ける」などが59%を占め、「頭を守る」は1.5%たった。
中谷内教授によると、緊急時に動きのある物体に注意を引きつけられてしまうのは「定位反応」と呼ばれる。今年4月、岸田文雄首相の演説会場に爆発物が投げ込まれた際も体を伏せずに音の方向に目を向けている人が多くおり、こうした行動が該当するという。
中谷内教授は定位反応は人間の自然な動きであるとした上で「急な出来事があった際、人は意外と動けないということを理解しておくことが大事だ」と指摘。家具の固定や避難経路に物を置かないなど、普段からできる対策が大切とした。
グラフ掲載:緊急地震速報に気づいた直後の行動
(一部抜粋)
「緊急地震速報で人は動かない」能登の地震から見えた教訓とは, インターネットメディア, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞DIGITAL, 2023年05月14日, ネットニュース, <緊急地震速報の調査を紹介>
スマホで緊急地震速報が鳴ったとき、つい画面に見入ってしまった、何もできずに固まってしまった――。そんなありがちな経験を裏付けるような調査結果がまとまった。
調査したのは、同志社大学の中谷内一也教授(社会心理学)。5日に震度6強を観測した石川県能登地方を震源とする地震で、揺れの大きかった石川県、富山県、新潟県上中越地域の1620人を対象に、緊急地震速報を受信した後の行動をオンラインで尋ねた。
すると、8割にあたる1293人がスマホなどの携帯電話で緊急地震速報に気づき、うち1061人は揺れ始める前に受信していた。
しかし、「まず何をしたか」を尋ねると、「携帯電話の画面を見る」が37.0%。「揺れを身構えて待つ」22.4%、「ただ静観している」10.6%と続いた。
さらに「次に何をしたか」でも、「揺れを身構えて待つ」が32.4%を占め、「ただ静観している」も13.8%あった。
「危険がないか周囲をチェックする」は17.8%。机の下に潜るなど「身体の安全を確保する」は5.9%、「頭を守る」は1.5%にとどまった。1ケタ台だったこの二つは「まず何をしたか」でも少なく、具体的な行動を取った人は少数派だった。
つまり、せっかく事前に緊急地震速報を受け取ったにもかかわらず、動かなかった人のほうが多かったことになる。(中略)
中谷内さんは「普通と違う音が鳴ると画面を確認したくなってしまう。すぐに行動をとらなければならないのに、それで時間がたってしまうのはもったいない」と話す。(中略)
「携帯が鳴っても人は動けないし、揺れ始めたらもっと動けなくなる。そういう自覚を持って、普段から自宅や職場で、家具を固定し、物が落ちてこないように対策を取っておくことが大事」と中谷内さんは強調する。
(一部抜粋)
The 論点 マスク外す? 続ける?, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2023年04月14日, 6面, <記事の中でコメント>
周囲の目 気になる
マスクを着け続ける人には「周囲の目」が気になる人が多いようです。
日本で脱マスクが進まないのは、集団内で多数派に合わせて行動するよう強制する「同調圧力」の強さが指摘されています。読売新聞社が1~2月に行った全国世論調査では、周囲の人がマスクを着けていれば自分も着けなければと「感じる」人は、「どちらかといえば」を含めて83%に上りました。
中谷内一也・同志社大教授(社会心理学)は「新型コロナは、他人にうつしたり、自分がうつされたりするため、他人の行動が余計に気になってしまう」と説明します。着用の明確な目的がなくなったことで、「他人の行動」を判断のよりどころにするケースが目立ちます。中谷内教授は「逆に言えば、外す人が一定割合を超えれば、脱マスクが一気に進むのでは」とみています。
(一部抜粋)
耕論 マスク続ける?外す? 気になる他人 だから同調, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞東京本社, 朝日新聞, 2023年03月21日, 13面, <コラム> インタビュー
新型コロナ対策でのマスク着用が個人の判断に委ねられた。3年に及ぶマスク生活で私たちはどう変わったのか。マスクを外すか、外さないか。今後、どうすればいいのだろうか。
■ 気になる他人 だから同調
中谷内一也さん 社会心理学者
マスクをするかどうかが個人の判断に委ねられたものの、基準ははっきりしていません。「家を出たらずっとつけなさい」と言われるよりも、どうするかは難しい。私たちは感染防止だけのために生活しているわけじゃありませんから。「お酒を飲んだら車を運転しない」のように基準がはっきりしていればいいですが、そうでない場合、判断の手がかりにしやすいのは他人がどうしているかです。
大多数の人は他人を見つつ、置かれた環境の要請に従って行動を変えていきます。当初はつけ続ける人が多く、徐々に外す人が増えていくでしょう。ある一定の割合を超えたところで、一気に外す人が増えるとみています。
また、感染防止のためのマスクは、他のリスク対策と違う点もあります。マスクでなく傘であれば、個人の自由に単純に委ねられます。傘を持つ人は雨が降った場合にぬれずに済む。持たない人はぬれてしまいますが、重い傘を持ち歩く手間はありません。コストやベネフィットが個人で完結します。
ところがマスクでは、人から人への感染という要素が大きく関わってきます。つける人がうつされるのを防ぐ効果とともに、無症状で感染に気づいていない場合もマスクをつけていれば他人にうつすリスクを下げられます。この「マスクは他人のため」は、裏返せば「周りがマスクをしていないと自分に被害が及びうる」ということでもある。だからマスクに関して他人がすごく気になるのです。新型コロナの世界的流行で、同調するのは日本人だけではないことが示されたとも言えます。米国では大統領選挙の際に、共和党のトランプ支持者はマスクを外す人が多く、民主党支持者はマスクをしていました。あれも一種の同調でしょう。もともと同調の研究は、第2次大戦の欧州の全体主義、ナチスドイツに対する反省として生まれた側面があります。一概に「欧米人は独立していて、日本人は同調する」などとは言えないのです。
感染リスクをゼロにするのは不可能です。それを前提に社会としてこの3年の経験から、次の備えをすることが必要です。例えばスーパーのレジの列で密にならないように、間隔をあける印をつけるだけで効果がありました。人の判断や行動特性を踏まえて、望ましい行動を促すナッジという手法が、感染症対策ではとても有効でした。人々の同調傾向をうまく利用することができたからです。一方で、初期の段階では感染者や関係者に対する差別や偏見が生じたことも事実です。再び感染症が流行すれば、そうした望ましくないことも起こりうることも含め、次のリスクに備えることが大切だと思います。
(抜粋)
コロナ5類へ 若者「しばらく様子見かな」 同調傾向が働き外す人増えそう, 新聞・雑誌, 本人以外, 中日新聞社, 中日新聞, 2023年01月21日, 31面, <記事の中でコメント>
外出時の必需品となったマスク。着用ルールが緩和された時、定着した習慣は変わるのだろうか。社会心理学が専門の中谷内一也・同志社大学教授は「長期的にはマスクを外す人が増える」と予想する。
中谷内教授らが2020年3月に国内の千人にマスクをつける頻度や理由を尋ねたところ、本来の目的である感染防止よりも、他の着用者に同調してマスクを着ける傾向が明らかになったという。屋外での着用ルールが緩和されてもマスクを着ける人が多いのは、「着用が習慣化し、状況に合わせて着け外しを判断するのは面倒くさいと感じるのでは」と指摘する。
屋内での着用ルールが緩和された場合について、中谷内教授は「少数でも着けていない人が現れ、それを見てマスクを外す人が増えていけば、外す方に同調の傾向が働き、ある時点から急に増えるのでは」とみる。
(一部抜粋)
進まぬ「脱マスク」 基準緩和も根強い習慣, 新聞・雑誌, 本人以外, 共同通信社, 茨木新聞25面・岩手日報20面・宮崎日日新聞20面・佐賀新聞19面・山陰中央新聞24面・山陽新聞29面・福島民友19面, 2022年06月05日, <記事の中でコメント>
新型コロナウィルスの感染爆発が落ち着き、厚生労働省が屋外など一定の状況ではマスク着用を不要とする考え方を5月20日に示した。しかし、半月たっても、公園のベンチで憩い、オフィス街を行き交う人たちの間で脱マスクは進んでいない。暑くなると熱中症のリスクも高まる。専門家は「感染状況を見つつ着脱を判断すべきだ」と指摘する。
脱マスクは、いつ日常となるのか。同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)は「駅までは外して通勤電車では着けるといった状況では、着けっ放しでいようと考えるだろう」とした上で「人は共通項の多い他者の影響を受ける。犬の散歩中の人は他の飼い主の行動を気にする。ある程度多くの人がマスクを着けなくなれば。割と早く外すようになる」と推測した。
(一紙より一部抜粋)
“効果の低い対策が足を引っ張る”と人は誤解しがち…コロナ対策めぐり大学教授ら発表, インターネットメディア, 本人以外, 毎日放送, MBS NEWS, 2022年05月22日, ネットニュース, <コラム> インタビュー
新型コロナウイルスの感染防止策をめぐり、複数の有効な対策を組み合わせて実施すれば、本来は効果が高まるのに、人は「効果の低い対策が効果の高い対策の足を引っ張る」と誤解しがちだという研究結果を同志社大学心理学部の教授らが発表しました。
同志社大学心理学部の中谷内一也教授と京都橘大学健康科学部の横井良典助教が今年4月25日にアメリカの学術雑誌に掲載した論文によりますと、日本国内の成人100人を対象に、以下の8つの新型コロナ対策について、感染防止にどれぐらい効果があると思うかを0~100%の範囲で回答してもらいました。また、8つの対策すべてを実施した場合に、感染防止にどれぐらい効果があると思うかも0~100%の範囲で回答してもらいました。
【8つの対策】
▼外出時にマスク着用
▼こまめに手洗い
▼こまめに手をアルコール消毒
▼こまめにうがい
▼密集場所を回避
▼会話時に2m程度の距離
▼こまめに換気
▼自宅や職場のドアノブをアルコール消毒
本来、複数の対策を行うほうが、より感染防止につながります。しかし、それぞれの回答者が最も効果があると評価した対策の得点(=第1対策得点)の平均値と、8つすべてを実施した際の評価の得点(=全体実施得点)の平均値を比較すると、全体実施得点が第1対策得点を下回ったということです。また、全体実施得点は、2番目に効果があると評価した対策の得点(=第2対策得点)の平均値も下回ったということです。
新型コロナについて人は「複数の対策を組み合わせると、相対的に効果の低い対策が効果の高い対策の足を引っ張る」と誤解しがちだという結果が出たことになります。
同志社大学心理学部の中谷内一也教授は「私たちは“これさえしておけば大丈夫”という『単一行動バイアス』に陥りがちだが、リスクへの対応は多くの場合で“1つ行えば万事OK”とはならないのが実情だ。新型コロナに関しても可能な範囲で複数の対策を組み合わせ、感染リスクを抑えていくことが大切だ」としています。
(抜粋)
マスク緩和 歓迎と不安 「待望では」「その場の雰囲気で」, 新聞・雑誌, 本人以外, 産経新聞社, 産経新聞, 2022年05月20日, 27面, <記事の中でコメント>
新型コロナウィルス対策の専門家有志が19日、マスク着用に関する見解を初めて明示した。熱中症や子供への影響を危惧する現場の医師からの問題提起をきっかけに、国民的な関心事に発展。街中ではランナーらが緩和の動きを歓迎する一方、感染リスクや人目を気にする声も聞かれた。
同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)は「すでに国民の間で習慣化しており、マスクを外すときは人の目が気になるはずだ。外していいのはどんな場面か。勤務先など自分の関わる組織ごとに話し合っていく必要があるのではないか」と強調した。
(一部抜粋)
議員のマスク拒否で法廷闘争 ー福地・白糠町議が提訴ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 毎日新聞社, 毎日新聞, 2022年03月11日, 道内ネットニュース, <記事の中でコメント>
口元切り取り「挑発行為」町困惑
コロナ禍でマスク着用を拒否する地方議員の行動が物議を醸す中、白糠町では法廷闘争に発展している。原告は「法的根拠はなく、着用を強要するのは違法」と主張。一方の町側は、自ら口元を切り取ったマスク姿で議場に現れたことに「挑発行為」と戸惑いを隠さない。ただ、着用拒否を巡る見解はさまざまで、町議の行動を問題視する識者がいる一方で、「必ずしもマスクが善ではない」とする識者もいる。
同志社大の中谷内一也教授(リスク心理学)は、福地町議ら地方議員のマスク着用拒否に「何のメリットがあるのか分からない」と首をかしげる。一方で、「感染対策に反対する主張には一理あるものもある。どんな対策にもメリットとデメリットがあり、トレードオフ(何かを得るために何かを失う)の関係がある。必ずしもマスクをすることが善、ワクチン接種が正解とは思わない」と話す。また、「前例のない事象で、先のことが正確に分かる人はいない。専門家も過去のデータを基に将来の評価をしており、不確実性を含んでいる。自己判断する上で、この人が言っているから絶対に『正しい』『間違っている』という考え方には注意が必要」と指摘する。
(一部要約)
耕論 新型コロナ ワクチン急加速の中で, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2021年06月19日, 13面, <コラム> インタビュー
■ 行き渡った未来を示して
ワクチン接種では、一部で予約が殺到して混乱が起きた一方、枠が埋まらずがら空きの会場もでました。その背景には、政府や自治体が国民の心理を均一に見なしていることがあるように思います。 「すぐに接種したい」という人は、高齢者や重い持病のある人を中心にかなり存在します。同時に「絶対に接種したくない」という人も一定数いるはずです。でも、最も多いのは「受けたいが、一刻も早くというほどではない」という中間層でしょう。
「すぐに接種したい」人たちが予約に殺到するのは当然で、混乱が起きたのは、需要に対し供給が不十分だったからにすぎません。集合現象としてはパニックに見えても、個々人からすれば「つながらないから何度か電話した」程度の行動だったと思います。
一方で、最も多い中間層の特徴は、移ろいやすさです。ちょっとしたことで「受ける」「受けない」が変わる。接種した人から「腕が痛くなった」「熱が出た」というマイナスの情報は聞いても、「打ったら感染しなかった」というプラスの情報を個人から聞くことはないはずです。いつ「受けない」側に振れてもおかしくありません。
中間層の接種者を増やしていくためには、政府や自治体は、何のためにワクチンを接種するのかという「画」を描いてみせるべきです。ワクチンが行き渡れば、また飲み会や旅行ができる。そうした具体的な未来を見せず、「1日100万回を目指す」と言うだけでは、あまり接種の後押しにならないでしょう。
