契約付きマッチング理論における安定的かつ次善効率的マッチングについて
平田 大祐
日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2023年04月 -2026年03月, 若手研究, 一橋大学
保育所マッチングシステムに関する研究
奥村 保規; 糟谷 祐介; 平田 大祐; 北原 稔
本年度は,保育所の割当システムを含むマッチングシステムの公平性と効率性について議論を深めた。既存研究において,マッチングシステムの公平性と効率性の間にはトレードオフの関係があることが知られている。すなわち,ある程度公平な割当を行うことに目をつぶれば,効率性を高めることはできるし,効率性が低くてもよいのであれば,より公平な割当を実現することは可能なのである。
本研究では,公平を担保するために設けられている保育所を含む受け入れ側の優先順位を弱めることで,効率性を高める方法を議論した。すなわち,例えば,優先順位が,所得が1円でも低い方を優先するというルールが採用されている場合,「2つの家庭で,所得の違いが100万円未満の場合は,優先順位をタイとするが,それ以上の場合は低い方の家庭を優先する。」といったルールにすることによって,マッチングの効率性を改善することができるが,その方法を導入した。このような優先順の弱め方は既存研究で考えられていた弱順序とは異なり,優先順位が半順序となることを許さなければならない。また,どのような場合にどの程度優先順位を弱めるのができるか,あるいは弱めることが妥当といえるか,についても議論した。
また,昨年度に引き続き,割当に際し,優先順位を決定するために使用する個人の情報に関して,虚偽を報告したり,あえて情報を変えたりするような戦略的なインセンティブについても引き続き議論した。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2019年04月 -2023年03月, 基盤研究(C), 東京海洋大学
市場と組織の頑健な設計
平田 大祐
日本学術振興会, 海外特別研究員, 2019年09月 -2021年09月
組織における信念の異質性の役割について
平田 大祐
本研究では構成員の間で信念・期待が異なるときに組織で起こり得る問題およびその解決方法の可能性について理論的な分析を行った.第一に内的な動機と外的な誘因の関係について分析を行い,信念に異質性がある場合に内的動機が弊害を引き起こすロジックを分析した.第二に正確な情報を引き出しつつ組織内のリソースを割り当てるルールの性質について分析を行った.第三にヒト同士をチームに分割する場合に求められる安定性の概念を定義・分析した., 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2016年04月 -2019年03月, 若手研究(B), 一橋大学
同質財市場および近似的同質財市場における価格競争理論の研究
平田 大祐
4月以降、主に以下の2つの研究を行った。
まず同質財市場における、生産量に上限(capacity constraint)がある場合の価格競争理論の研究、"Asymmetric Bertrand-Edgeworth Oligopoly and Mergers"を昨年度から継続して行い、学術誌The B.E.Journal of Theoretical Economicsに発表した。本研究では、非対称なcapacityを持つ3企業が競争する市場を分析し、非対称な寡占市場では、対称な市場のみを分析した既存研究とは異なる性質を持った均衡が存在することを示した。特に重要な貢献は以下の2点である。第一の貢献は、非対称な寡占においては小さい企業ほど高い価格をつける誘引が強い場合があることを示した点である。これは既存研究にはない、価格競争における戦略的誘引に関する新しい知見である。第二の貢献として、本研究は新しい種類の合併パラドックスの存在を示し、寡占市場における水平的統合の研究に対しても新たな理論的知見を与えた。
さらに、東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授と以下の研究を行い、論文"On the Uniqueness of Bertrand Equilibrium"(東京大学社会科学研究所ディスカッションペーパー,F-148)としてまとめた。本研究は、規制等の理由で各企業が直面している需要を全て満たさなければならない場合の価格競争を理論的に分析したものである。既存研究では、そのような仮定の下では同質財市場に均衡が無限に存在することが知られていた。本研究はこの結果が「同質財」という単純化のための仮定に依存したものであり、わずかな製品差別化に対して頑健な均衡は唯一であることを示した。同質財の仮定は、わずかでも価格差があれば全ての消費者が低い価格の製品を購入しようとする、という極端な仮定である。従って、本研究の「わずかな製品差別化があっても成り立つか否か」という頑健性の視点は、理論モデルの妥当性を考える上で重要である。本研究は、同質財市場においてそのような頑健性を有する唯一の均衡は各企業が完全競争価格を設定するものであることを示した。, 日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 2009年04月 -2009年08月, 特別研究員奨励費, 東京大学