ハイブリッド戦争時代における新たな安全保障学の構築―中東ユーラシア地域の事例から
中西 久枝; 岩倉 洸; 青木 健太; 末近 浩太; 西川 由紀子; 鈴木 均
日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2022年04月 -2025年03月, 基盤研究(A), 同志社大学
新たな安全保障上の脅威と経済グローバライゼーションの展開
石川 知子; 西川 由紀子; 山形 英郎
今年度は、次の点について理論的な面での検討を進めることができた。(a) 現在の経済グローバライゼーションと安全保障との間の緊張関係の高まり、特に既に各国・地域でみられる安全保障を理由とする貿易・投資に係る規制強化の流れをもたらした政治的・経済的要因。(b) 現在の貿易・投資自由化に係る国際法の枠組みが、かかる緊張関係に対処するに十分でなく、このことは、各国の規制強化への流れをさらに加速させかねないとの仮説を、安全保障例外条項の解釈が問題となった国際裁判所や仲裁廷、1947年GATT及びWTOの下での事例や判例の検討を通じて検証する。(c) 経済グローバライゼーションと安全保障との間の緊張関係が解消されない場合、これが長期的にもたらし得る政治的問題及び経済的影響につき検討する。
さらに、今年度は、上記の分析を、サイバーセキュリティの分野に当てはめ、サイバー特有の問題点として、「マーケット主導型」モデル(欧米型)と、「国主導型」モデル(中国、ロシア、ベトナム等)の検討を行い、サイバーセキュリティと経済グローバライゼーションとの間の緊張関係が生み出す様々な問題を、国際政治学、国際法学を含む学際的アプローチで分析するためのプロジェクトを進めている。国際政治学、国際法学各分野から、多国籍の執筆者(日本、米国、カナダ、ルクセンブルク、英国、スペイン、ポーランド)による編著、Tomoko Ishikawa and Yarik Kryvoi (eds.) Public and Private Governance of Cybersecurity: Challenges and Potentialを企画し、2022年4月、ケンブリッジ大学出版会と出版契約を締結した(2023年出版予定)。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2019年10月 -2023年03月, 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)), 名古屋大学
ハイブリッドな平和構築論の新展開
西川 由紀子
研究3年目では、前年度までに行ってきた理論的考察に対し、本研究の対象となる事例(ミャンマー、東ティモール)における実情とどのような祖語があるのか、また既存研究で明らかにされているハイブリッドとは両国において何を指し、そのような状況のことであるかについて聞き取り調査を行った。昨年度から引き続き新型肺炎により現地調査の実施ができなかったことから、オンラインでの聞き取り調査に変更した。また、日本に滞在中の東ティモールの行政官4名からも聞き取り調査に協力してもらい、2つの事例の検討事項について具体的な情報が得られた。ミャンマーについては、現地の状況が2021年のクーデター以降、不安定であることから、最終年においても聞き取り調査を実施することは難しいと予想される。このことから、本年度の聞き取り調査では、オンラインであったが、現地のネットワークを紹介してもらい、多様なアクターに聞き取り調査を行った。
ミャンマーに関する聞き取り調査では、現地に土着の平和のアプローチと、援助機関や外部アクターによるかかわりによってもたらされた平和概念が、いかに現地において取り扱われているのか、市民の認識において、これらは調和的であるのか、対立的であるのかについて多様な意見がみられた。
東ティモールについては、政治的に安定していることもあり、平和に関する関心から開発問題に関する関心へと移行したこと、現地の土着の制度やシステムと外部アクターによってもたらされた新たな制度やシステムが、時には対立しつつも現地化したものもあることなどが指摘され、本研究の核心に関連する状況が明らかになった。
本年度の研究により、事例研究によって得る予定であった現地の情報が一定程度得られた。他方、実質的な状況を現場で体感し、観察することができないことから、本研究の申請時に予定していたほどの成果は得られなかった。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2019年04月 -2023年03月, 基盤研究(C)
日本国憲法第9条における専守防衛法理の研究:自衛権論を超えた安全保障論
山形 英郎; 桐山 孝信; 奥野 恒久; 西川 由紀子
2015年集団的自衛権を容認する安全保障法が成立した。憲法学や政治学において自衛権をめぐって大きな議論が生じた。しかし、自衛権に関する理解が十分でなかった。国際法上の自衛権は国連憲章第2条4項が禁止する武力行使の違法性阻却事由である。同条は国際関係における武力を禁止している。専守防衛を国是とし、自衛隊の海外派遣を行わないことを基本原則とする以上は、自国内での防衛行動は他国に対する武力行使とはならず違法性はない。したがって、専守防衛は国際法上自衛権を必要としない。自衛権は他国への武力行使を前提としており、専守防衛理念と矛盾する。自衛権なき防衛政策こそ検討すべきであることを明らかにした。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2018年04月 -2021年03月, 基盤研究(B), 名古屋大学