今後、打たない人への差別も懸念されるため、対策は必要です。ただ、排除の心理は概して少数派に対して生じる。ワクチンの場合、打たない人が少数派になるのは大半の人が接種した後で、そのころ多数派は感染リスクが低くなっているので、「打たない人のせいで感染が広がる」とはなりにくいとは思います。
国民の間でワクチンに対する意識の違いが混在するなか、政府が接種率を上げようとするなら何をすべきなのか。必要なのは、国民の疑問に正面から向き合う姿勢であり、信頼の向上です。信頼を規定する要因には、有能さ、誠実さ、価値の共有などがある。有能でも不誠実であれば任せる気にはならず、どれが欠けてもだめです。
「なぜ海外に比べて接種が遅れたのか」と疑問に思う人は多いはずですが、現政権は正面から答えていません。医療や薬事行政の根本的な問題には触れずに「ワクチンは確保した」と言っても、はぐらかしているようにしか見えない。接種者を増やすには、必要な情報をきちんと伝えて価値を共有し、国民の意見も聞くことで、信頼を回復する必要があります。
(一部抜粋)
ゼロリスク幻想との決別, 新聞・雑誌, 本人以外, 中央公論新社, 読売クオータリー NO.57 2021春号, 2021年04月30日, pp.96-107, <著書及びHPの引用・紹介>
中谷内一也
著書『リスクのモノサシ』
訳書『ダチョウのパラドックス』
HP 『新型コロナウィルス問題について』
が引用されている。
新型コロナ禍における感染症患者や医療従事者、さらに家族への誹謗中傷について, 会誌・広報誌, 本人, 大津市政策調整部 人権・男女共同参画課, 人権啓発紙 輝きびと No.111, 2020年12月01日, pp.2-4, <寄稿>
新型コロナ禍における感染症患者や医療従事者、さらに家族への誹謗中傷について
■ ひとくくりにする心
■ ひどい目にあった人を非難する心
■ どうすれば良いのか
コロナ禍の同調圧力 ー行動制限どこまで必要?ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 中日新聞社, 中日新聞, 2020年10月04日, 17面, <記事の中でコメント>
収束見通せず 社会全体に不安蓄積
新型コロナウィルスの影響で、私的な取り締まり活動「自粛警察」が各地で行われました。市民同士による監視は「戦時中の隣組のよう」と懸念する声も。周りと同じ行動を求める「同調圧力」はなぜ生まれるのでしょうか。一方で社会生活を円滑に送るには、一定の協調性は必要です。コロナ禍の同調圧力について考えてみましょう。
■ 感染予防効果も
一方、同志社大の中谷内一也教授(心理学)は「同調はネガティブな印象があるが、必ずしも悪い面ばかりではない。特に感染症対策は皆で一斉に実施することで効果が上がる」と指摘。「同調の有益な面とそうでない面を踏まえて、感染症対策に反映させるべきだ」と提案している。
(一部抜粋)
非常時の人間の相, 新聞・雑誌, 本人以外, 同朋新聞社, 同朋新聞, 2020年09月01日, 2面・3面, <特集>インタビュー
■ 白か黒かではなく
物事は白か黒かではなく灰色であることが多い。これはまさしく心理学問題。
経済優先の政策を取ると感染拡大につながり、感染拡大を抑止すると経済的ダメージが。どちらを優先したとしても必ずリスクがあり、はっきり白黒つけられない。どのあたりで線引きするかを考えなくてはならない。
■ 噂という人間心理(コロナ禍のトイレットペーパー買占め)
不確実性や不安といった条件が重なると人間は知りたいという欲求が高まる。その欲求を満たしてくれるものが噂。誰にでも、難しい状況から脱出したい、そのための方法を知りたいという欲求があり、わからないことが多いと噂は広がってしまう。トイレットペーパー不足は心理学でいう「ソーシャルジレンマ」とも関係する。
■ 不安がもたらすもの(医療従事者に対する差別や排除)(感染者第一号への恐れ)
コロナ禍でさまざまな不安によるイライラやフラストレーションが高まると、その原因を取り除きたいと思うようになる。その矛先が医療関係者に向いてしまっている。簡単に白黒分けて攻撃することで少しでも楽になりたいという心理が働いているのだと思います。
「一番」というのは非常に人間の記憶に残りやすい。一番に恐れているのは、ウィルスに感染することよりも社会や人間関係なのでは。
■ 不安を生きる(今後、コロナ禍とどう向き合うか)
私たちは早く収束しないかと願って一喜一憂してしまうが、しばらくは元の生活に戻れないという現状を受け入れ、覚悟を決めることが大事。
(一部要約)
感染公表 在り方は ー県内企業など発表 県説明補う形ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 信濃毎日新聞社, 信濃毎日新聞, 2020年04月10日, 27面, <記事の中でコメント>
専門家「行政発信強化を」
県内で新型コロナウィルスの感染者が相次いで確認される中、県内の企業などが従業員らの感染事実を自主的に公開する動きが相次いでいる、感染症法16条が個人情報保護に留意しつつ、発生状況や動向、原因に関する情報、予防や治療に必要な情報の積極公表を求めるのは国や県。現状では、社会的責任を果たそうとする民間などの取り組みが、県の発表内容を補う形になっている。専門家は、行政がもう少し踏み込んで公表すべきではないか―と指摘している。
同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)は「民間企業や大学も公共性があり、感染拡大防止につながる情報は積極的に出すべきだ」と評価する。一方、こうした県内での自主公表に前後する形で、感染者のプライバシーに関わる情報がインターネット上にさらされる事態も起きた。中谷内教授は「不安が高まり先が見通せなくなると、うわさが流れやすくなったり犯人探しが行われたりする」と指摘。自主公表の動きを後退させないためにも、情報を受け取る側の冷静な対応を求めている。
(一部抜粋)
社員の不安を解消するにはどう伝えるか, 新聞・雑誌, 本人以外, 日経BP社, 日経 Top Leader, 2020年04月01日, p.33, <記事の中でコメント>
新型コロナウィルスのような未知のリスクに直面したら、経営者はどんな行動をすべきか。リスク心理に詳しい同志社大学心理学部の中谷内一也教授は2つのポイントを挙げる。
まず一つ目は、社内のリスク管理責任者として、自社のリスクを最小にすること。これは普段の経営の延長で考えればよい。
自社に望ましくないことが起こるリスクの大きさは、出来事の影響の大きさと発生確率の高さで決まる。このリスクをどう小さくするかが経営者の仕事になる。
問題は、コロナの影響の大きさ、感染確率などの評価がまだ定まっておらず、判断基準が見えにくいことだ。その中で社長が対策を進めるには、「新型インフルエンザなど過去の事例を踏まえてまず方針を決め、動きながら調整すること。リーダーは、自分なりの見立てをはっきり示すことが大事になる。ウィルスの正体がよく分からないからとはっきり指示を出さずにいると、社内で社員からの信頼度は下がってしまう」(中谷内教授)。
■未知のものへの不安
もう一つの役割は、組織のトップとして説明責任を果たし、社員を落ち着かせることだ。
多くの人は、「リスクの大きさを、恐ろしさ、未知性という因子で直感的に捉えがちだ」(同)。恐ろしさとは、死亡者が増えている、世界規模で惨事をもたらしているといったこと。未知性とは、感染しても症状がすぐに出ず外部から分かりにくい、科学的に解明されていないといったこと。いずれもコロナウィルスに当てはまる。
未知の恐ろしいものなので、大惨事をもたらしかねないと社員は不安になる。「経営判断のためにリスクを確率などの数字で捉えようとする経営者とはやや捉え方が違うので、『致死率はSARSの5分の1』などと説明をしてもなかなか不安は晴れない」(同)。
こうした社員の不安を軽減するには、新型インフルエンザなど過去のリスクと比較しながら話し、未知のものを少しでも既知のものに近づけて説明すると不安を抑えやすくなるという。加えて、「うちにはお客様の信頼がある」などと、社員のこれまでの頑張りを評価して話すと社員の納得を得やすい。
(抜粋)
県「非公表」 勤務先が「公表」例も ー新型コロナ感染者個人情報ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2020年03月21日, 23面, <記事の中でコメント>
さいたま市 市民不安に対応
新型コロナウィルスの感染者が明らかになった際に個人情報をどこまで公表するか、自治体や企業の間で手探り状態が続いている。公表すべき内容は法的に定められておらず、感染者のプライバシー保護と社会不安に応える情報開示はどうあるべきか、揺れている。
■ プライバシーを侵害せず重要性を伝える配慮必要
同志社大学の中谷内一也教授(リスク心理)は、感染リスクの低下につながらない情報を提供する必要はないとの立場だが、「社会の不安や関心を無視し過ぎれば自治体への信頼が損なわれる」と指摘。
「感染者のプライバシーを侵害しない範囲で、基本は、全ての情報を公表する立場を取ったほうがいい。同時に公表した情報がどれくらい重要なのか、重要でないのかも合わせて知らせる気配りが大切だ」としている。
(一部抜粋)
医療ルネサンス Q&A 新型コロナウィルス〔6〕 ーデマ信じてしまう恐れー, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2020年03月09日, 11面, <記事の中でコメント>
「お湯を飲むと新型コロナウィルスが死ぬ」「26~27度で死滅する」というデマがメールやSNSで広がった。このようなデマに踊らされないようにするには、どうすればよいか。
厚労省は最新情報をウェブサイトに掲載。新聞やテレビでも連日、最新の情報を報道。「せきエチケット」「手洗いや手指のアルコール消毒」など、根拠のある予防策も取り上げられている。
しかし、もっと大事な情報が抜け落ちているという意見もある。
同志社大教授(リスク心理学)の中谷内一也さんは「外出から戻った後の手洗いは励行するなど、一人一人が予防のための行動を積み重ねることが、感染のリスクを下げることにつながる。そんな基本姿勢を広めることこそが感染拡大を防止すぐ一歩だ」と指摘する。
(一部要約)
感染者 足取りどこまで ー新型肺炎公表 自治体対応割れるー, 新聞・雑誌, 本人以外, 日本経済新聞社, 日本経済新聞, 2020年01月31日, 41面, <記事の中でコメント>
大阪府「住民の不安解消」
奈良県「個人特定を懸念」
国内で人から人への新型コロナウィルス感染が確認された関西在住の2人について、立ち寄り先の公表を巡る自治体の対応が分かれている。奈良県は「個人の特定につながる」として詳細を明かさないが、大阪府は独自に作った基準の基づき、感染者が訪問したエリアを公表する。専門家は「メリットとデメリットがあり、感染の危険性を見極めた上で冷静な判断が必要だ」と指摘する。
人間のリスク心理を研究する同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)は「情報への関心が高いときに公式の情報がないと根拠のないうわさが出回り、風評被害やリスクを管理する当局への不信感につながる危険性がある」と指摘。一方、個人が特定され当人や関係者にいわれのない攻撃がされる可能性もあるとして「(今回の新型肺炎の場合は)感染力など状況に応じて情報公開のメリットをデメリットを比べ、最後は政治的な判断になるだろう」と話している。
(一部抜粋)
バス内で長時間接触か ー武漢からの団体のせた運転手感染ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2020年01月29日, 31面, <記事の中でコメント>
中国・武漢市で発生した新型コロナウィルスによる肺炎に、武漢市に渡航歴のない奈良県に住むバス運転手の男性(60代)が日本国内で感染していた。厚生労働省や県は28日夜に会見。厚労省と県は武漢市からのツアー客を乗せたバスを長時間運転している間に感染した可能性が高いとの見方を示した。
■ 知ることでリスク下げる行動を
中谷内一也・同志社大学教授(リスク心理学)の話
今回の新型肺炎は、大衆の不安をかき立てやすい。専門家は「致死率」に注目するが、一般の人は、この肺炎で死んでしまう人がいるという事実と死者数が日々増えていることに目が行きがちだ。これが恐ろしさにつながる。さらに、未知性だ。国内で二次感染が分かり、武漢から在留邦人が帰国する。新たな感染者がどこで出るか分からず、食い止める手立てもはっきりしないとなると、不安があおられやすい。
普通のインフルエンザでも死者が出るのに、そこまで怖がらないのは経験的に知っているからだ。新型肺炎も今後、毒性の強さがはっきりするだろう。まずは感染の仕組みを知って、リスクを下げる行動を心がけてほしい。
(一部抜粋)
歩く・聞く・考える 「豪雨への備え」 ー賢い「ダチョウ」になろうー, 新聞・雑誌, 本人以外, 中国新聞社, 中国新聞, 2019年06月20日, 6面, <記事の中で訳書の紹介>
Robert Meyer, Howard Kunreuther (著)
中谷内一也 (訳)
『ダチョウのパラドックス:災害リスクの心理学』 丸善出版
防災と人間の心理をめぐり、米国の研究者の間に「ダチョウのパラドックス(逆説)」という言い方があるらしい。
空を飛べないダチョウは危険が迫ると、頭を砂に突っ込んでやり過ごそうとする。米国ではこれが一般的なイメージとか。ところが実際は、時速60~70㌔で走ることができる。何とライオンよりも早く、サラブレッド並み。危険を察知したなら、いち早く逃げ切れそう。つまり定説とは裏腹に、ダチョウは空を飛べなくても、抜群の災害対策を備えているのだ。
(中略)
同書を訳した訳した中谷内一也同志社大教授も後書きに「災害対策は総合力の勝負」と記す。個人の備え、コミュニティーの備え、安全基準や規制の施行、災害に強い街づくり、公的・私的保障の充実などの組み合わせである。
(一部抜粋)
相手と気持ちを共有し、前のめりになること, 新聞・雑誌, 本人以外, 教育開発研究所, 月刊 教職研修10, 2016年10月01日, p.112, <著書の紹介>
中谷内一也(著)
『信頼学の教室』 講談社現代新書
評者:石川慶子(広報コンサルタント)による解説。教育現場の観点から保護者とどう信頼を構築するか、その一助として紹介。
自身を育む鍵はこれだ! 三つのトピックで「信頼」を究める。, 新聞・雑誌, 本人, 佼成出版社, DANA 5月最終号, 2016年05月15日, pp.10-12, <特集>
個人の心がけや努力だけで自信を手にすることは難しい。
自身とは本来、仲間たちと励まし合い、高めあうなかから生まれるものではないだろうか。
つまりそこには、良好な人間関係、換言すれば「信頼関係の構築」が不可欠なのだ。
そのために押さえておきたい”信頼の基礎知識”を、中谷内一也氏に解説していただいた。
■ 信頼を成り立たせる三つの要素
・まずは「能力」と「動機付け」
・エディー・ジャパンに見る「価値の共有」
・最も重視すべき要素とは?
■ 知っておきたい「信頼の非対称性」
・人は信頼しやすい? 信頼しにくい?
・「非対称性」が生じる三つの理由
■ リーダーがやるべき、信頼を高める方法
・「制裁システム」を自発的に導入しよう!
・仕事に賭ける”志”をチーム内で確認し合おう!
・「なぜ?」に応える明確なビジョンを示そう!
目利きが選ぶ3冊, 新聞・雑誌, 本人以外, 日本経済新聞社, 日本経済新聞, 2016年02月18日, 16面, <記事の中で著書の紹介>
中谷内一也(著)
『信頼学の教室』 講談社現代新書
サイエンス作家 竹内薫による著書の紹介。
■ リスク管理のアドバイス
メーカー若手社員のシンジ君は「信頼向上」をいう課題を抱え、学生時代から親しくしている心理学のナカヤチ先生の研究室を訪ねる。7日間の集中講義の開始だ。
本書では、誰もが知っている『ないた あかおに』やDJポリスなどを題材に、信頼の背後にある社会心理学的は理由が紹介される。
信頼を失った企業や組織にとって大切なのは、お客さんと価値を共有することか、能力か、それとも動機付け(「人柄」)など)か。
アンケートや実験の分析を通じて、社会心理学はシンジ君が直面する広報部の仕事に的確なアドバイスをしてくれる。リスク管理に翻弄される現代人の必読書だ。
(一部抜粋)
特集 疑似科学と科学のあいだ, 新聞・雑誌, 本人以外, 中央公論新社, 中央公論 12月号, 2015年11月10日, pp.102-109, <座談会>
鼎談
魅力的な”ストーリー”にご用心
「疑似科学」が人々を惹きつける理由
中谷内一也(同志社大学心理学部教授)
武田徹(ジャーナリスト・評論家)
竹内薫(サイエンス作家)
「がんが治る」「長生きできる」「やせられる」・・・・・・、こんな謳い文句とともに大量のサプリメントや食品、器具、治療法の情報が、もっともらしい説明や「専門家の意見」とともに溢れている。健康、安心、便利を求める気持ちは誰にでもある。そんな気持ちにつけ込むのが、科学を装う「疑似科学」の常套手段だ。私たちの健康とお金を守るため、いま必要な科学的リテラシーとは
■ 自然信仰と科学不信の関係
■ 「疑似科学」に騙されないために
リスク評価を曲げる科学者, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞出版, AERA, 2015年03月09日, pp.24-25, <記事の中でコメント>
双方向で解決策を探るリスクコミュニケーション
原発事故後の「心配ありません」ほど信頼できない発言はない。
リスクに直面した時は、解決策を探り、納得するまで話し合う姿勢が必要だ。
■ 原発事故で高まる不安
■ 市民の直感、正しかった
■ 7万5千人中の8人
■ リスクを比較する尺度
リスクについて、多種多様な情報をどう受け止め、判断していくべきなのか。
中谷内一也・同志社大学教授(社会心理学)は言う。
「リスクを比較するものさしを使えるように、日頃から慣れておきたい。一方で科学による判断がすべての最上位にあるわけではなく、それぞれの人が持つ価値観もリスクを考えるうえで重要であることも理解しておきたい」
白か黒かの「危険」とは違い、リスクの大きさを数値、程度で理解することは、リスクという概念と不可分だ。さまざまなリスクを比較する尺度を持ち、意思決定の参考にできるようにするのが一つの柱となる。
(一部抜粋)
科学再考 ~第二部「安全と安心のはざまで」[2] 数字と経験 つなぐ道模索 「何%といわれてもピンとこない」, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2013年05月27日, 17面, <記事の中でコメント>
■ 届かない数字
「多くの科学者は『市民にきちんと説明すれば理解してもらえる』と思っている。だが、数字が正確で、説明が十分だとしても、理解されるとは限らない」。心理学者の同志社大教授、中谷内一也(51)はこう考えている。
個人のエピソードや物語といった具体的な情報は、人の行動を変える力がある。だが、統計情報や数字は心に訴えかける力が弱く、行動の変化を促しにくい。そもそも、統計的に思考する訓練を受けた科学者と、そうでない市民の間には、数字の受け止め方に大きな違いがある。
<危険だと思う津波の高さのアンケート調査結果の紹介>
■ 知っておきたい正しい指標
数字はわかりにくいだけでなく、油断のならない相手である。中谷内一也・同志社大教授と大木聖子・慶応大准教授が、東日本大震災の前後に西日本の住民に対して行ったアンケート調査は、巨大津波が人々の意識にもたらした皮肉な結果を浮かび上がらせた。
問いは「どのくらいの高さの津波を危険だと思うか」。「1㍍以下」とういう回答は、震災前の71%から震災後は46%に、「3㍍以下」は90%から73%に減り、「5㍍以上」が4%から20%に増えた。津波の恐ろしさを実感したはずなのに、人々は津波の高さに関するリスク評価を下げ、より無防備になっていた。
人間は提示された数字を、いかり(アンカー)のように指標として判断する傾向があるとされる。「アンカリング」と呼ばれる現象だ。東日本大震災の報道で巨大な津波の高さの数値を繰り返し耳にしたため、リスクととらえる数字が上がったとみられる。
大木准教授は「津波は1㍍程度で木造住宅が半壊し、3㍍超で大津波警報が発令される、といった正しい指標を知っておくことが必要だ」と結論づけている。
(一部抜粋)
リスク社会への社会科学者・行動科学者の関わり方 -『リスクの社会心理学』刊行によせて, 新聞・雑誌, 本人, 有斐閣, 書斎の窓 2012 No.620, 2012年12月01日, pp.36-39, <特集>
リスク社会への社会科学者・行動科学者の関わり方
-『リスクの社会心理学』刊行によせて
我々はリスク社会に生きている。そんな我々に対し、2011年東日本大震災は解決策を要求する多くの問題を突き付けてきた。具体的にいえば、今後も発生するであろう地震・津波など自然災害への対応や、福島第一原発事故による低線量被ばくの問題、さらに、こらからのわが国のエネルギー供給問題などである。個々の問題が具体的であるが故に、これらは工学、医学、環境科学などの専門知を技術的に応用することで解決すべき問題に見えるかもしれない。しかし、実際には、具体的問題のなかにも社会科学者が積極的にかかわるべきものが多くある。
一般的に社会科学者がリスクについて論じるという場合、社会における科学技術のありようを議論することが多い。もちろん、それはそれで興味深いのだが、その一方で、リスクを抑えるための具体的な政策にも社会科学が貢献できることはある。なぜなら、リスクを抑えるにはリスクに向き合うときの人のこころと社会の性質を理解することが不可欠だからだ。以上が筆者の考えであり、初心者向けの本書を編んだ理由でもある。
■ 津波からの避難
■ 家具東海の防止
「大津市いじめ事件」から学ぶ”信頼”のマネジメント ー何が問題をここまで大きくしてしまったのか, 新聞・雑誌, 本人以外, 教育開発研究所, 月刊 教職研修, 2012年10月01日, pp.11-15, <コラム> 巻頭インタビュー
このたび「大津市いじめ事件」がこれほどまでに社会的に関心を集め、また批判されたのは、当初のいじめ問題への不適切な対応はもちろんですが、その後の教育委員会・学校の対応があまりに世の中の「常識」からかけ離れていたためです。リスク心理学の見地からは、むしろ”信頼”されるにはほど遠い対応が見られました。
私は現在、とくに「リスク管理責任者への信頼問題」について研究をしていますので、今回はその観点から、どのような対応が”信頼”を損ねるのか、”信頼”を得るためには何が必要か、日ごろどのように備えるべきか、信頼回復への手だては何かなどについて考えてみたいと思います。
■ 信頼を失う要素
・隠そうとする・捏造する
・情報は必ず流出する
・言われてから公表しても信頼されない
・大問題が起こったら
■ 信頼を得るための要素
・専門的・技術的な能力と高い動機付け
・「価値の共有」
■ 日ごろの備えと信頼回復に向けて
・平時の積極的な発信
・日ごろの備え
・信頼を失った後の回復
■ 「いじめゼロ」をめざすべきか
リスクマネジメントと信頼, 新聞・雑誌, 本人, 慶應義塾大学出版会, 教育と医学, 2012年08月01日, pp.54-61, <特集> 子供を取り巻くリスク
リスクマネジメントと信頼
■ 教育現場でのリスクマネジメントの難しさ
■ 信頼研究が明らかにしてきたこと
■ 「二要素モデル」の限界
■ 「主要価値類似性モデル」
■ 何が信頼の強さを決めるのか
記者の目 関電は情報開示で信頼回復を ー揺れる今夏の電力供給ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 毎日新聞社, 毎日新聞, 2012年05月17日, 8面, <記事の中でコメント>
甘い見通しに募る不信感
関西電力にとって勝負の夏が迫っている。原発の再稼働の有無が勝負なのではない。関電にとって今夏は、企業として信頼回復を図る最後の機会だ。原発の全停止が続く中、電力需給が厳しいとして今夏も節電要請をする方針だが、昨夏も昨冬も節電要請の根拠とした電力需給見通しが大幅に外れたという事実を軽視してはいけない。ずれた情報提供をし続け、関電は社会の信頼を失った。信頼回復に必要なのは企業や家庭などが求めている情報を先取りして開示する姿勢だ。
リスク心理学に詳しい同志社大の中谷内一也教授は、「信頼の回復はどんな分野でも難しいが、中立性を持ち、相手と同じ目線に立った価値観の共有が必要。大事なのは何を重視するか、相手と一致していること」と指摘する。
(一部抜粋)
耕論 「そのとき」を伝える リスク伝達には信頼が前提, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2012年04月17日, 15面, <コラム> インタビュー
災害などのリスク情報の伝え方は、どの段階で出すかによって大きく違ってきます。
まず緊急地震速報や津波警報が出た段階は、危険を強調した方がいい。パニックが起きる可能性より、事態を楽観する「正常化バイアス」が働いて、避難しないことが問題だからです。
1981年に神奈川県平塚市が誤って地震警戒宣言が出たことがあります。「あわやパニック」と報じられたんですが、その後の調査では、すぐに地震が来ると信じた人は1割もおらず、避難行動をとった人も1%未満でした。今年の初め、緊急地震速報の使われ方について気象庁が調査しましたが、4割の人が行動していなかった。3・11の後でさえそうなんです。
この段階では、冷静にさせることよりも、まず動いてもらうことが重要です。そういう意味では、NHKが災害情報を断定的に伝えるようになったのは評価していいでしょう。
原発事故の放射線災害のように、危険が切迫していても目に見えない場合は、「逃げてください」と言っても逃げない可能性が高い。情報は積極的に流すべきだったと思います。
リスク判断を左右するものに「未知性因子」があります。「今は見えないが、影響が後で現れる」ことを不安に感じる。原発事故直後、枝野幸男官房長官が「ただちに健康に影響を及ぼすものではない」という言い方を多用していました。未知性因子にぴたっとはまり、かえって不安感を高めてしまった。
一方、災害への備えを訴える場合に、「20㍍の津波」といった数字を強調し過ぎると、低い津波でも十分に危険だということが忘れられてしまう。3・11の1ヶ月後に、どのくらいの高さの津波なら避難するかを調査したら、1年前に比べて、5㍍や10㍍にならないと非難しない人の比率が増えてしまった。
先日、南海トラフ地震の津波想定が最大34㍍だと大きく報じられましたが、この数字だけを強調するのはどうか。長期的なリスクを伝える場合には、予測に幅があることを明示すべきです。幅の中で高い数字ばかりを伝えると、低い津波に対する誤った楽観が生まれかねない。
発信する側が信頼されていないと、リスク情報はうまく伝わらない。信頼を得るためには、知識があるという専門性、一生懸命やっているという動機付け、価値観の共有が必要で、特にリスクを伝える場合は価値観が重要です。国民の命を一番大事に考えていることをわかってもらうのが大前提です。
そのためには、説明者を「○○委員長」といった肩書だけで選ぶのではなく、国民にとって「顔」のわかる人間にすることです。「この人が言うなら」という信頼を得れば、リスクを伝える言葉が通じるはずです。
(一部抜粋)
放射線リスクとどう向き合う 「安全か危険」二分法に陥らないで ー同志社大学の中谷内教授に聞くー 「程度を把握する必要」, 新聞・雑誌, 本人以外, 神戸新聞社, 神戸新聞, 2012年03月27日, 11面, <コラム> インタビュー
■ 医療分野のみならず食品や災害への対応でもさまざまなリスクという指標が示されている。
「がんを発症する」「死亡」「財産を失う」といった望ましくないことが起きる可能性がリスクだ。
リスクへの不安を増長させる因子として「恐ろしさ」と「未知性」がある。例えば、牛海綿状脳症(BSE)問題では、異常プリオンは長期的な被害が解明されておらず(未知性)、かつ世界規模での感染を制御できなかった(恐ろしさ)。報道では不安は拡大し、日本は牛の全頭検査に踏み切り、過剰なコストが必要になった。
■ 東京電力福島第一原発事故では、原子炉が制御困難で廃炉の見通しが立たないのが恐ろしさ因子、健康への影響がはっきりしない低線量被ばくは未知性因子となる。
多くの人は日常生活の中でリスクを理解している。例えば高齢出産というリスク。当たり前だが35歳を過ぎても出産する人は大勢いる。しかしなじみがない放射線には「安全か危険か」という二分法に陥ってしまいがちだ。
■ リスクは数値化し、さまざまな問題の危険度を比較することができる。中谷内教授は、さまざまなリスクを比較した「リスクのモノサシ(物差し)」を提唱している。
普段からそうした尺度が普及していれば、社会全体がリスクに対処しやすい。原発事故後、国立がん研究センターなどが放射線被ばくのリスクについて、飲酒などの生活習慣のそれと比べる尺度を示したが、効果は限定的だった。「安全性をアピールするためでは」とうがった見方をされてしまった側面がある。