抗議運動の発生コンテクストに関するアジア・ラテンアメリカ地域間の比較実証研究
岡田 勇; 村上 勇介; 西川 由紀子; 日下 渉
本研究は、①抗議参加について、②統一した理論枠組みおよび分析デザインを用いて、③アジアとラテンアメリカの地域間比較を行ったものである。管見では、類似のテーマに取り組んだ研究は存在しないが、抗議行動についての地域間のステレオタイプに挑戦する試みである。具体的には、ボリビア、カンボジア、モンゴルという異なった背景を持つ3カ国で独自のサーベイを行った。多くの点で異なった背景を持つ国家間の比較であるが、共通する争点イシュー(土地問題)と理論枠組み(国家の役割)を立て、検証を行った。極めてレアな比較研究デザインであることから、時間をかけて複数の国際学会で報告を行い、英文ジャーナルへの投稿を予定している。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2016年07月 -2021年03月, 基盤研究(B), 名古屋大学
途上国開発戦略におけるガバナンス論の深化を目指して
小山田 英治; 小林 誉明; 金丸 裕志; 木村 宏恒; 近藤 久洋; 稲田 十一; 杉浦 功一; 西川 由紀子
本研究ではこれまでのガバナンス研究の一般論を越えて、英国際開発省が提起し、EU各国や世界銀行などで推進された各国の「政治経済分析」手法を参照しつつ、「1国レベルの特殊性と普遍性を反映した現実のガバナンスの諸要素構成を分析し、国際開発学に開発政治学を組み込んだ体系化」を行うことに研究目的を置いた。1年目にはルワンダを調査して4本の論文、2年目にはカンボジアを調査し『社会調査から見た途上国開発』に反映させた。後半は、『開発社会学を学ぶための60冊』に続く『開発政治学を学ぶための61冊―開発途上国のガバナンス理解のために』を執筆・出版し、「国際開発学に開発政治学を組み込んだ体系化」に大きく前進した。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2015年04月 -2018年03月, 基盤研究(B), 同志社大学
紛争経験国における開発、紛争予防、民主化に関する巨視的分析
西川 由紀子
本研究では、1990年代以降に武力紛争の終結をむかえた30か国の経済、民主化、政治的安定に関するデータを収集し、開発、民主化と政治的安定の関連を統計分析によって明らかにした。本研究によって、多くの武力紛争経験国が、紛争前の経済レベルに戻るまでに約10年から20年の期間を要するとともに、民主化などの政治体制の変動が、暴力の再燃と経済にも関連があることが明らかになった。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2014年04月 -2017年03月, 基盤研究(C), 名古屋大学
グローバリゼーションが開発途上国の貧困・格差に及ぼす影響の国際比較研究
大坪 滋; 長田 博; 木村 宏恒; 藤川 清史; 梅村 哲夫; 川島 富士雄; 伊東 早苗; 浅川 晃広; 板倉 建; マズワナ ジョン・クロード; 西川 由紀子
経済のグローバリゼーション下の途上国開発においては、国内、国家間の格差が連動しつつ拡大していくメカニズムを理解し、対処せねば貧困削減に資する経済成長を達成し得ない。統合は、成長を「平均的」には不平等を産まずに加速させ、貧困削減に寄与するとされるが、実際には大きな「ばらつき」が存在する。本研究では国際経済統合が途上国経済におよぼす影響の「国家間のばらつき」とその各国特殊要因を探る「国際比較研究」を展開した。11カ国30余名の研究者の参加を得た国際共同研究の成果は、学術論文、国際学会、政策対話等を通じて発信され、最終成果は3冊組の英文書籍として新しい開発パラダイムを模索する世界に向けて発信された。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2010年04月 -2015年03月, 基盤研究(A), 名古屋大学
開発途上国におけるガバナンス研究の焦点:民主化、開発国家建設、地方自治
木村 宏恒; 大坪 滋; 佐藤 秀雄; 小山田 英治; 近藤 久洋; 杉浦 功一; 金丸 裕志; 西川 由紀子
途上国の開発を政治視点から研究するメンバーを集め(全員が博士号を持つ)、本を出し、学会報告を重ね、研究分野としての開発政治学を開発経済学や開発社会学と並ぶ存在にすることが、この科研の目標であった。1 年目に『開発政治学入門』を勁草書房から出版し、途上国の開発を政治学的に分析する視角の集大成を行い、3 年目に『開発政治学の展開』をまとめてそれぞれの視点を深めた(勁草書房刊行確定)。 また英語の本も出し、国際共同研究の基礎をつくった。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2010年 -2012年, 基盤研究(B), 名古屋大学