■ 原発事故をめぐっては、国や東京電力への不信感は今なお強い。国が示した食品などの基準値の安全性を訴える専門家も、一部で「御用学者」と非難されている。
リスクを伝えるには、「能力」「誠実さ」「価値の共有」が重要。原発を制御できず、放射性物質の拡散状況などの情報公開も後手に回ったため、「国が出す情報は信じられない」とレッテルが貼られてしまった。こうなると、行政や専門家が訴えても、耳を貸さなくなる人が出てくる。
完全無欠な安心などない。だからこそリスクを減らす努力が働き、社会が発展する。放射線リスクに直面した今こそ、リスクの程度を把握することが必要だ。
(一部抜粋)
知遊自在 不条理を抱きしめて~震災と哲学②, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2012年03月12日, 4面, <記事の中でコメント>
同志社大学教授の中谷内一也さんが、こんな例を挙げる。千人中5人が、がんなど生死に関わる病気にかかってしまうと仮定する。行政は、病気の発生確率を専任のうち1人に下げる政策を取ればいい。ただ、個々人にとっては自分の命は一つだけ。「一個人として5倍安心できるかといえば、そうはいかない。千分の一でも可能性がある限り、不安は消えない」
安全と危険の間には、「わけのわからない」不確実性の領域が広がる。震災後の世界はこれを強く意識しながら生きざるを得ない。心理学には、論理や統計の思考のシステムが働いているように見えながら実は直感のシステムが先に働いていて、理屈はそれを後から裏づける役割を担うと考える「二重過程理論」がある。
「リスクに関するメッセージは、不安を理屈づけてしまう論理のシステムだけでなく、不安の源泉である感情のシステムにもっと働きかけるべきだ」。中谷内一也さんはこう主張する。
(一部抜粋)
Living on the edge, テレビ・ラジオ番組, CBC(カナダ公共放送局), “Earthquake anxiety tops stress list in Japan”, 2012年03月05日, <調査結果の紹介>
“Living on the edge”という見出し部分で2008年の全国無作為サンプルでの不安調査結果が紹介されています
生活復興へ[5] 知識蓄え放射能除染 ―町内会で専門家招き学習―, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2012年01月07日, 17面, <記事の中でコメント>
東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染に苦しみながら、元の暮らしを取り戻そうとする人も多い。住民、地域を基盤とする団体、専門家らが連携する姿がある。
同志社大教授の中谷内一也さん(リスク心理学)は「今回のような経験のないリスクが発生した場合、専門家の知識が必要だが、専門家の意見が違った場合、住民はかえって混乱する。住民と利害を共有し、信頼できる地元の団体などが仲立ちすることで判断の助けになる利点がある」と指摘する。
(一部抜粋)
神話なき明日へ[4] 3・11からの警告 ー食の「安心」埋まらぬ溝ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 神戸新聞社, 神戸新聞, 2012年01月03日, 1面, <記事の中でコメント>
「国の基準値の根拠は」「データを示すだけでなく、不安を除く対策を」。昨年12月、内閣府と兵庫県が神戸市で開いた食品の放射能リスクを考えるフォーラムで、相次ぐ質問に対し内閣府は「今あるデータで最大限、安全な数値」と繰り返した。
食品衛生法には放射性物質に関する安全基準がなく、政府が原発事故後に定めた暫定基準値は国際的には緩いと批判を浴びた。4月から、基準を厳格化するが、それを「十分だ」とみる学者もいれば、「それでもリスクはある」と主張する学者もいる。
「人は不信感を持つ相手の言葉を信じない」と、リスク心理学が専門の同志社大教授、中谷内一也(49)は指摘する。「国は想定されるリスクを事前に分かりやすく伝えるなど、国民の不安に寄り添う姿勢が不可欠だ」
(一部抜粋)
特集 低線量被ばくといかに向き合うか, 新聞・雑誌, 本人以外, 日本医事新報社, 日本医事新報, 2011年12月31日, pp.28-31, <特集> インタビュー
放射線リスクを定量的に理解して日常生活のリスクを総合的に低下すべき
■ 「直ちに影響はない」から不安になる
■ 人間は理屈よりも感情で動く
■ 研究者は国民から信頼を得にくい
■ 国は「不安」にどう対応するべきか
■ 説得意図が見えると誰も説得されない
リスクの定量的理解の具体例として↓下記の2つを載せている。
①「リスクのモノサシ」(リスクの一覧表)の一例
②内閣府「低線量被爆のリスク管理に関するワーキンググループ」報告書
SPEED1 遅い回答 ー国、福井への配慮優先?ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2011年12月13日, 39面, <記事の中でコメント>
隣県で原発事故想定 滋賀、利用求める
全国最多の原発を抱える福井県で、東京電力福島第一原発並みの事故が起きたら、放射性物質はどのように拡散するのか。隣にある滋賀県が予測図を住民に示そうと、文部科学省に「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)の利用を求めているが、半年たっても認められていないことが分かった。
■ 納税者に情報を
リスクコミュニケーションに詳しい同志社大の中谷内一也教授(社会心理学)の話
「SPEED1の精度に問題がないのであれば、提供しないのはおかしい。情報もコストをかけて作っており、納税者に還元すべきだ。
(一部抜粋)
放射能から沖縄へ逃れ 首都圏の「数百人」, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞(東京本社 朝刊), 2011年11月22日, 37面, <記事の中でコメント>
原発事故の後、首都圏から縁のない沖縄に逃れて、今も暮らす人たちがいる。
■ 避難の必要性 人ぞれぞれ
東京周辺では事故後、沖縄に限らず西日本への転出超過が続いている。
首都圏から沖縄へ避難した人の数は未調査だが、現地の情報では数百人はいるとみられる。
ネット上には「政府やマスコミが隠そうとする真実」だという、根拠が不明な情報も流れており、それを信じる人たちも多い。全国から体調不安を訴える声が寄せられ、検証なしに「放射線の影響」に結び付けて語られる面もある。
なぜ、こうした情報に頼るのか。
同志社大心理学部の中谷内一也教授(リスク心理学)は、「人が何を信じるかは、発信者の専門性や誠実さに加え、価値の共有も重要」と言う。周囲に理解されずに孤立した時、共感できるかどうかが信頼の「鍵」になる。
首都圏の放射線量のリスクについて、中谷内一也教授は「経済状況や家族状況は千差万別。人によって判断は違うだろう」という。「私たちは様々なリスクに囲まれている。仕事を辞めるリスクや家族と離れるリスクより、現在の放射線量が危険なのかを考え、避難の必要性を判断しては」と助言している。
(一部要約)
知りたい放射能[8] 情報 偏りない選択必要, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年11月12日, 23面, <記事の中でコメント>
同志社大教授の中谷内一也さんは、リスク心理学の観点から「放射線に関する様々な数値の危険度を見極める手がかりがよくわからない」と話す。今の状況を合格ラインや平均点がわからず、成績が良いか悪いか判断がつかない「70点の答案用紙」に例える。低線量の被曝の数値は、どこから安全か危険かの線引きがなく、科学者でも意見が割れている。
危険度が自分で判断できないため、他人や周りの動向に左右されやすくなる。誰の意見を取り入れるかは「価値観を共有できる人の言い分を採用する傾向がある」と中谷内さん。つまり、「怖い」と感じている人は、危険と主張する意見を、「心配ない」と思いたい人は安全と主張する意見を聞くなど、感情で判断する状況が生まれやすい。
中谷内一也さんは「判断に迷うときは、あえて自分と反対の意見を読んでみると、リスクの相場観をつかみやすいのでは」と話す。
(一部抜粋)
津波への警戒感 大震災後、低下 「1㍍で避難」 61%→38%, 新聞・雑誌, 本人以外, 産経新聞社, 産経新聞, 2011年10月05日, 11面, <記事の中で西日本住民調査を紹介>
■ 同志社大教授ら西日本住民調査
調査は同志社大の中谷内一也教授(心理学)と東京大の大木聖子助教(地震学)が実施。大震災から1カ月後の西日本(静岡から九州沿岸部17県)の住民(男女1036人)の津波への危険認知度と大震災の1年前に行った調査(男女733人)を比較した。
調査では3つの問いを設定。①どのくらいの高さの津波を危険を思うか②どの高さであれば避難するか③気象庁の「大津波警報」が出た場合、どの程度の津波が来ると思うか――について質問した。
その結果、危険だと思う津波の高さについては、大震災前に「10㌢~1㍍」と回答した人が70.8%に達していたのに対し、大震災後は45.7%まで低下。逆に「5~10㍍」と答えた人は、大震災前にわずか3.7%だったのが大震災後は20.2%まで増加した。
避難する津波の高さについても「10㌢~1㍍」と答えた人が60.9%から38.3%に減少し、「5~10㍍」が6.9%から25.4%に増えた。
大津波警報でイメージする津波の高さは「1~3㍍」が68.8%から50.9%に減り、「10㍍」が5.7%から15.2%に上昇した。実際は、大津波警報は3㍍以上の津波が予想される場合に発表される。
中谷内教授は「津波が本来もつ威力への警戒感が薄れており、避難行動への妨げになる可能性がある」と分析。その理由について、「連日の報道で20~30㍍級の大津波の印象が意識の中で強くなり、定着した感がある」とリスク感覚の"麻痺"を指摘している。
グラフ掲載: どのくらいの高さの津波で避難するか?
グラフ掲載: どのくらいの高さの津波は危険だと思うか?
(一部抜粋)
「大津波がもたらす新たな油断」, テレビ・ラジオ番組, mbs1179, 「ネットワーク1・17」, 2011年08月22日, <ラジオ>
徹底討論 放射線リスクの真実, 新聞・雑誌, 本人以外, 中央公論新社, 中央公論 9月号, 2011年08月10日, pp.138-151, <座談会>
徹底討論
放射線リスクの真実
ージャンクサイエンスに惑わされないために ー
甲斐倫明(大分県看護科学大学教授 人間科学講座環境保健学研究室)
中谷内一也(同志社大学心理学部教授)
畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第三室長)
松永和紀(司会:科学ライター)
■ どんなに低線量でもリスクあり、で考える
■ 誤解を生んだ校庭20ミリシーベルト問題
■ 国がリスクを伝えようとしない
■ リスクを避けようとして逆にハイリスクに
■ ジャンクサイエンスにどう立ち向かうか
■ 被災者のリスクを見ず安心を追求する社会
■ リスクの物差しを用いバリューを考える
放射線情報 学び備える親 ー広がる連携 自治体に要望ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年07月06日, 19面, <記事の中でコメント>
東京電力福島第一原発事故を受け、首都圏などでも、子どもへの影響を心配する親たちが、放射線に関する学習会などを行う動きが広がっている。学校や保育園で放射線を測定する自治体も増えており、保護者からは「よりきめ細かい情報を」との声が上がっている。
同志社大教授の中谷内一也さん(リスク心理学)は、「放射線について情報を集めようとする親の行動は理解できる。ただ、被曝のリスクを下げようとするあまり、特定の商品を避けて栄養が偏ったり、別のリスクを高めてしまわないよう注意が必要だ」と指摘する。
(一部抜粋)
学問図鑑18 リスク心理学への誘い, 新聞・雑誌, 本人以外, 河合塾, Guideline 7・8月号, 2011年07月05日, pp.66-68, <特集>インタビュー
一般の人々のリスクの捉え方を通して安全でかつ安心できる社会のあり方を探る
食品偽装、BSE、新型インフルエンザ、異常気象、そして今回の東日本大震災では地震と津波による甚大な自然災害に加え、原子力発電所の深刻な事故と、私たちの周りには、安全な暮らしを脅かすさまざまなリスクが存在しています。安全であるにもかかわらず過度に不安を感じたり、逆に安全を過信して備えを怠ったりしないために、人々がリスクをどう捉えているのかを社会心理学の手法により調査・分析しているのが、リスク心理学です。
■ 心の働きを個人の人格でなく社会状況などから考える社会心理学
■ 科学技術の恩恵を受ければ受けるほどかえって不安が増大するジレンマ
■ 確率でリスクを捉える専門家 感情でリスクを捉える一般人
■ 論理的に考える視点を持つことでリスク認知は変化する
■ 「専門的な能力」「誠実さ」に加えて価値観を共有できる人間が信頼される
■ 東日本大震災を転機として方向性が変わるリスク心理学
特集 安全の値段 優先順位を明確に, 新聞・雑誌, 本人以外, 日経BP社, 日経ビジネス, 2011年07月04日, p.37, <記事の中でコメント>
適正値を求めて
優先順位を明確に
東日本大震災を経て、大きな課題に浮上した「安全の値段」。
必要な対策と費用とのバランスをどう取っていくのか。
冷静な「リスクの洗い出し」や「優先順位づけ」が、企業に求められている。
■ 「分かってもらえる」は傲慢
企業がいくら対策を講じていても、それを開示していなければ、消費者やステークホルダー(利害関係者)には理解されない。「まじめに仕事をしていれば分かってもらえる、というのは企業の傲慢。自分たちのリスク管理が人々の目にどう映っているのか、という配慮が重要」と同志社大学心理学部の中谷内一也教授は、積極的な情報開示の必要性を説く。
(一部抜粋)
「Japan7days」, テレビ・ラジオ番組, NHK BS, 「Japan7days」, 2011年06月26日, <テレビ出演>
東日本大震災 ー放射能 不安の中でー リスク 高く見積もる傾向, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年06月09日, 35面, <記事の中でコメント>
危険はできるだけ避けたいと考えるのは当然のことだ。ただし、今回のような事故による放射線被曝は、①目に見えない②影響が後から出ることがある③自分が望んだわけではないのに危険にさらされている――などの理由から、危険を高めに見積もりやすいのだという。同志社大教授(リスク心理学)の中谷内一也さんは、「過剰な不安から、『絶対的な安全』を求めて野菜は食べないなどの極端な行動をとると、かえって別の健康上のリスクを増やしてしまう恐れもある」と注意を促す。
安全か危険かの二者択一ではなく、リスクがどの程度大きいのかを知ることが大切だ。
たとえ、信頼できる情報を得て、リスクの程度を把握しても、「怖い」などの感情は残る。中谷内さんは、「一人一人の受け止め方は違う。不安で何も手に着かず日常生活に支障が出るほどならば、その不安を解消できるような行動をとるのが良い。自分にとって納得いく行動を選ぶことが大切です」としている。
(一部抜粋)
基礎からわかる東海大震災, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年05月19日, 13面, <記事の中でコメント>
「次の東南海」と連動か ー専門家指摘 単独発生 過去になしー
「三連動」なら津波被害甚大
菅首相が浜岡原発の停止要請で根拠としているが、マグニチュード(M)8.0の「想定東海地震」が単独で30年以内に発生する”確率”87%という数字だ。しかし、政府の地震調査研究推進本部が公表しているこの数値は「参考値」という特殊な位置づけで、科学的な意味での「確率」ではない。有史以来、東海地震は一度も「単独で」発生したことがないからだという。
技術論抜き 政治的判断
中谷内一也・同志社大学教授は「原子力やエネルギー問題の解決には技術の活用が不可欠で、リスクのない技術もない。技術評価を飛び越えるような議論は結局、その信頼性を損ね、解決を遅らせることになる」と指摘している。
(一部抜粋)
食の安全[4] 震災後 ーリスク情報 正しく理解ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年04月23日, 21面, <記事の中でコメント>
規制値の意味学んで対処
「『食べてもただちに健康に影響はない』と言うのに、規制するのはなぜか」
今月上旬、東京都内の喫茶店で「バイオカフェ」が開かれた。科学の話題を専門家が一般に親しみやすく伝える場で、この日のテーマは「食品から検出される放射能」。
同志社大教授の中谷内一也さん(リスク心理学)は「リスクはあるという前提で先を見越し、起こりうる事態にどう対処するかを考える情報が求められている」と話す。
(一部抜粋)
東大教師が新入生にすすめる本, 新聞・雑誌, 本人以外, 東京出版会, UP UNIVERSITY PRESS No.462, 2011年04月05日, p.14, <著書の紹介>
中谷内一也(著)
『安全。でも安心できない… ―信頼をめぐる心理学』 ちくま新書
応用地震学の纐纈一起 地震研究所教授が科学技術の専門家になる人に必読書と紹介
放射能 難解用語に消費者不安 ーリスク説明に工夫をー, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年03月30日, 15面, <記事の中でコメント>
原発事故による食品や水の放射能汚染では、専門用語や一般的には分かりにくい説明が多い。食品の安全性や危険性について、国などはどういう姿勢で情報を出し、消費者はどう受け止めればいいのだろうか。
同志社大教授(リスク心理学)の中谷内一也さんは、「人は未知なものを危険視する心理がある。『後で影響が出るのか?』と不安になってしまう」と指摘する。
放射能は実際より危険と思われやすいという。目に見えず、状況が悪化すれば命に関わる可能性があるなどの要素があるからだ。
冷静に判断するには「被曝がすべて健康被害につながるのではなく、量が問題だと理解することが大切」と話す。食品や水道水などの規制値は、長くとり続けた時に、体に影響が出る人が現れる可能性があるという目安。予防のため安全を見越して数値が設定され、規制値を超えたら即危険ではない。
(一部抜粋)
環境先進地・北欧を歩く ー核最終処分場 建設着々ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2011年01月25日, 15面, <記事の中でコメント>
対話重ね、情報公開徹底
原子力発電の使用済み燃料から生まれ、1万年以上放射線を出し続ける高レベル放射性廃棄物の最終処分をどうするか。環境先進国の北欧諸国では、次世代への負担を最小限にする地下処分場建設が着々と進んでいる。原子力への不信が強く、処分場選定が進まない日本とは何が違うのか。
■ 女性パワー
■ 台所討論会
■ 技術者の信頼
こうした状況を中谷内一也・同志社大教授は「原発という巨大システムを私たちが理解するのは困難。でも信頼できる技術者が語り、リスクとメリットを納得できれば、これが最も望ましいコミュニケーションだ」という。
(一部抜粋)
もんじゅの出前説明会 定着 ー対面重視 地道に14年ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 読売新聞社, 読売新聞, 2010年10月26日, 13面, <記事の中でコメント>
「市民の不安」に技術者が回答
■ ナトリウム漏出事故の混乱や不信を反省材料に開始
■ 技術者らが、市民とひざを交え、質疑に答える
■ 地道な14年間の活動で原子力への理解が広がっている
リスク学が専門の中谷内一也・同志社大教授は「どんな人が原子炉を動かしているのか、顔が見えるから信頼感が生まれるわけで、技術者が自分の言葉で語るところに意味がある。リスク・コミュニケーションの王道だといえる」と評価する。
(一部抜粋)
すぐ規制では悪循環(蒟蒻ゼリー窒息事故についての記事), 新聞・雑誌, 本人以外, 東京新聞社, 東京新聞, 2009年07月03日, 23面, <記事の中でコメント>
身近な食品で窒息 感知する力を
■ 対象の線引き難しい
食品(群)別の窒息事故死亡数はどうなのか。人口動態統計によると、窒息死亡者数は06年の1年間で447人。全国で救急搬送された07年の救命救急症例は、原因食品はもちが最も多い24.5%で175人。次いで米飯類、パン、肉類の順。こんにゃくゼリーは「その他」で1.7人とされる。
ただ食品安全委は、他の食品と同じ頻度で食べると仮定した窒息事故死頻度で「もちが特に高く、こんにゃくゼリーはその次で、あめと同程度」と評価。また、06年から08年の窒息事故例約4000件を分析したデータでは、こんにゃくゼリーが原因となった事故の86%が生命に危険のある重症以上で、もちの55%を大きく上回った。
法規制について、泉政務官は「突き詰めれば肉団子もつみれも…となっていくのがいいのか」と、対象商品を線引きする難しさを強調する。
同志社大の中谷内一也教授(リスク心理学)は、「通常、専門家は結果の重篤度と確率で危険を評価し、一般市民はその危険の制御しがたさなどによる恐ろしさと未知性で考える」と指摘した上で「こんにゃくゼリーの危険は制御しがたくも、未知でもないが関心が高いのは、被害者が子供で、のどに詰まらせて死ぬ悲惨な状況がありありと想定できるからだ」。とはいえ「実は少ない事例に着目し、残りの多くを見過ごすのは健全な危険評価とはいえない。身近な食品がのどに詰まる危険を気付かせる例として、食行動教育などに生かしてはどうか」と提言する。
(一部抜粋)
「〇〇ダイエット」根拠なし 「減量 簡単ではない」専門家、お手軽風潮戒め, 新聞・雑誌, 本人以外, 毎日新聞社, 毎日新聞, 2009年05月22日, 16面, <記事の中でコメント>
納豆。寒天。リンゴ。バナナ。ゆで卵。手を替え、品を替え、登場する何々ダイエット。ごく最近はバナナダイエットがブームとなり、一時店頭からバナナが消える騒ぎもあった。何かを食べて痩せるということは、ありえないと知っておきたい。
■ 空腹紛らすだけ
■ 効果に疑問
■ 消費者は冷静に
中谷内一也・同志社大教授(心理学)は「健康情報が多過ぎるために、単純で分かりやすい情報に飛びつく側面がある」と分析したうえで「そもそもダイエットはそんなに簡単に成功するものではないことを知っておくことが大切」と呼びかけている。
(一部抜粋)
リスクのモノサシ共有する必要性(蒟蒻ゼリー窒息事故についての記事), 新聞・雑誌, 本人以外, 産経新聞社, 産経新聞, 2008年11月13日, 7面, <記事の中でリスクのモノサシを紹介>
↑10万人当たりの年間死亡者数(「リスクのモノサシ」NHKブックスより)
専門的な研究によれば、生活者が想像する事故の発生確率と、実際の客観的な発生確率にはズレのあることが実証されています。
例えば飛行機事故など、非常に印象の強い出来事は実際よりも発生確率が大きいと思われているとのことです。蒟蒻ゼリーの例も子供が犠牲になることが多いという意味で衝撃的です。
しかし死亡事故自体はここ数年、年間0から2件ほど、製造量は年5000万袋だとすると、客観的な発生確率は0.00001%以下となり、相対的な危険度は必ずしも大きいとはいえません。
そうであるならば、社会にとって重要な「再発防止」とういう意味では、危険情報や注意事項の周知徹底、加えて消費者の消費力向上への取り組みが妥当な対策だといえるのではないでしょうか。
帝塚山大学教授の中谷内一也氏は表のような客観的なリスクのモノサシを共有することの必要性を主張しています。事故に遭われた方々の気持ちには十分配慮しながらも、このようなモノサシを参考にして、冷静な議論をするための共通の場を作ることが必要だと考えます。
(一部抜粋)
文庫・新書のおすすめ新刊 中谷内一也著 『安全・でも、安心できない…』, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2008年11月02日, 14 面, <著書の紹介>
中谷内一也(著)
『安全・でも、安心できない…』 ちくま親書
高度に分業化された現代社会では、食品など日常の安全管理は専門家に委ねられる。が、彼らに「安全」と言われても、即座には「安心」につながらない。その心理メカニズムを分析し、共感に裏づけられた信頼を構築するための道筋を探る。
(一部抜粋)
一番の不安は地震(科警研など調査) 日本人意識 温暖化やがんも, 新聞・雑誌, 本人以外, 毎日新聞社, 毎日新聞, 2008年09月21日, 3面, <記事の中で日本人が不安に感じているもの 51項目の調査・ランキングを紹介>
日本人が最も不安を感じているのは、一に地震、二に地球温暖化――。帝塚山大と警察庁科学警察研究所は、日常生活で遭遇するさまざまな災難について意識調査し、不安のランキングをまとめた。「地震、雷、火事、おやじ」の現代版ともいえそうだ。札幌市で開かれている日本心理学会で20日、発表した。
帝塚山大の中谷内一也教授(社会心理学)らが、全国から無作為に選んだ成人2200人(有効回収率54%)を対象に1月から2月に訪問。新聞に掲載された主要な災難から選んだ51項目について、「まったく不安ではない」の0点から「非常に不安だ」の5点までの6段階で点数を付けてもらい分析した。また、被害を抑える組織への信頼度も尋ねた。
その結果、地震が平均3・99点で1位。温暖化(2位)や異常気象(9位)、戦争(15位)など地球規模の惨事への不安感が総じて高い傾向だった。がん(3位)や交通事故(5位)、脳・心臓病(10位)など、死亡者数の多い項目も上位を占めた。
また、年金問題(6位)や食品偽装(12位)、いじめ(24位)など「現代社会のひずみ」的な項徊や科学技術にかかわる項目では、被害を抑える組織への信頼度の低さが不安感に反映したとみている。年金では、受給中の高齢者より若い世代の方が不安感が強かった。一方、殺人や暴行、誘拐などの犯罪(11位)、窃盗や空き巣、詐欺などの犯罪(16位)は、比較的不安感が高かった。
(一部抜粋)
視点・有識者に聞く リスク心理学が読み解く「一般市民のリスク感覚」, 会誌・広報誌, 本人, 塩化ビニル環境対策協議会, PVC, 2007年07月, pp.3-5, <コラム>
人々は何に不安を感じるのか
研究者の理論とは異なる大衆心理の実態を探る
■ 安心と安全はなぜ両立しないか
リスク認知という研究分野は、1970年代にアメリカの社会心理学から出てきたもので、安全と安心はなぜ両立しないのか、という問いかけが出発点になっています。例えば、先進国では平均寿命がどんどん伸びてきて、致命的な伝染病かなり克服され、これまでの人々に比べて最もプロテクトされた文明社会が実現したのに、人々は「自分たちは今ものすごいリスクに晒されていて、かつてより危険な社会に住んでいる」と認識しています。人間には安全になればなるほど不安が高まって、さらに安全を求めるという傾向があって、こうした「現実と心のギャップ」はなぜ起こるのかということがリスク認知のスタートだったわけです。
リスク研究の専門家は、リスクというのは「嫌なことが起こる確率×結果の程度」というふたつの要素で構成されると説明します。例えば、脂肪の取りすぎで循環器系の病気になる確率は、摂取量に対してどれくらいかを定量化する。これがリスクの考え方です。
(中略)
■ 「恐ろしさ因子」と「未知性因子」
■ リスク管理への信頼の問題
■ 信頼の新しい形「SVSモデル
■ 「人工は悪、自然は善」なのか?
■ 双方向のリスクコミュニケーションを
(一部抜粋)
研究の現場と社会の欲望, 新聞・雑誌, 本人以外, 日本経済新聞出版社, 日経サイエンス, 2007年05月01日, pp.133-134, <著書の紹介>
中谷内一也(著)
『リスクのモノサシ』 NHKブックス
科学や技術そして広く学問はいろいろな意味で人間や社会の役に立ってほしいと考えるのは、とても自然なことだ。問題は何のための「金の卵」なのかということだろう。最近はダイオキシンや環境ホルモン、BSE、鳥インフルエンザなど生活の安心や安全を脅かす事件が増えている。フグの毒なら食べたらほぼ確実に死ぬが、ここに挙げたものは確率で表現することしかできないリスクとして対処しなければならない。しかもこの確率の数値やその評価自体が専門家の中で必ずしも一致しないことがある。中谷内の『リスクのモノサシ』は、社会心理学の立場から、科学によるリスクの定量化の意義と限界、リスクの理解の仕方を丁寧に解きほぐしてくれる。安全・安心な社会実現のために、科学者ができること、メディアができることの丹念なすりあわせが必要になってくる。
(一部抜粋)
中谷内教授の紙上特別講義 「リスクと向き合う」③ 信頼を得るためにはまず相手を信じる勇気が必要です, 新聞・雑誌, 本人, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2006年09月10日, 31面, <コラム>
様々なリスクに、社会全体としてうまく対応するには、信頼関係が必要――。中谷内教授は、現実論としての信頼の重要性唱えます。皆さんからは信頼の作り方のヒントをたくさんいただきました。中谷内教授が「優」とした3通を紹介します。
問:相手を信頼できたり、信頼してもらえたりしたエピソードを、理由も添えて教えてください。
■ 10分足らずの診察、伝わった人柄
藤原庭さん(75)=無職、大阪市住吉区
「紙上特別講義」と「受講生への宿題」を読み、強く心を動かされました。今まで「信頼」について、あまり深く思いをめぐらせたことがなかったように思います。
人は何を基準にして、信頼できたり、信頼されるようになったりするのでしょうか。
長い人生の中で、頼られることが多く、自分が誰かを頼りにしてきたことがほとんどなかったように思います。
何年も不眠に悩んでいた私が、病院の心療内科を訪ねた時のことです。医者と患者との間で最も重要な「信頼」を、10分足らずの診察で得ることができました。
その理由は、先生の人柄。語り口の柔らかさ、人となりの穏やかさ、対応の丁寧さなど、言葉以外に感じ取れる人格なのです。
どんな育ち方をしたら、どんな生き方をしたら、このような印象を人に与えられるのでしょうか。
果たして自分は、人にどんな印象を与え、信頼を得たり、失ったりしているのだろうか? と、深く考えさせられました。
■ 先入観ぬぐい去った上司の一言
鈴木聡子さん(34)=会社員、大阪市城東区
人事異動で新しい部署に配属された時のことです。仕事の説明をされたのは、その部署の部長であり、他部署からも厳しい、怖いと言われている方でした。
先入観から必要以上に緊張して説明を受けました。その時の一言が、私の先入観をあっさりぬぐい去り、部長への信頼感へと変わりました。その一言は「自分がいいと思ってやってみようと思うことはやってみればいい。新人だからといって現場が受け入れてくれないなら、私(部長)の承認を得ていることを伝えればいい。失敗の責任は個人の問題だが、部署の責任でもある」という内容でした。経験のほとんどない私にとっては、私の思うようにやっていいと言われたこと、部署としての責任も言葉に出してくれたことが、気持ちを軽くしてくれました。
相手が何かを自分に話す時、そこには伝えたい、知っておいてほしいという気持ちが込められていると思います。それを受け止められる時、思いを込めて気持ちを込めて話した時、たとえ初対面であっても、そこに信頼が生まれるのではないかと思います。
■ 帰らぬ子を一緒に探してくれた
柳澤美月さん(71)=主婦、大阪府吹田市
幼稚園3歳児クラスに入園した次男の下に2歳と1歳の年子を抱えていた私にとり、手をつないで通園してくれる近所の年長組の友だちの存在は大きかった。
その友だちの制服はいつもアイロンがけがしてあり、礼儀も正しかった。そのお母さんは、こぎれいにされ、美しい方で、5人の子育てに追われ、なりふり構わずの私は恥ずかしく、近寄りがたく思っていた。
通園生活にも慣れたある日、帰ってこない次男を心配し、一軒一軒、探し回った。するとそのお母さんは私に代わって方々を探してくれた。しぱらくして、そのお母さんは「ザリガニとりに行きたいという話を聞いていた子どもと駆けつけると、小川の浅瀬にいました。ほっとして、ついでに3人でザリガニ釣りをしてきました」。
子どもの心をくみ取り、ズボンをぬらしながら挑戦してくれたお母さんに頭の下がる思いで、心から感謝した。お高い人と一線を引いていた私の思い違いを心でわびた。話し合ううちに、相手の考え方や人間としての優しさも知り、信頼できる間柄になった。
■ 中谷内教授の講評
《藤原さん》標準的な社会心理学のモデルでは、信頼を獲得するための一つの要素として人柄の誠実さがありますが、それを示してくれるいい例です。標準的なモデルにはもう一つ、信頼を生む要素として「有能さ」もあるのですが、医師としての能力も合わせて短時間のうちに感じ取ったのかもしれません。
《鈴木さん》従来のモデルでは、信頼は崩れやすく得難い、とされてきましたが、実は一言で信頼を獲得できることもあることを示しています。しかも、相手がリスクを負いながらも先にこちらを信頼してくれれば、こちらもお返しに相手を信頼するという「返報性」の原理があることも教えてくれています。相手に信頼してもらいたいと思ったら、まずは相手を信頼する非常に強い勇気が必要だ、という教訓も含まれています。
《柳澤さん》子どもの安全を心配するという親としての価値観を共有していることを知り、急速に信頼が生まれました。また、自分にとって大事な子どもが持つ「ザリガニとりを楽しむ」という価値観も共有してくれたことで、一層の信頼醸成に役立っています。この場合、相手の有能さなどとは関係ありません。価値観の共有による信頼は、その相手に関するネガティブな情報に接しても無視してしまうなど、信仰やイデオロギーを共にする人びと特有の強い結び付きを生むこともあります。
(抜粋)
中谷内教授の紙上特別講義「リスクと向き合う」② 専門家と一般の人の間で情報を共有しようとする動きも出てきました ーすべてにゼロリスクを求めるのは合理的な反応だとはいえませんー, 新聞・雑誌, 本人, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2006年09月04日, 19面, <コラム>
最近、安全と安心という二つの言葉がセットで使われるようになってきました。「安全・安心社会の実現」などという言い方です=①。数字上の安全が高まってもそれで人々が安心感を得られるかは別の問題、との認識が深まってきたからでしょう。食について昔以上に安全が保たれ、世界でも有数の長寿と健康を享受できるこの国で安心感がないとは、一見、逆説的に思われるかもしれません。
不安社会の反応としてまず考えられることは、監視と懲罰の強化です。監視によって悪事が発覚しやすくなり、しかも厳しく罰せられるとなれば、皆悪いことはしなくなるとの考えに基づいて、一定の安心感は生まれます。情報公開制度も監視の一つのあり方です。しかし、それで本当の信頼感が醸成されるかといえば否定的に考えざるを得ません。また完全な監視社会を作ろうとすれば巨額のコストがかかる。社会的なコストの面からも私たちは信頼を必要としているのです。
その信頼醸成の取り組みとして、専門家と一般の人たちとの間で、いい面も悪い面も含めたリスク情報を共有しようとする動きも出てきました。リスクコミュニケーション=②=やパブリックインボルブメント=③=などがそうです。これらは専門家が一般の人々を説得するのではなく、リスクに対して違った価値を持つ者の間で相互理解を深めながらリスク問題に対処していこうとする試みです。
これらの活動において重要なのは、リスクをゼロにするのは不可能であるとはっきりさせることです。政府などのリスク管理責任者がゼロリスクが可能であるかのように振る舞ったり、人々がやみくもにゼロリスクを求めたりしていては、適切なリスクマネジメントはできません。ゼロリスクを達成するにはそれこそ膨大なコストがかかり、そのコストを他のリスク対策に回せば、もっと多くの人たちを救えることもあります。しかも科学技術が発達した現代では、これまで以上に将来のリスクを次々と把握することが可能になりました。その一つひとつにゼロリスクを求めることは社会全体にとっても合理的な反応だとはいえません。
その際に私たちにとって大事なことは、自分の中にいかに身近な「リスクのモノサシ」=④=を持てるかです。あるリスクを他のリスクと定量的に比べてとらえられれぱ、対策としてまず何をするべきかの優先順位を考えやすくなります。牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザなどを恐れながら、日々、喫煙しているとはどういうことなのか、リスクヘの自分の態度を振り返る契機にもなります。刻々と現れるリスクに対し、いちいちいたずらに不安をかき立てられずにすむための一つの方法です。
①安全・安心社会 06年度からの国の第3期科学技術基本計画では、新型肺炎SARSやBSE、鳥インフルエンザ、米同時多発テロ以来複雑化した国際安全保障環境などを挙げて「国の持続的な発展基盤である安全と安心を脅かす事態が次々と生じた」との認識が示された。04年には文部科学省の「安全・安心な社会構築に資する科学技術政策に関する懇談会」が、「安全・安心な社会の概念」などを検討した報告書を出した。
②リスクコミュニケーション 専門家や一般の人々が、リスクについての情報を共有し、率直な意見交換をしながら認識をすりあわせ、対策なども考えていく手法。
③パプリックイボルブメント 住民らが、行政などが作った計画に意見を述べるだけでなく、立案段階から参画する方法。公共事業の計画などで実践されている。
④リスクのモノサシ 中谷内教授は、リスク比較セットの一例として、10万人当たりの年間死亡者に関する六つの概数を提案している。「がん250、自殺24、交通事故9、火事1.7、自然災害0.1、落雷0.002」。このモノサシを使うと、例えば直接喫煙による死亡のリスククは80で自殺死以上がん死以下だとわかる。入浴中の水死のリスクは2.6で、火事死以上交通事故死以下。BSEで変異型クロイツフェルト・ヤコブ病になるリスクは「非常に非常に悲観的なシナリオを考えても落雷死より低い最下位」としている。
(抜粋)
中谷内教授の紙上特別講義「リスクと向き合う」① 倒れ込む牛のイメージが米国産牛肉に対する警戒心を強くしています ー政府がいくら安全だといっても安心できないのも当然ですー, 新聞・雑誌, 本人, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2006年08月28日, 24面, <コラム>
米国産牛肉の輸入が再開されましたが、「政府は安全だと言うけれど、どこか不安…と、食べるかどうか決めかねている人もまだ多いのでは。牛海綿状脳症(BSE)といった身の回りのリスクをどのようにとらえたらいいのか。帝塚山大の中谷内一也教授(44)が、暮らしの中に潜むリスクとの付き合い方を話します。
リスクはその事態が発生する確率と結果の程度とのかけ算で大きさを測ることができます。確率が高く結果が重大であれば、リスクが大きいと考えられます。
「経済人」(ホモ・エコノミクス)という人間観があります。完全な情報下に置かれ、完璧といっていい情報処理能力を持ち、最も合理的な判断ができる人間のことです。こういった規範的な人間像を前提として標準的な経済学やリスクへの自己責任論は成り立っていますが、現実的にはそんな人間はいません。
例えば、最近輸入が再開された米国産牛肉=①=について考えてみましょう。実際にスーパーに買い物に行った際、米国産牛肉を買うかどうか、どのようにして決めるでしょうか。BSEに感染する確率や、もし感染・発症してしまった場合の症状のひどさなどを詳細に調べ、万全な計算をしてから判断している人はほとんどいないでしょう。
私たちは専門家とは違って、日々牛肉のことばかり考えて生きているわけにはいきません。仮にリスクが何パーセントか分かっていたとしても、現実的な選択肢は買うか買わないかの二つに一つ。どうしていいか余計に分からなくなってし まうこともあります。そこで私たちが頼ってしまうのがイメージです。米国の心理学者スロビックは「恐ろしさ因子」と「未知性因子」があると言います=②。BSEはこの二つの因子によく当てはまるうえ、よろよろと倒れ込む牛の映像をニュースなどで見て、そのイメージが浮かびやすくなっているので、リスクに対する警戒感が強くなっています。日本では全頭検査や全箱検査=③=などが消費者などから求められました。食中毒などのリスクが高いはずの刺し身などは好んで食べる日本人が、なぜ牛肉に対してはこれほど神経質なのか、との声も米国では聞かれます。
米国の農務次官がBSEの危険性について「車でスーパーに買い物に行って事故に遭う確率の方が方がよほど高い」とリスク比較を用いた発言をしましたが=④、数字上は正しくても日本では反発を買いました。輸出を再開したいとの狙いがありありと見えたからです。
私たちにはリスクがどの程度かよくわからないので、行政や研究者らに判断を任せることも多いのですが、この「任せようとする気になる」というのが「信頼」です。しかし、今はこの信頼がなくなっています。日本政府も日米首脳会談に間に合わせるかのように輸入再開の手続きを進めたと消費者の目には映りました。そんな政府がいくら安全だと言っても、それを信頼し、安心することなどできないのも当然です。
①米国産牛肉を巡る経緯 03年12月、米国で初のBSE牛が発見され、日本政府は輸入を停止。05年12月に輸入再開を決めたが、06年1月、特定危険部位の背骨が見つかり、再禁輸措置。同5月に日米両政府が輸入再開手続きを大筋合意し、6月の日米首脳会談を経て7月に輸入再開を正式決定した。8月から店頭に再び並んだ。
②恐ろしさ因子と未知性因子 専門家のリスク認識と区別し、一般の人々のリスクのとらえ方としてスロビックがこの二つの因子を提示した。中谷内教授によるとBSEについていえば、前者は例えば、感染すると深刻な中枢性障害を経て死に至る、など。後者は、科学的にわかっていない、リスクにさらされている人がそのことを自分で認識できない、など。
③全頭検査と全箱検査 日本で初のBSEが確認された01年、全頭検査が始まった。日本が米国産牛肉の輸入再開の条件として全頭検査を求めたが米国は拒否、交渉が長期化した。再禁輸措置の解除にあたり、当面の措置として、全箱を開けて調べる態勢をとった。
④リスク比較 あるリスクの大きさを相対的に表現するために、他のリスクを比較対象として示すこと。問題の発言は06年1月、米国産牛肉の再禁輸措置をめぐり、日米両政府が日本で協議した後の記者会見で米国のぺン農務次官が語ったもの。小泉首相が「あまり良い表現ではない」と不快感を示したように、リス比較は肯定的に受けとめられないことが多い。
(抜粋)
新科論 「リスクと生きる」① 「安心」欲しいけど ー石綿上回るたばこ被害ー, 新聞・雑誌, 本人以外, 朝日新聞社, 朝日新聞, 2005年11月15日, 7 面, <記事の中でコメント>
空気中のアスベスト(石綿)を測定している大阪市立環境科学研究所で、2400㍑の空気を濾過した直径約5㌢のフィルターを、特殊な顕微鏡で見せてもらった。ほとんどが丸い土ぼこりだが、細いひげ状の石綿がほんの少し交じっていた。
一般の大気中にも石綿はある。現在、1㍑中0.4本(大阪市平均)から0.7本(東京都板橋区)程度、検出される。
米環境保護局や世界保健機関(WHO)ヨーロッパ地域事務所は、1㍑0.1本の大気を生涯吸い続けると、10万人に2人ぐらいが中皮腫や肺がんになると推定している。ただし、高い濃度での発病からの類推で、不確実性は大きい。
石綿の約8割は住宅やビルの建築に使われた。それらの建物を解体するとき対策を施さないと、一般の環境に石綿を飛散させることになる。
95年1月の阪神大震災の約2ヵ月後、石綿濃度は神戸市で1㍑中最大6本まで上がった。旧環境庁の調査によると、対策が不十分なビルの解体現場の周辺では、一㍑中400本以上にもなる。
原因はほとんど石綿といわれる中皮腫で、04年に亡くなったのは約千人。石綿を扱う職場で働いていた人や、その近くに住んでいた人が多いようだ。ただし、「誤差の大きな推定しかできないが、大気の濃度を1㍑1本と考えると、年間死者の1割、約100人は一般の大気による可能性もある」と村山武彦・早稲田大教授。
大気に広く分布する石綿の危険度(リスク)について、どれぐらい心配すべきなのか。
中谷内一也・帝塚山大学教授(リスク心理学)は「ほかのリスクと比べてみるのが一つの方法」と提案する。
例えば、独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センターは、「損失余命」というものさしで化学物質のリスクを比較するパソコンソフト「リスク計算機」を開発した。年内にウェブで公開する。
住民がさらされている濃度や、濃度と健康影響との関連などを入力すると、損失余命がはじき出される。棒グラフはその主な例だ。
大阪市の大気中の石綿は、発がん確率から概算すると損失余命約0.4日に相当。ヒ素やトルエンのリスクに匹敵する。
ところが、これらをはるかに上回っているのが、たばこだ。
受動喫煙の被害も大きい。WHOの01年の発表によると、日本では受動喫煙のせいで年間2万人から3万人が亡くなると推計されている。大気中の石綿により中皮腫で死ぬと推定される人の、実に200~300倍だ。
がんは、さまざまな原因で引き起こされる。円グラフは、原因の内訳を示したものだ。米国のデータだが、こちらもたばこと悪い食習慣が目立つ。環境汚染の影響は意外に少ない。
日本人のがんの原因は、たばこが米国より低め、アルコールはやや高めになるが、全体の傾向は同じ」と津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長。ただし日本ではこの種の研究が遅れており、詳しい比較は難しいという。
環境や医療、災害など生活のさまざまな分野に「リスク」がある。安全に暮らすために、今そこにあるリスクと、どう付き合っていけばいいのだろうか。
(一部抜粋)
クボタはなぜ許されたのか -アスベスト問題にみる企業対応と環境リスク心理, 新聞・雑誌, 本人, ダイヤモンド国際経営研究所, リスク・マネジメント Business, 2005年11月01日, pp.20-23, <コラム>
■ 被害の深刻さとクボタ批判のアンバランス
(中略)
このように深刻なアスベスト問題であるが、現在までのところ、クボタに対する世間の批判はそれほど厳しいようには思えない。多数の死亡者、今後の被害見込み、第一報から今日に至るまでの大量の報道、こういったことを考えると、クボタはもっと批判の的になっていてもおかしくない。なぜ、そうならずに企業イメージの悪化をある程度、防ぐことができているのであろうか。
本稿ではリスク認知研究の観点からこの問題を考えてみたい。
■ リスク認知研究と信頼の重要性
■ 信頼悪化をいかに食い止めるか:自発的人質供出
■ その他の要因:被害者コメントと法令順守
■ 真の誠実性だけがテクニックを機能させる
(一部抜粋)
ヤミ金融にはまる消費者心理 -説得と判断の心理学-, 新聞・雑誌, 本人, 日本更生保護協会, 更正保護, 2005年09月01日, pp.24-27, <特集> 消費者社会と経済観念
ヤミ金融にはまる消費者心理
-説得と判断の心理学-
保護観察対象者は、何らかのかたちで金銭トラブルを抱えていることが多く、ヤミ金融から借金しているケースも少なくないようである。その理由として、「本人の先々への見通しが甘く、安易に欲求を満たそうとする性質が強いからだ」ととらえられることも多い。
確かにそういう側面はあるかもしれない。世の多くの人は金に困った経験を持つはずだが、それらの人がすべてヤミ金に走るわけではない。しかし、今日、サラ金・ヤミ金による多重責務や過酷な取立てが大きな社会問題となっているのは、多くの、そして、ごく普通の消費者がちょっとしたきっかけでこれら金融業者から借金を重ねてしまい、そのまま自転車操業的な返済のサイクルから抜け出せなくなってしまうからなのである。
したがって、保護観察対象者本人の性格上の問題が、彼らの金銭トラブルのすべての原因と決めつけることはできない。むしろ、だれもが罠にはまってしまうような判断や意思決定上の心理学的特性というものがあり、業者はそこを突いてくる、という点こそ見逃すことのできない側面である。
人がある行動をするとき(この場合は。ヤミ金から借金を重ねること)、その人の「性格」上の原因がその行為をさせると考えるパーソナリティ中心の見方と、その人を取り巻く「状況」がその人にある行為をさせると考える状況中心の見方があるが、本稿では、保護観察対象者が最初の借金から多重債務へと向かうプロセスを、彼らの置かれている状況に目を向けて解説したい。
(以下略)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<9> 拒否の理由を奪う状況作る, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月26日, 18, <コラム>
催眠商法のプロセスは業者によって若干の相違はあるが、基本的な部分はほぼ共通している。もう一度整理しよう。業者は様々な手法で主婦たちを「このまま言うことを聞いていればもっとトクをする」という気分にし、興奮した、愉快な感情状態に誘導する。この際、集まった主婦たちがお互いに知らないもの同士であることが、業者側に都合よく働く。
さて、業者が人だかりをこのような状態へ導こうとするのは、もちろん追い込み段階へとスムーズに移動させ、最終的には羽毛布団の購入を説得するためである。そこで、なぜ「興奮した愉快な群集」になると、業者の思うツボにはまってしまうのかを考えてみよう。
まずあげられるのは、興奮した群集の一員になってしまった場合、理性的な判断力が低下してしまうということである。個人単位であれば、混乱した状況下でもかなり冷静な判断ができるが、興奮した群集に巻き込まれてしまうと、非合理的な判断に同調してしまう傾向が高くなる。
そして、物事を様々な角度から考えてみる余裕がなくなり、特定の情報源(すなわち業者)に対する”被暗示性”が高くなる。ここでの被暗示性とは、ある示唆が与えられると、それを吟味することなく受け入れてしまう傾向を意味する。しかも、挙手や発声を繰り返しているので身体的にも活性化しており、悪い意味で実行力がついている。
これらのことから業者に乗せられて追い込み段階へとついて行ってしまい、ひいては、高価な羽毛布団を買ってしまうのである。ただし、最終的な購入の説得は業者が個人ごとに「落とし」ていく。催眠商法が紹介される時、しばしば、集団全休が興奮にあおられて一斉に購入するかのような印象を与える表現があるが、本当は一人一人説得するのである。
人が他者からの説得を断る場合、普通は「拒否の理由」+「拒否の言葉」のセットで自分の意思を伝える。主婦が訪問販売を断る時も、「今は忙しいからダメ」「高いからいらない」「欲しくないから帰って下さい」と応答するだろう。
ところが催眠商法ではこれらの理由は使えなくされている。なぜなら、これまで三時間も業者につきあっているので、いまさら忙しいワケはないし、「安い」「欲しい」と何度も叫んだ後に「高いから」とか「欲しくないから」とは言いにくいだろう。このように拒否理由を奪われた状態で、しかも、これまで笑顔でハイハイ言っていたのに、急に断固として拒否するのは困難なことである。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<8> 自分の感覚で品質を確認, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月24日, 18, <コラム>
リーダーは健康の大切さについて話をするのだが、話の進め方はこれまでと同様である。すなわち、明朗快活、ユーモラスな語り□で、頻繁に返事や挙手、笑顔を求め、品物を配る。ただし、話芸はほかのメンバーよりも格段に達者で、主婦たちをぐんぐん引きつける。
健康についていくつかのエピソードを話す中に「着物と布団の比較」が出てくる。「皆さんは数年に一度しか使わない着物に何十万円もかけるのに、毎日使う布団にはあまりお金をかけていない。一回当たりのコストに換算して比較すると、高価な布団でも決して高くはない。特に健康の大切さを考えると安いもの」という内容である。消費者はお金や商品の「もったいなさについて複数の価値基準をもっている。業者は普通なら布団には適用しないような価値基準に言及し、もはや批判的態度を失った主婦たちに受け入れさせようとしているのである。
さて、ころ合いを見計らって、いよいよ羽毛布団が引き出される。リーダーは品質の高さを様々な側面から述べたて、通産省認定を口にして商品の信頼感を強調する。ここでのポイントは、商品を目の前に広げて見せるだけでなく、実際に寝させたり、手で中身をこねさせたりすることにある。
つまり、抽象的な推奨を重ねるだけではなく、実際に触れさせて、自分自身で品物を確認させるのである。何といっても新品の布団だから、気持ちがいいに決まっている。このように、一方的に説得するよりも、主婦側に能動性を持たせて、自分の感覚で品質を確認させる方が商品の魅力度は上がるだろう。
また、ここでも「気持ちいい!」「欲しい!」と大声で唱和するよう求め、後で値段を言ってからは「高いですか、安いですか?」と問いかけ、「安い!と返事させる。人は自分の考えと異なる意見であっても、その意見を人前で□にすることによって、自分の態度がその意見の方向へ変化してしまう傾向がある。
こうして羽毛布団への欲求を高めておいて、価格の話に移る。例えば定価百二十万円を、宣伝のためと称して六十万円→四十万円とだんだん割引し、分割払いだと一カ月わずか一万二千円と訴える。この際にもいちいち金額を唱和させ、セールストークが一方的にならないよう気を配る。
このころになると、業者たちは室内に散らばり、買いそうな主婦に目をつけて、ポットなどを配りながら個人ごとの説得にかかる。これまで、主婦たちは業者の言うことに何でも笑顔でハイハイ答えていたので、ここで急に”鉄仮面”に変身するのは困難である。こうして業者の強い粘りに折れて、一人二人と契約に応じるのである。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<7> 低額商品与え、反応高める, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月19日, 26, <コラム>
追い込み段階の部屋の前で業者は再度、反応を求める――「ポット欲しい?」「もらったらどうするの?」。これに対し主婦たちは「欲しい!」「すぐ帰る!」と大声で反応するよう促され、部屋の中へと通される。実際にはすぐ帰るどころか、約二時間の追い込み段階が始まる。
室内の広さはたいてい十畳程度で、壁は紅白の垂れ幕で覆われており、晴れやかな雰囲気が演出されている。主婦たちは中央に座らされ、業者が四、五人で周りを囲むように位置する。
すぐに配られるはすだった約束のポットはチラつかされるだけで、再び街頭と同じようなやり取りが始まる。ただし、業者たちの声のトーンやテンポは上がり、街頭では一人ずつ手渡されていた品物もここでは放り投げるようにして与えられる。
また、ステンレス包丁や密閉容器セットなど、ランクの高い品物が登場し、反応のよい主婦におだてながら与えられる。念願のポットがもらえるという期待感にあふれていることもあって、主婦たちの反応はますますエスカレートする。
こうして、追い込み段階に入って三、四十分たったころ、第一の「販売」が始まる。業者は例えば、台所用万能カッターのような物を取り出して「この品物は定価二千円ですが、今日は宣伝のため、特別に二百円にします。二百円で買って宣伝してくれる人は?」と呼びかける。主婦たちはこれまでの勢いや実際に安いこともあって、かなり多くの人が「ハイ!」と元気よく返事し、財布に手を伸ばす。
すると業者は「僕たちは本当は買ってもらいたいんじゃなくて、買ってでも宣伝してあげるという意欲を持ってもらいたいんです。今日の奥さん方は本当に元気がいいんで特別にタダにしちゃいます」と言って全員に無料で配る。「販売」物は台所用品や洗面用品などいろいろな場合があるが、業者はこれで利益を得るつもりはなく、あくまで、羽毛布団を売るための布石として提示しているのである。
すなわち、大移動の前に小移動させたのと同様に、高額商品の購入を持ちかける前に低額商品の購入を呼び掛け、しかもそれがべらぼうに安く、元気よく返事していれば結局はタダになる、という経験をさせている。このようにタダの物を配るだけでなく、有料↓タダという図式を経験させておいた方が、目的の高額商品を提示する時にも肯定的に受け止められやすくなるのだろう。
こうして追い込み段階も一時間を超えるころになるといよいよ真打ちの登場である。業者の一人が「皆さんにとって一番大切な健康の話を聞いていただきます。お話し下さるのは○○さんです。拍手でお迎え下さい」と紹介し、二枚目のリーダーが満場の拍手の中、笑顔で登場する。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<6> 追い込みへ小移動を細工, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月17日, 26, <コラム>
事態はいよいよ高額商品を購入させる「追い込み段階」へと近づいてきた。業者は人だかりを、追い込み段階の現場として準備してある近くの建物の一室へ移さねばならない。距離は街頭の舞台からせいぜい二百㍍程度。多くの場合、商店街内の雑居ビルなどに用意されている。
ここへは、街頭の人だかりに最後までとどまっていた人のうち、八割程度(二十人弱)が来ることになる。これは考えてみるとすごいことで、普通、道行く主婦に「商品をタダで差し上げますから、そこのビルまで来て下さい」と頼んでも、ついて来る人はほとんどいないだろう。それなのに催眠商法では多くの人がついて行ってしまう。
なぜだろうか。一つは人だかりが業者の働きかけを受け続け、十分に「できあがって」いるからである。しかも、自分一人ではなく、人だかり全体での移動なので不安も感じない。もう一つの理由は、人だかりはビルヘの大移動を求められる前に、次のように小さく移動させられているからだ。
街頭の舞台は五、六㍍離してニヵ所設けてある。最初の舞台の担当者がある程度の人を集め、モノを配って十分に活性化しておいてから「こちらにある商品は全部お配りしました。今度はあちらで、もっと高い商品をもらって下さい」と、もう一つの舞台を指す。そこでは別の舞台担当者が手招きしている。移ってきた人から順に品物を渡し、再びこれまでと同様なやりとりを始める。
従って、人だかりは小さな移動を求められ、これに応じることによってモノをもらえた、という経験をしたことになる。人間はある小さな依頼に応じてしまうと、それと同様のより大きな依頼にも比較的簡単に応じてしまいがちである。このため、人目の届かないビルヘの移動、という大きな依頼にも応じてしまうのだろう。
さらに、移動を求める手順も手がこんでいる。まず、隠れていた業者の一人が舞台担当者の所に来て何やら耳打ちする。すると、舞台担当者は顔を曇らせて次のようなことを伝える。
「この場所は三十分間という約束で銀行(百貨店)から借りていましたが、もうとっくに時間が過ぎてしまい、いますぐ引き揚けるように言ってきました。ですから先ほどお約束したポットをここに持ってきてお配りすることはできません。そうなると皆さんも残念でしょうし、僕たちも困ります。ポットを用意してある場所はすぐ近くなので、今からご案内しますから、ポットを受け取ってから帰って下さい」
この段階までくると人だかりの気分はかなり盛り上がっている。結局は、ポットを掲げた業者を先頭にして「ハーメルンの笛吹き」よろしく、追い込み段階の現場へと移動することになる。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<5> 楽しい雰囲気で客快活に, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月12日, 18, <コラム>
催眠商法特有の「快&興奮」への感情操作のうち、今回は「快」、すなわちどのようにして、集まってきた主婦たちを喜ばせ、楽しませるかについて述べよう。
第一にはもちろん、タダで品物を配るという点があげられる。つまり、主婦にすればトクをするから楽しいわけで、このとき上昇系列での商品の配布が効果的であることは述べた。第二には下手な漫才よりよっぽどおもしろいという特徴があげられる。しかも、一方的に話すのではなく、いちいち反応を求めるので、主婦たちは参加型イベントに身を置いたようないっそう楽しい気分になる。
例えば、次のようなやりとり。 〔業者〕「僕、よく郷ひろみに似てるっていわれるんですよ。皆さん、ヒロミって呼んで下さい。さあ、僕はだれに似てますか?」〔人だかり〕「(小声で)ヒロミ」 〔業者〕「えっ?よく聞こえない」〔人だかり〕「(大声で)ヒロミッ!」〔業者〕「ありがとう。僕ってそんなに男前ですか。じゃ、気分が良くなったから、どんどん配りましょう(といって品物を配りだす)」 また、やや下品な冗談も連発する。例えば、〔業者〕「今から、洗剤を配りますけど、おしりの大きい人はパンツもでかいから、たくさん洗剤がいるでしょう。ですから、おしりの大きい人には二つ配ります。さあ、おしりの大きい人、元気よく手を挙げて」[ひとだかり〕「一部が)ハイ!〔業者〕そこの奥さん、本当におしり大きいねえ。(爆笑)でも、おしりの小さい人でも二つ欲しい人は元気よく返事して下さい。どんどんさしあげますから。もう一度、おしりの大きい人!」〔人だかり〕「(笑いながら全員が)ハイ!」という具合だ。
一方で、「もらって帰って下さい」とか「お願いします」を繰り返して、丁寧さは絶対忘れない。
「ニコニコしている人の方が友達が多く、口コミの効果も上がるから」と称して、笑顔の練習というのもする。舞台担当者が両手の人さし指を自分の両頬(ほお)に当て「せーの、ニコ」と合図すると、それに合わせて人だかりが「ニコッ」とほほ笑むのです。道端でのこんな光景はいかにも異様だが、主婦たちは本当に楽しそうである。
人の感情には楽しいから笑うという通常の方向とは逆に、笑顔を作ることによって、主観的にも楽しくなってくるという面もある。特に表情操作は、身体の他の部分の操作に比べて、主観的な感情状態に影響を与えると言われる。
業者は以上のような方法で人だかりを楽しい気分に誘導する。一人ではなく、たくさんの人間が楽しい体験を共有することによって、感情の共振現象が生じ、全体の雰囲気は非常に明るく、快活なものになる。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<4> 盛り上げ興奮状態に誘導, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月10日, 22, <コラム>
前回は人だかりの維持のテクニックとして、「この場にいればトクをする」という気分にさせる方法を紹介した。しかし、これだけでは忙しい主婦をとどめておくにはインパクト不足である。そこで、業者は損得「勘定」に訴えるだけでなく、別の「感情」面からの揺さぶりもかけてくる。
人間には様々な感情があるが、それらを分類する代表的な基準として「快-不快」と「興奮-沈静」がある。催眠商法では「快&興奮」という感情状態に人だかりを誘導する。今回は、いかに興奮状態をつくり出すかを見てみよう。
この興奮という要素は催眠商法の特徴的な側面である。「何か興奮しているうちに契約してしまった」とか「異様な雰囲気に乗せられてしまって気がついたら買っていた」という苦情が多く、そこから「催眠」商法と名づけられたくらいだ。
業者はすんなりと品物を配布するわけではない。まず、舞台担当者が「この商品、タダでもらってくれる人!」と呼びかけ、人だかりを囲んでいる呼び込み担当者が挙手しながら「ハイ!」と元気よく答える。そして、集まった人たちにも同じように反応するよう促す。もし、全体的に反応が鈍いようであれば「もう一度、ハイ!」と勢いよく呼びかけ、一斉に元気のよい反応がでるようにしてから配布を始める。
また、競争心をあおって、反応を活性化させようともする。例えば、「元気のいい人の方が友達が多く、よく宣伝してくれるから」といって、大声ですばやく返事をする人に優先的に品物を与えたりする。これらの操作は、人だかりが体面を気にせずにすむ面識のない者同士なので、個々人の反応の積極性を効果的に高めることができる。
ほかにも業者は別の問いかけに返事をさせたり、商品名や会社名を反復させたりするが、求める反応はいつも「ハイ」かオウム返しかである。つまり、人だかりの主婦たちは、何も考えずに業者の言うことになんでもかんでも「ハイ」と元気よく答えてさえいればモノがもらえる、という経験を繰り返すわけである。
また、ひとつの品物をもらうのに何回も返事が要求され、数の少ない商品はちゃんと反応していても手に入らないことがある。このように、正しく反応していても、モノがもらえたり、もらえなかったりすることによって、かえって反応の積極性や持続性が高くなるようだ。
以上のように、単に品物を配るだけでなく、群集としての特質を利用して、発声や挙手などを通して積極的にやりとりに参加するように仕向け、全体の興奮を高めていく。人集め段階は約一時間続くが、最後には通行人のうち、振り返らない人がいないほどの盛り上がりになる。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<3> 配布品良くなる提示工夫, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月05日, 18, <コラム>
今回は人だかり維持のテクニックについて解説する。業者としては、試供品の無料提供につられてきた主婦たちをそのまま帰してしまったのでは、「商売」にならない。従って、集まってきた主婦の人だかりを維持し、さらには建物の一室にすんなりと移動させるためのテクニックが必要になる。
このテクニックには様々なものがある。いずれも催眠商法特有の心理状態である①楽しい②興奮する③トクである、という三つのうちのどれかをもたらすべく機能する。今回は、③の「この場にとどまっていればもっとトクをする」という気分にいかに導くかに焦点を当てよう。
第一に、配布する品物が段々よくなるという手法をあげることができる。無料提供につられてやってきた人には、まず小さな箱入りの合成洗剤やフキンだけが手渡される。しかし、「舞台」上にはほかにもいろいろな品物が置かれている。担当者は「宣伝を聴いて、その内容を友達に広めてくれるなら、ここにある品物すべてを進呈する」とほのめかし、やってきた主婦をその場にとどめようとする。
実際にはすべてが配られるわけではなく、会社の宣伝や人だかりとのやり取りが冗長に続く。それでも例えば、洗剤・フキン→手芸用ハサミ→バスタオル→密閉容器セット→ポット、という具合に上昇系列」で商品を提示してゆき、一部は実際に配布する。
この配布順序の効果によって「もうしばらくここにいればもっとよいモノが手にはいる」という気分になると考えられる。もし、配布順序が逆であれば、集まった人たちは最初の品物を受け取っただけですぐに去ってしまうだろう。
ポットなどのやや高価なものは、見本として少ししか用意していない。しかし、「大きく高価な商品は道端に並べられないから、近くの倉庫に用意している。今から必要数を取りに行くので、欲しい人は手を挙げて」と挙手させ、その数を大声でカウントする。この行為によって、主婦たちはポットを既にもらった気分になり、それを手にする前にその場を離れることは、一度手に入れたモノを失うことと感じるようになるだろう。
つまり、業者は主婦たちの気分を「いればトクをする」から「帰ればソンをする」にシフトさせているわけだ。手持ちのお金から千円なくしてしまうことの残念さは、予定外に千円もらうことの喜びと比べると、感情の強度はより大きいことが知られている。
このように上昇系列で商品を提示、高価(そう)な商品の配布の「予約」をする。また、実際には何人かに見本のポットを与えてしまい、本当にもらえることを印象づける。これらの手口によって、「この場にいればもっとトクをする」という気分に導くのである。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<2> 警戒心解き、下ごしらえ, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年12月03日, 22, <コラム>
最近の催眠商法は都市部で行われることが多いが、特に目立つのがベッドタウンの駅前や商店街などである。中でも、人集めの「舞台」は銀行や百貨店の前の歩道上に設定されることが多いようだ。「舞台」といってもたいしたものではなく、段ボール箱を台にして、配布用の品物を置いてあるだけである。
業者は舞台を担当する者と、歩行者を連れてくる呼び込み担当とに分かれる。呼び込み担当は通行する主婦に「試供品無料引換券」なるカードを手渡しながら「舞台」へ行って商品をもらうよう誘う。業者の態度はあくまで明朗、さわやかである。筆者の観察では、一割強の人がこの勧誘に応じ舞台に向かう。
誘いに乗った主婦が舞台にやってくると、そこには数種類の品物が置いてあり、そのうちの一つが渡される。ここで、品物を受け取った主婦がそのまま帰ってしまったら業者としては「商売」にならない。そこで、来た人をとどまらせるために色々な手練手管を使う。業者がいかに主婦たちの「警戒心」を取り除くかについて見てみよう。
主婦が集まってくると、舞台担当者は品物を渡しながら、「このように商品をタダで配っているのは会社の宣伝のためである」と説明を始める。会社は近々、当地に進出予定の通信販売会社や、特設のディスカウントショツプであったりする。
いずれにしても「高い広告費をかけるより、皆さんに商品をさしあげて、口コミで宣伝してもらった方が効果があるから」と無料配布の理由を説明する。理由を示すことによって、道端でタダでモノを配って人集めをする、というあやしけな行為に対する警戒心を解こうとする。
舞台が銀行や百貨店の前に設置されることは先述したが、業者は、「この場所は銀行(百貨店)の許可を得てお借りしている」ことを繰り返し強調する。歩道は銀行やら百貨店の私有物ではないので、そこから許可が下りるというのはおかしな話だが、業者は消費者の銀行や百貨店に対する信頼を利用しようとして、こういったことを言う。
また、品物を配る際にも、盛んにブランド名を強調する。すでに確立している知名度や信頼感の威光をフルに活用して、自分たちへの信頼に転化させようと努める。
さらに、人だかりを作るという手法そのものも、不安感を取り除くのに役立っている。「周りの人も平気でいるんだから」と、お互いに考え合って、つい安心してしまうのである。
このように、いろいろな方法で警戒心を取り除くことは、「喜ばせる」「興奮させる」「トクな気分にさせる」という催眠商法独特の状態に導くための下ごしらえ」の役割を果たしていると考ええられる。
(抜粋)
入門流通講座「催眠商法の心理学」<1> トクする雰囲気かもす, 新聞・雑誌, 本人, 日経流通新聞社, 日経流通新聞, 1991年11月28日, 26, <コラム>
買い物帰りの主婦が駅前の人通りの多い歩道で声をかけられた。声の方を見ると、片腕に洗剤やラップを抱えた男がにこやかに立っている。「奥さん、ただ今、試供品を無料で提供しています。あそこへ行って、タダでもらって帰って下さい」。
その男が指さす方には、同じく買い物帰りらしい大勢の主婦が人だかりを作っており、なにやら口上を述べている男から洗剤を受け取っている。「タダなら私も……」とその主婦は人だかりの中に入って行った。ところが、彼女はタダの洗剤を手にするのと引き換えに、約二時間後には四十万円もする羽毛布団を買ってしまうことになる。
皆さんはこのようなセールス法をご存じだろうか。これが、しばしば新聞などでも報道されている「催眠商法」、あるいは「SF商法」というもので、近年、都市部の消費生活センター・に多くの苦情が寄せられるようになった。この商法は「悪徳商法」として報道されることが多いように、社会的にはネガティブな問題をはらんでいる。
しかし、催眠商法は良識ある流通関係者やイベント業者にとっても、参考になる要素がたくさん含まれている。そこで、今回から九回にわたって催眠商法の具体的なプロセスを紹介し、そこに組み込まれている様々な誘導テクニックとその効果を心理学の視点から解説してみたいと思う。まず、今回は催眠商法の進行手順を大まかに紹介する。
催眠商法は大きく分けて二つの段階からなっている。初めは人集めの段階で、業者四、五人で、一組となり、街頭で商品の無料提供を名目に歩行者(主に主婦)を二十人前後集める。この際、無料配布しているのは会社の宣伝のためであるともっともらしく説明する。そして、ある程度品物を配っておいてから、もっとよい品物を進呈するからと、人だかりをそのままビルの一室に移動させる。
次は追い込みの段階で、品物の無料配布を続けながら、室内の雰囲気を十分に盛り上げておいて、話題を健康問題に移し、目的の羽毛布団を紹介する。話のトーンは高まり、場の空気は布団を買いたくなるような方向に誘導される。
この商法の特徴としては、全体のプロセスを通じて、①業者が常に冗談を飛ばして愉快な雰囲気を作り上げていること②一方的なセールストークをするのではなく、集まった主婦たちに積極的に大声をあげさせたり、挙手させたりして、身体的に興奮させていること③「この場にとどまっていればもっとトクすることが起こる」という期待感を維持させていること、などがあげられる。
重要なポイントは集まっている主婦たちがお互いを知らない 「群集」であるために、これらの気分があおられ、増幅するという点にある。
(抜粋)